「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第228話 経営者と従業員の関係をどのように表現できるか?

 

「従業員とは”太陽と月“の関係でなければなりません。」

40人規模メーカー経営者の言葉です。

 

使命感を抱いている経営者です。

「多くの地元の人に雇用の場を提供したい。」

地元の方々から相談を受けるようになりました。・・・という人がいるけれども、面倒をみてもらえないだろうか・・・。頑張る姿勢さえあれば決断する経営者です。

 

ただし、経営はボランティアではありません。固定費VS付加価値額。収益を伸ばさないと成長しないのです。

従業員一人ひとりの”資質“も問われます。事業が成功するか否かは、経営者が手にする経営資源次第です。そう考えるなら、この企業は必ずしも有利な立場に立っていません。相談を受ければ可能な限り採用しようと考える経営者だからです。

 

しかし、コロナ禍の影響をものともせず、前年を上回る付加価値額を積み上げています。現場が頑張っていますねと問いかけると、冒頭の言葉を語ってくれました。

 

 

 

 

 

貴社はコア技術で戦っています。製造業だからです。固有技術と管理技術。儲けたいなら、必然的に、技術は高度化・複雑化します。

そして、それらを標準化するのです。経験に依存した「個力」だけで乗りきれません。仕組みを活かした「チーム力」です。サッカーや野球、バスケットボール、勝てるチームを見れば分かります。

 

監督やヘッドコーチの役割は大切です。先の経営者は従業員との関係を太陽と月になぞらえました。経営者の役割は従業員を光り輝かせることだとその経営者は考えています。優れた監督やヘッドコーチは人材を発掘し育てるのが上手ですが、それと同じです。

 

従業員採用のいきさつを伺うと、「今回採用した従業員は現場でやっていけるだろうか?」とちょっと心配になる場合もあります。

しかし、ほぼ1人残らず採用した従業員は現場で活躍しているのです。そして、その結果が収益に結実しています。名伯楽ぶりに驚くばかりです。

 

「社長は太陽であり、従業員は輝く月である。」その経営者が語るだけに、説得力があります。やらなければならないことをしっかり実践している経営者です。

従業員は勝手には光輝きません。

 

 

 

 

 

 

人は気に掛けてくれた人へ興味を示すものです。「調子はどうだい?」「困ったことはないかい?」等と日頃から言葉を掛けてくれる人を味方と考えます。

言葉を掛けられるのは仕事で失敗したときだけ・・・こんな現場になっていませんか?

 

同じ人やものに繰り返し接していると好感度や印象がアップすると言われています。ザイオンス効果です。挨拶が良好な人間関係に欠かせないと言われる所以です。

 

先の経営者もそれを実践しています。そして、従業員からも、多様な情報が経営者にもたらされています。定期的にご訪問した、たまたま、その時でさえも、経営者と従業員が気軽に言葉を交わす場面に遭遇するのです。

経営者と従業員が気軽に言葉を掛け合っています。双方向のコミュニケーションができているところが優れているのです。従業員同士のコミュニケーションも密であると想像できます。

 

応受援性が高い職場です。相互に学ぶ場が形成されます。経営者の言葉を聞かされているので判断基準も明らかです。何が大切か分かっています。相互に欠かせない仲間もいるのです。光輝かないはずがありません。

必然的に「個力」に依存しない、「チーム力」の高い現場になります。こうした雰囲気はお金で買えない経営資源です。模倣困難性の高い強みとなります。

 

 

 

 

 

経営者がイイ言葉を現場へ繰り返し、繰り返し、繰り返し語ることで現場は変わります。経営者が現場へ繰り返し語る言葉は現場改革のリーサルウェポンです。「現場は経営者の鏡」。経営者の言動以上の現場にはなりません。

 

ドラッガーはマネージャーの資質に言及しています。

「マネージャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことができる。しかし学ぶことのできない資質、後天的に獲得することができない資質、始めから身につけていなければならない資質が、ひとつだけある。才能ではない。真摯さである。」出典:エッセンシャル版マネジメント基本と原則p130 P・F・ドラッガー)

 

“真摯さ”はマネージャーだけではなく、従業員一人ひとりにも求められるものであると考えています。仕事をする上での人との係わり方、姿勢、あり方、心構えです。

ただし、この資質は教えられません。したがって「真摯さを持ってください」と求めても徒労に終わります。その人の生き様によるからです。

 

真摯さは求めるものではなく問いかけるもの。

経営者の言動を通じて、問いかけて引き出します。

 

・ウチの商品をお客様は喜んで買ってくれるので、その期待に応えよう。

・Bさんが一生懸命に若手のAさんを指導してくれたので1週間で手順を憶えてくれた。

・後工程が忙しいのを知った前工程チームが自発的に応援してくれて助かった。

 

こうした言葉を従業員一人ひとりに語りかけていれば、思考回路の共有につながります。現場は「ウチの社長が期待していること」を理解するからです。

 

日頃、自分のことを気にも掛けてくれない社長が何も語らなければ、現場は頑張りようがありません。そもそも、自分のことを気にも掛けてくれない人に興味を示さないものです。自分で勝手に判断するようになります。

自分のことを気に掛けてくれる社長が、何を期待しているのかを知れば、従業員は頑張りたくなるのです。誰でも人生を豊かにしたいと考えています。

 

 

 

 

 

人時生産性を高めるために、今後は、「何を造るか?」も考えなければなりません。高度で複雑な仕事をこなして差別化を図ります。競合と同じことをやっていても辛いだけです。

チーム一丸、一体化、ベクトル揃えが欠かせなくなります。笛吹けど踊らずでは社の命脈を保てません。チーム力を発揮できない現場は消えていくだけです。

 

中小製造現場に配属される従業員の資質は一律ではありません。いろいろな意味で多様です。だからこそ、現場へ繰り返し語る言葉を大切します。言霊です。

太陽の役割を果たす経営者は良い言葉を語りかけ、従業員が持っている真摯さや可能性を引き出すのです。スーパームーンのように光輝きます。

 

人時生産性を高めるロジックはあります。生産管理3本柱とIEの大系。しかし、そのロジックも、”他人“を動かしてなんぼのものです。

人時生産性向上は、経営者が一人ひとりを気に掛け、語りかけることからです。チーム力を高めるやり方を振り返って下さい。

大型トレードやFAで即戦力に来てもらうのも手です。ドラフト外でもキラリと光る才能を育てるやり方もあります。どちらにせよ、思考回路の共有がカギです。

 

ロードマップは経営者の言霊を明文化したものです。言霊で心を震わせます。ロードマップでその振幅を大きくするのです。経営者の言霊を強化してくれます。

耳と目へ働きかけるのです。ご自身の言霊を文章や数値で表現してください。そうすれば誰にでも伝わるように文章や数値を言語化するスキルも蓄積されていくのです。

 

月たちが連動して、高度で複雑な仕事をさばいてくれると確信しています。先の経営者も言語化や数値化に挑戦されているところです。

 

次は貴社が成功する番です!

 

成長する現場は、気に掛けられ、語りかけられて、思考回路を共有し人時生産性を高める。

停滞する現場は、経営者に興味を示しようがないので自分で勝手に判断する。