「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第208話 管理者に身につけてもらいたい2つの事とは?

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「気がついたらベテランと若手との年代ギャップができていました。」

先日、個別相談でお話しを伺った食品加工企業経営者の言葉です。

 

人材育成に関して「ベテランがいるから当面はイイだろう」と手を打たないでいるとどうなるか。気がつけばベテランの技能を引継ぎ、現場を引っ張る人材が育っていない・・・。

人材が育っていないから、非常時や非定常の事態に直面すると、現場が回らなくなり、経営者自身が現場で采配を振うことになります。経営者は社長業に専念できません。経営者は人材育成のことが気になり始めます。

 

経営者は年代ギャップを埋める若手、現場を管理する人材を育てなければなりません。「人材育成をどのように進めればいいだろうか?」先の経営者の悩みはこれです。

現状を語ったのが冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

中小製造現場の管理者は経営者の分身となって現場を仕切ります。実質的な現場のトップです。こうした人材が育っていて初めて経営者は社長業、いわゆる「将来の仕事」「重要度は高いけれども緊急度が低い仕事」に専念できます。

 

ある韓国ドラマの中で大財閥の創業者でもある会長が息子にこう語っていました。

「従業員は今日の仕事をする。社長は10年後の仕事をする。会長は100後の仕事をする。」

 

成長発展で欠かせないのは時間を味方につけること。社長が今日の仕事をしていると成長発展はあり得ません。現状維持です。時間だけがドンドン過ぎます。

そのうちに競合や技術の進化によって置いてきぼりを食うのです。

経営者は自分に変わって現場を仕切る人材を育てます。社長業に専念するためです。

 

 

 

 

 

管理者の仕事は2つです。

(1)社長の代行役としての仕事

(2)マネジメント役としての仕事

 

製造現場は顧客視点のタテ構造と作業者視点のヨコ構造の2重構造です。複雑に絡み合っています。文化や風土も多様です。

こうした土台の上に経営者の思考回路が形成されます。管理者はまずこれを理解しなければなりません。社長の判断基準を知ることです。価値観や仕事観は会社独自です。

そして、その上でマネジメントのスキルを身につけます。これは知識です。学べば体系的に身につけられます。

これらが管理者に身につけさせたい2つの事です。付加価値額の人時生産性を高めるためには「分母を積み上げる」「分子を減らす」になりますが。どちらにも関連する重要事項です。

 

(1)社長の代行役としての仕事

中小製造現場で出会う右腕役、管理役の人達は経営者との密接な関係や物語を持っています。

「高校を卒業して現場で働いていたら社長に引き上げられて育てもらいました。」と現場を引っ張っている30代後半の幹部がいます。

あるいは「前職の会社で仕事が行き詰まっていたとき、今の社長の声を掛けられました。」と現場と営業を引っ張る40代後半の幹部もいます。

経営者との密接な関係や物語を持って現場を引っ張る人材は経営者の思考回路を知っています。

 

将来の管理者やリーダー役を育成する目的は経営者の思考回路を知ってもらうことにあるのです。他でも経営者の想いを実現させることが工場経営の目的だからです。意図的に育てなければなりません。「社長の想い」をしっかり伝えます。

人材を内部で育てるにしても外部から獲得するにしても、管理者やリーダーになってももらいたい人材には経営者ご自身の思考回路をコピーしてもらいます。そうしないと社長の”代行“として現場を仕切ることになりません。

 

中小製造現場の管理者は経営者の分身です。したがって、経営者の思考回路を持ち合わせないと仕事ができません。

見積もりでは質を問うのか、量を問うのか?攻めの製品と守りの製品のバランスは?会社を将来へ向けてどうしたいのか?

全ては社長しか知らないことです。

 

 

 

 

 

(2)マネジメント役としての仕事

管理者の仕事は成長発展のPDCAを回すことです。「成果」を出し、事業ステージアップのために仕組みに「改善」を加えます。

具体的には5つの職務です。これはスキルとなります。

1)共通の目標を掲げる

2)役割を分担する

3)チームを機能させる

4)フィードバックする。

5)人を育てる

 

チームを活性化させる3要素があります。そのひとつが「共通の目標を掲げる」です。ベクトルを揃えるためには欠かせません。問題解決能力よりも問題設定能力が問われます。

効率良く目標達成をするにはチーム力を最大化することです。適材適所。仕事に人をつけます。そしてコミュニケーションを深耕させてメンバー同士の相乗効果を高め、「チームのため、仲間のために頑張りたい」と自然に思える雰囲気を醸成するのです。

「仲間のために役に立ちたいと考える貢献意欲」と「コミュニケーション」。これらは、チームを活性化させる3要素のうちの残りの2つです。こうしてチームを機能させます。

 

そして結果や成果をフィードバックすることです。スキルアップの動機付けで欠かせません。「やれ」と言われてやったけれども、その結果どうなったか知らされなければ、スキルを高めようがありません。

真っ暗闇でバッティング練習をしても球筋が見えず、スイング改良の手がかりを掴めないのと同じです。

そして、部下を育てます。ここが最重要課題です。ここができて現場全体で人材の再生産体制が整います。社長は安心して社長業に取り組めるのです。

 

 

 

 

 

先週、50人規模素材加工業経営者とのオンライン個別相談時に「外部から人材に来てもらって管理者役を任せようとしたけれども上手くいかなかった」とのお話しを伺いました。いろいろな事情があったようです。

その意味では将来の管理者やリーダーは内部から生え抜きを育成する方が良いかもしれません。時間を味方につけられ、途中で経営者がダメだなと判断すれば、修正が可能だからです。人材育成の理想型は人材再生産体制です。

 

 

 

マネジメント役としての仕事はスキルです。体系的に習得させられます。そして、その手段として弊社が活用しているのが「プロジェクト」です。「プロジェクト」を管理者育成の手段とします。

プロジェクト形式の取り組みには先に挙げたマネジメント役5つの職務が全て含まれているからです。さらには、プロジェクトを通じて「社長の想い」に触れて思考回路を学ぶこともできます。貴社でもプロジェクトを活用して人材育成ができるということです。

 

 

 

ただし、こうした活動に着手するにあたって、留意しなければならないことがあります。人材育成を目的としたプロジェクト活動の前提条件です。

現場ではチームが機能している状態であるということです。チームがあるから管理者が必要となります。

 

もし、そうではなく、現場のベクトルが揃っていなくて、個々バラバラでコミュニケーションが取りにくい雰囲気があるなら話は別です。

まずはチームづくりをしなければなりません。ここからです。そして、それは管理者の仕事ではありません。経営者の仕事です。

「チームで仕事をするやり方に変えるのだ。」

現場の価値観や仕事観の変革を起こさなければなりません。

 

次は貴社が成功する番です!!

 

成長する現場は、プロジェクトを通じて人材が育ち人材の再生産体制が出来上がる。

停滞する現場は、そもそもチームが機能していないので何をやっても活動が頓挫する。