「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第79話 生産管理の本質は”見える化”にある

モノづくり連鎖の見える化で現場の自律性を促していますか?

 

生産管理の本質は”見える化”にあります。

そして、”見える化”は現場の自律性を促すものです。

 

経営者にとって、生産活動は、ある意味で”他力本願”です。

工場経営の本質は他人を通じて経営者の想いを実現することにあると、たびたび申し上げているように、経営者の仕事は他人(現場)に働きかけ、他人を動かすことにあります。

ここの”動かす”というところが勘所です。

 

当然ですが、サーカスのライオンやクマの猛獣使いよろしく、アメとムチで従わせようという一方的な仕事のやり方で自律性は生まれません。

やらされ感がたっぷりとなり、無難に終えようという気持ちしか出てこないものです。

大切なのは、あくまで自律性であることを忘れてなりません。

 

 

 

自ら決定権を持ち、自分の意志で仕事を進めてこそ、仕事の成功自体が最高の報酬という状況に至ります。

したがって、自律性を生み出す仕事上の判断基準が現場に示されていることが必要です。

その役割を果たすのが生産管理であり、見える化で現場へ判断基準を提示し、自律性を促し、持続するやる気を引き出します。

弊社が生産管理をご支援の柱にする背景はこうしたところにあります。

 

 

 

改善活動についてご相談を受けるときがあります。

「標準化が重要なので、現場作業の履歴を記録しようとするのですが、なかなかデータが上がってきません。」

ある板金加工製品のメーカーの経営幹部の方からお話があり、伺うと、記録用紙を現場へ渡すものの、データをつけてくれないということでした。

 

こうした場合、記録をとる目的が曖昧のままであることが多いです。

果せるかな、その現場も、そうでした。

 

受注を増やして売り上げを伸ばしたいのだけれども、今のままでは残業ばかりが増えてしまう。

そこで、まずは、現場作業の標準化に挑戦をしてみたとのことでした。

 

その意気込みやよし、なのですが、残念ながら、なぜ標準化なのか?現場への提示が抜けていました。

個別具体的な活動を始める前にやることがあります。

 

まずは、生産現場全体を見える化することです。

見える化して、現状を知らせることで、現場はやるべきことに気づきます。

気づかせて、行動を促すわけです。

 

生産現場全体の状況を知らされた結果、現場作業のやり方に問題があると分かったら、現場は黙ってはいません。

改善活動や現場改革をスタートさせようとするとき、経営者が最初にやるべきことは、この生産現場全体の見える化です。

 

生産の流れを見える化することです。

やるべきことが見えてから、個別具体的な取り組みをはじめます。

先の企業では、取り組みの順番が逆でした。

現場には、取り組みの必然性を感じさせることが重要なのです。

 

 

 

 

 
3つの生産の流れを整理します。

1)モノ

2)お金

3)情報

具体的なやり方はセミナーやご支援のなかで説明をしていますが、それぞれ、着眼点を持って見える化するのです。

 

モノづくりを事業としている貴社の現場には、3つの流れがすでにありますので、まず、それを見えるようにします。

望ましい姿を思い浮かべて、それと比べれば、だまっていても、現場はギャップを見つけてなんとかしようとするものです。

ですから、手始めにやるべきことは、個別具体的な分析ではなく、”全体”の見える化となります。

 

主な着眼点は、それぞれ、下記です。

1)モノについては、本流と支流の見極め、および「仕掛品」の分布。

2)お金は「原材料」「仕掛品」「製品」、つまり在庫の分布。

3)情報は「受注」からスタートして「納品」に至るまでの各種情報の相互関係。

 

生産の流れをつくる大きな目的のひとつにムダを省くことがあります。

ムダをはぶけば、リードタイムが短縮され、その分、お金も滞留しません。

 

多品種少量化の昨今、特に機能別レイアウトの現場の物流は複雑になっています。

それらを分析して、本流と支流を見極め、それぞれの流れをスムーズにするのです。

 

さらに、モノの停滞はお金が眠っていることと同じなので、流れをスムーズにする意義をしっかりと現場へ伝える必要があります。

また、3)は儲かる工場経営の体系を設計するうえで欠かせない分析です。

 

大きな目的を果たすために、必要な情報は何か?その情報は、今、現場で見える化されているか?また、その情報は生かされているか?

こうしたチェックをするためです。

貴社では必要な情報が全て整備されていますか?

 

 

 

受注情報からスタートして、受注台帳、原材料や部品の購入、設計情報、作業指示・・・・、情報の連鎖が生まれます。

情報の場合、フローとストックの性質を考慮して設定する必要もあります。

1)モノ

2)お金

3)情報

 

これら3つの流れは相互に関連しているので、弊社では、これらをまとめて、モノづくり連鎖と呼んでいます。

まず、これら3つから構成される生産の流れを見える化するところからです。

 

 

 

製造現場の全体を見える化、見せる化することで、現場は気が付きます。

”促し”が大切なのです。

整理の仕方は生産形態や業種業態によって、見える化のやり方に工夫が必要となりますが、3つの流れを見える化するという点は全てに共通です。

現場は、生産現場全体を知って、自分は何をすべきか、全体における自分の位置づけを理解します。

 

「多品種少量化における最短リードタイムの実現」

中小製造企業はこれで稼がねばなりません。

これは業種業態に関わらず共通のテーマとなります。

 

したがって、「「多品種少量化での最短リードタイムの実現」を阻害する要因を、3つの見える化で明らかにするのが次の段階です。

現場が阻害要因に気が付けば、自発的に現場は回り出します。

先の板金加工メーカーの現場に必要だったのは、作業分析の前に、3つの見える化でした。

 

3つの生産の流れ、モノづくり連鎖見える化の仕組みをつくりませんか?