「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第107話 人材育成の前提条件

現場、ひとりひとりを気に掛けていますか?

 

生産性向上と人材育成が弊社事業の2本柱です。

後者では講習会、研修会の講師業務に従事することもありますが、弊社の力点はあくまでご支援先現場での仕組みづくりに置いています。

 

さて、製造現場を対象にした生産性向の手法は生産管理3本柱で体系化されています。

ですから、後はご支援企業の現状と目標に合わせてアレンジすればいいです。

そうして収益化を狙う改善活動へアクションプランとして落とし込むわけですが、この改善活動には欠かせない前提条件があることを忘れてはなりません。

 

それは、現場の自発性が発揮されているか否かです。

ヤラサレ感たっぷりの改善活動は形骸化します。

 

年1回開催される発表大会のために、その発表大会に間に合うようやればいいやという風にになっちないでしょうか?

”やっつけ仕事”で乗り切るだけの活動になっていないでしょうか?

手段であるべき改善活動が目的化しています。

 

 

 

こうした現場を目の前にして、経営者が先頭に立って取組まなければならない課題とは”自発性”の醸成です。

そもそも改善活動は現場の創造性抜きでは意味がありません。

どんなに優れた改善活動を”設計”しても、現場の主役たるリーダーや作業者に積極的な姿勢がなければ、それは砂上の楼閣に過ぎないのです。

 

中小現場の管理者を担っていて、この”形骸化”した改善活動を何度か経験してきました。

「発表のための改善活動をやっても、何も変わりませんよ。」

「結局、”聖域”に踏み込んで改善できないんだから根本的に何も変わらないよね。」

若手の口から発せられた言葉です。

 

逆にしっかりお金を生み出すことにつながっていた改善活動も経験していますが、両者の差は何かと考え続けたとき、結局は”人”の問題へ行き着きました。

先の若手の言葉にもあるように、活動のやり方に問題があるというより、そもそも、活動へ取組む現場メンバーの”心持ち”に問題があることに気付いたのです。

さらにいうと、そうした”心持ち”にする環境の方に解決すべき項目があると感じたのです。

 

改善活動の制度設計というより、まずは、改善活動に参画するメンバーの動機付けに焦点を当てるべきであると痛感しました。

そして、現場メンバーの動機付けに焦点を当てたとき、観点は”フォローと評価”へ行き着きます。

 

工場経営の本質が”他人”を通じて経営者の想いを実現することにあるなら、想いを実現させるのに必要な人材も自ずと明らかになるはずです。

〇〇な技能を持った作業者、現場を束ねる能力に長けたスタッフ、将来のIOT化推進担当を任せたい若手・・・。

 

こうした構想は経営者の頭の中にあります。

ですか、人材を揃え、自らの”想い”の実現を果たすには人材育成は絶対です。

 

人材は自然発生的に登場するわけでもなければ、だまって育つわけでもなく、ただひたすら、経営者が意図して、計画的に働きかけたようにしか育ちませんし、さらに、経営者が意図し、働き掛けたとしても、期待通りに育つわけでもないのも人材育成です。

ここが持続的な儲かる工場経営のキモのひとつなので、多面的な観点から、研修型・講習型OFF-JTによる人材育成に加えて、改善活動を通じたOJTによる人材育成もご指導しています。

 

 

 

 

 

さて、この人材育成にも前提条件があることにお気づきでしょう。

そうです、人材が定着していることです。

 

当然のことですが、これ抜きに人材育成の仕組みづくりに時間とお金を掛けてもムダになる恐れがあります。

離職された場合ですね。

したがって、人材育成は人材を定着させる仕掛けとセットになっていないとなりません。

 

経営者は、現場の作業者、特に若手には、将来的に活躍してもらいたいと考えます。

そこで、自らの考えを現場へ浸透させる手段として、人材育成は重要な役割を果たすわけですが、そもそも人材が定着してくれなければ話は始まりません。

ですから離職率は限りなくゼロとしなければなりません。

 

定着率を高める観点で重視すべきは、会社への「忠誠心」であり、その「忠誠心」を醸成する「信頼感」です。

 

つまり、自分が安心して人生を掛けてエネルギーを注ぎ込めると思える会社でなければ、ずっと居ようとは思わないのは当たり前のこと。

では、会社への信頼感は何から生み出されるか?

 

現場メンバーひとりひとりが、自分はこの会社にとって欠かせないメンバーであると「気にかけてもらっている」と感じることだと考えています。

 

現場メンバーのベクトル合わせの重要性を理解している経営者は、現場への声かけをまめにやっています。

そうした経営者からしばしば、「自分は現場へ意識して声を掛けているけれど、必ずしも現場から積極的に反応があるわけではない。」との話を伺うことがあります。

こうしたとき、伊藤はこのように返答しています。

「社長が自ら、現場へ足を運んで一人一人へ声を掛けていること自体に価値があります。」

 

現場にしてみれば、自分に声を掛けてくれたこと、つまり「気に掛けてくれたこと」そのことは嬉しいのです。

ただ、相手は社長ですから、どこまで自分の意思を直接に経営者へ示すのかはひとそれぞれのようですね。

いずれにせよ、こうした経営者が率いる現場の風通しはいいです。

 

一方、そうでない現場は・・。

言うまでもないでしょう。

 

したがって、経営者は現場へ「気に掛ける」ことを熱心にやって欲しいのです。

弊社の表現で言えば、フォローと評価となります。

・フォロー

・評価

これらはセットです。

 

それぞれを弊社では次のように定義しています。

・フォローとは現場の仕事ぶり、つまりプロセスを「気に掛ける」こと。

・評価とは現場の結果、つまり業績を「気に掛ける」こと。

 

しばしば、どちらか一方を云々という議論を耳にしますが、弊社では両者の組み合わせが重要だと考えています。

重み付けは現場の事情によってアレンジが必要ですが、「気に掛ける」のは両者であることに変わりません。

 

 

 

いわゆる評価制度のことです。

つまり、現場が信頼感を抱くのに欠かせない仕組みのひとつが、この評価制度となります。

 

伊藤が中小製造現場の管理者を担っていたとき、若手が定着しないという問題に直面したとことがあります。

そこで、新たに評価制度を構築して、「気に掛ける」仕組みづくりに時間を掛けました。

 

現場メンバーとのコミュニケーションの機会が増えることで、”突発的な”離職が減った、という経験をしています。

人は気に掛けられれば、その人を無視できませんし、それは信頼感の構築に役立つものでした。

 

 

 

儲かる工場経営において、人材育成の仕組みづくりは生産性向上とともに要諦です。

ただ、評価制度とセットではじめて仕組みとして長期的な成果を生み出すことにも留意して下さい。

人材育成の前提には現場メンバーの定着が欠かせず、そのために経営者の「気に掛け」を仕組み化した評価制度が必要なのです。

 

評価制度は情意評価、能力評価、業績評価の3つで構成されており、情意評価と能力評価でプロセスを、そして業績評価で業績を評価することになります。

経営者の現場に対する「気に掛け」を仕組み化しましょう。

日頃の現場に対する声掛けの効果も強化されます。

 

経営者の現場に対する「気に掛け」を仕組み化しませんか?