「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第159話 フィードバック
儲かっているかどうか、比較できる判断基準を現場へ示していますか?
「このような図が欲しかったです!」
ある中規模製造企業、工場長の言葉です。今、その工場長は、経営者の想いに応えるべく改善活動に取り組んでいます。
生産性向上活動体系化のなかで、経営者は、儲けの見える化に取り組みました。試行錯誤しながら出来上がった図を見て工場長が、即座に発したのが冒頭の言葉です。
経営者は皆さん、企業活動で実現させたい想いを持っています。ただし、それは利益を生み出し続けてこそ実現できることです。
したがって、経営者は、安全と品質を前提とした上で、「利益を生み出す」、この1点に焦点を当てて、あらゆる取り組みを設計しなければなりません。ぶれないことです。
IEや5Sなどの現場活動が目的化している最大の原因は焦点がぼやけていることにあります。儲かる価格を設定する体系を明らかにして、儲かる現場活動と連動させる重要性を繰り返し申し上げている所以です。弊社プログラムの根幹でもあります。
「自分が関わっている製品(商品)はどれだけ儲かっているのだろうか?」
経営者のみならず、現場リーダーや作業者も、この疑問への答えを知りたいと考えているのです。製品別儲けの見える化で、現場の「知りたい」に応えられます。
作業手順を見直しして効率を高める、新たな治具を考えて段取りを手早くできるようにする、部品棚を整理して探す時間をなくする等々。現場活動は具体的です。
この具体的な活動を「儲け」と結びつける仕組みが欠かせません。
・儲かる現場活動
・儲からない現場活動
現場活動は仕組み次第でどちらにもなってしまうことに留意する必要があります。
先の工場長は、製品別の「儲け」が見えるようになったことで、現場活動が活性化されると感じているようです。作業者ひとりひとりが「商売人」感覚を持てば知恵も出したくなるでしょう。仕事の判断基準が「納期」のみでは醸成されません。
「納期を守っているのだから、それ以上、何をやる必要があるのか。」
こうした思考回路の現場では「商売人」感覚は望むべくもありません。
また、工場長は仕事の指示をし易くなるとも考えています。
儲けの見える化によって、他の製品との相対的な、現状のポジションが明らかです。その製品をどこまで改善すべきかをはっきり示せます。
なぜ、その製品(商品)を改善しなければならないのか、その必然性を図が語ってくれるわけです。納得感も高まります
見える化で期待できる最大の効果は「比較」です。
活動前と活動後。
ビフォーとアフター。
両者を比べられるのでフィードバックができます。現場活動は仮説と検証の連続です。仮説を立てて計画し、ビフォーとアフターを設定してから、検証します。
そして、実績と計画を照らし合わせて差異を認識、その差異を埋め合わせる新たなやり方を考えます。これがフィードバックです。見える化されていないとできません。
「1万時間の法則」をご存じでしょうか?1万時間経験を積み上げれば、その道のプロレベルになるという経験則です。
スポーツや芸術、当然に仕事も、地道な経験を積み上げなければ、「本物」になりません。したがって、時間を投資する必要があります。その目安が1万時間だというのです。
ただ、時間をかけさえすれば一流になるかと言えば、そうではありません。「フィードバック」がなければ、”ムダな”時間を重ねることになりかねないのです。
目隠ししてサッカーのシュート練習をしても、蹴ったボールがどのような軌跡でゴールへ飛んでいったか分からないので、キックの瞬間を調整できません。
また、目隠しして踊りの練習をしても、鏡に映る自分の姿を見ることができないので、上達もままならないでしょう。
プロを目指すにはそれなりの時間のかけ方があるということです。
スキルアップにはビフォーとアフターを自ら認識することが欠かせません。仮説と検証にフィードバックが必要である所以です。
(その意味においても、視覚障害者の方々がスポーツや芸術の分野で活躍している姿を見ると頭が下がります。)
儲けの見える化は現場活動を活性化します。
儲かっているか、儲かっていないかは、現場も知りたいからです。
そして、比べる対象が明らかになるので、現場活動のフィードバックを可能とします。フィードバックが投資した時間分の経験を価値あるものに変えるのです
皆さんの現場ではどうでしょうか?1万時間かけても、その道のプロになっていないとすれば、何か足りないものがあるということです。
そして、その足りないものは、経営者にしか準備ができません。
・成長する現場は、儲けの見える化でフィードバックを実践して、プロ集団となる。
・停滞する現場は、経験を積んでも時間が過ぎるだけで、自己流集団となる。
儲けの見える化の仕組みをつくりませんか?