「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第78話 突発案件へは3つの組み合わせで組織的に対応する

突破案件へ組織で対応する抜本対策、どれだけやっていますか?

 

弊社では、突発案件への対応力は、中小製造企業の命脈を保ち、競合と差別化を図るうえで欠かせないものだと考えています。

多品種少量化の時代において、突発案件への対応力は、中小の強みを発揮する機会を増やしてくれるものだからです。

 

まずは、経営者が突発案件へ、関心を向けることです。

そうして、経営者がやるべきことは、現場をはじめ、営業、外注先、顧客を巻き込んだ対応方針を決めることです。

 

これにより、突発案件というつかみどころのない事態に対しても、”ゆるやか”に全社のベクトルが揃います。

「突発案件へは営業への協力を惜しまず、最大限実現するように対応すること。」

「営業は製造とのルールの範囲内で収まる納期で受けるよう、最大限努力すること。」

「内製できなければ、すぐにA社へ外注を出すこと。」

 

まずは、経営者が、何らかの方向性を示すことです。

こうしたメッセージを通じて、いずれは組織的に解決するぞという経営者の意思を現場へ伝えるのです。

ひとつでもいいですから、突発案件への対応方針を示します。

その後、抜本的に、組織で対応する仕事のやり方を考えるのです。

現場担当者がひとりで頭を悩ます雰囲気を変えるところから始めます。

 

 

 

さて、突発案件は、そもそも、計画外であるが故に、”突発”です。

その計画外へ対応するのに、多様な切り口を組み合わせることになります。

 

まずは、突発案件自体が発生しないように努力することです。

見込生産にしても、受注生産にしても、既存顧客がいます。

繰り返し注文を出してくれる既存顧客とのコミュニケーションを密にして、1日でも早く、突発案件の情報をつかむのです。

 

突破案件では、その1日があるかないかで対応の可否も大きく変わります。

てすから、こうした対応が欠かせません。

 

製造部門と事前に取り交わした”突発案件ルール”を顧客へ情報開示し、協力を得ることもあり得ます。

「通常納期は4日だけれども、2日程度ならタイミング次第で可能だ。だから、緊急の注文がありそうな場合は、少しでも早めに情報が欲しい。」

顧客との信頼関係が前提にありますが、こうした対応も必要です。

突発案件へ1日でも多くの時間を割くためです。

 

 

 

 

 

しかしながら、いかに早く突発案件の情報をキャッチしたとしても、現場にとって、”突発”であることには変わりありません。

通常の工程管理では対応ができないのです。

 

現場にとって、あくまで”割込案件”となります。

したがって、特別な対応がどうしても必要です。

 

そこで、特別対応をするベテランのチームを事前に作っておきます。

各工程のベテランを集めて特別チームを編成するのです。

突発案件が届いたら、それへの対応をこのベテランチームに任せます。

 

ベテランですから、現場で顔が利くことでしょう。

通常の生産活動への影響を最小限に抑え込みつつ、突発案件をこなしてもらいます。

ベテラン力を発揮してもらう特別チームです。

 

普段、特別チームには、オフライン業務についてもらいます。

通常の生産活動との兼務はダメです。

あくまで、特別チーム。

 

ですから、日常的には、改善活動の支援などに当たってもらいます。

普段の仕事のコントロールを各ベテランに任せ、現場を支援して価値を生み出す仕事に従事してもらうのです。

 

そして、本業はあくまで突発案件への対応となります。

突発案件の情報が届いたら、そちらへ専念するのです。

 

自動車部品工場で勤務していたとき、現場に”改善班”というベテランで構成されたチームがありました。

その名の示す通り、各工程の改善活動で使う治工具を作製するチームです。

そして、それに加えて、なんらかの特別なことにも、柔軟に対応をしていました。

 

現場の若手技術者として製品開発に携わっていたとき、特急の試作品への対応などで何度も助けられたことを憶えています。

 

モノづくりの現場には明確なルールがあるとはいうものの、最後は人と人との力関係が影響するものです。

若手だったとき、こうしたベテランで構成された特別チームは心強い存在でした。

 

ただ、この仕組みを現場へ定着させるには、前提条件があります。

各工程において、ベテランから現場を引き継げる次世代の若手が育っていることです。

 

 

 

 

 

さらに、どんなに心強いベテランチームが存在していても、突発案件に対応しようがない状況というものがあります。

設備の余力が、そもそも、完全にゼロのときです。

 

突発案件の”やり手”が存在していても、設備がなければ、どうしようもありません。

突発案件に対応できるか否かは、結局、全てここに行き着きます。

突発案件が届いたときに、設備に余力があるか、どうかです。

 

では、どうやって、それを安定して実現させるか?

2つあります。

・生産計画で、事前に空白の日程を組み込む。

・特定の設備を常に空けておく。

 

これだけ?という感じですが、これだけです。

突発案件は計画外ですから、設備が空いているときをいかに増やすかが対応可否に大きく影響します。

 

当然、これにも前提条件があります。

設備の稼働が70~80%でも、狙った収益を確保できる経営基盤が構築されていることです。

 

稼働90%以上、ほとんど目いっぱい機械を動かさないと利益が出ないという現場も少なくないのではないでしょうか?

そういう状況で、これはできません。

 

この場合は、生産性を高める必要があります。

お金を生み出す生産性向上には、3つのタイプがありますが、そのうちの分子を増やす生産性向上です。

 

本来、このタイプの生産性向上では、需要が能力を上回っていないと、お金を生み出しません。

では、この場合、どう考えるか?

 

付加価値の高い将来の需要へ対応する、と考えるのです。

そうして、現在の収益を確保しつつ、上記2つのやり方を可能にします。

 

設備は、いつも動かしていなければならないわけではないのです。

これからは、生産性向上の目的に、突発案件への対応力強化も加えます。

生産性向上の目的はいろいろあるのです。

 

 

突発案件への対応力を高めるには、属人的ではなく、組織的な仕事のやり方を現場へ定着させます。

・まずは、経営者が突発案件へ関心を示して、対応方針を示します。

・そして、①突発案件の情報を1日でも早くキャッチすること、②特別対応のベテランチームをつくること、③生産性を高めて設備の空きをつくること等、具体策を複数組み合わせます。

情報、チーム、余力の組み合わせです。

突発案件への対応力は、貴社の総合力の表しています。

 

突発案件への対応力を高める仕組みをつくりませんか?