「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第109話 一堂に会する

現場のリーダーと各工程キーパーソンは朝一番、一堂に会していますか?

 

儲かる工場経営のキモは「人」に行きつく。

しばしば、お伝えしていることです。

 

そして、セミナーやご支援を通じて、儲かる工場経営の仕組みづくりを進める改革の流れは、下記であるとお話ししています。

現場改革 → 意識改革 → 構造改革

 

経営者の願いは、利益を出し続けられる、お金を生み出し続けられる現場を創り上げることです。(構造改革)

だから、現場のひとりひとりが、経営者の想いを我がことのように理解し、共感する風土が欠かせません。(意識改革)

ですから、現場が機能するには、現場の主役である作業者が生き生きと働くこと、さらに作業者を導くリーダーや次世代を担う若手が元気であることが必要なのです。(現場改革)

 

これら3つの改革が儲かる工場経営の仕組みづくりの流れであり、弊社は、「生産管理3本柱」を駆使してご指導をしているのです。

製造現場は小売りやサービス業とは異なるので、モノづくり現場の特徴を把握して仕組みづくりを進めます。

 

ただ、こうしたご支援活動を展開していて、気が付くことがあります。

現場改革に着手するにも、その前にやらねばならないことがあるということです。

現場が一体感を感じる状況に至らせることであり、それを弊社では「現場の一体化」と称しています。

 

リーダーや若手、現場のひとりひとりが「一体感」を感じることなくして、現場改革は成しえません。

作り上げる仕組みやルールは、現場の自発性を抜きにして、その機能を発揮することがなく、いわゆる「ヤラサレ感」一杯では、仕組みやルールが形骸化するからです。

使命感を持った自力で仕組みを回せる現場が求められます。

 

これは、大手と中小の現場、それとご指導を通じて、痛感してきたことです。

逆に言うと、現場の「一体化」を抜きに仕組み作りをしても、その仕組みは形骸化する恐れがあり、急いては事をし損じます。

 

ヤラサレ感がたっぷりの改善活動などはその実例であり、いわゆるお金を生み出さない改善活動のことです。

生産性向上活動と「お金」を紐付けずに、現場がやっつけ仕事でやった改善活動は往々にして部分最適に終わります、というか、そもそも、自発性が無いので現場のモチベーションも上がらない訳で、当然の結果とも言えます。

 

 

 

 

 

「一体化」がない現場現場から、動機付けに不可欠な「やる気」と「活気」を引き出すことはできません。

「やる気」にせよ、「活気」にせよ、極めて人間臭いところですが、仕組みづくりでは重要な論点です。

 

今後、ICTの現場導入が生産性を高めるのに大いに貢献すると期待されています。

デジタル技術の活用の有無が、現場の命脈を保つのに欠かせなくなると言っても過言ではないでしょう。

 

ただ、どれほど高機能のデジタル技術が導入されようと、それを活用するのは「人」である以上、極めて人間臭い課題を無視できるわけではないのです。

スマートに仕事をやりたいと思うあまりに、現場の場のベクトルを合わせて「一体化」を図るという課題を「臭いものに蓋」のような扱いをしては、本末転倒となることに気が付かなければなりません。

 

モラール(士気)高い現場が積極的に活用してこそ、ICTは生かされるからです。

仕組みの前に、リーダーシップを発揮できる人材が必要となります。

 

 

 

 

 

さて、「一体化」に繋がる、「やる気」や「活気」を考えたとき、焦点を当てるべきはなんでしょうか?

それは、フェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションです。

これしかありません。

 

人間が「理論」よりも「感情」で動くといわれます。

人を動かしたかったら、頭」ではなく、「心」へ訴えよ、とはしばしば語られることです。

 

これは人という生き物の本質を突いている言葉だと感じます。

ですから、フェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションなのです。

 

儲かる工場経営の主役は「人」ですから、その「人」を動かすのに重要な役割を果たすフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションの重要性を改めて認識しましょう。

メールを通じた指示と、表情も加えて経営者が直に説明した指示と、どちらが「心」へ訴えかけるかは火を見るよりも明らかです。

 

 

 

 

 

ご支援中の現場でのことです。

まさに現場の「一体化」を課題に掲げて、改善活動を推進しているリーダーがいます。

 

そのリーダーは「一体化」の重要性を理解しており、現場の望ましい姿として「チーム〇〇」を自ら掲げました。(ちなみに、〇〇にはその企業の企業名が当てはまります。)

ですから、現場の各工程担当者とのフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションが重要であることをそのリーダーは理解しています。

 

しかしながら、「チーム〇〇」にために足りないものがあったのです。

 

その現場では、リーダーが朝一番で、その日に生産する案件を営業と確認し、案件ごとに留意すべきことを整理しています。

そうして、その留意点をリーダーが各工程のキーパーソンへ”個別”に伝えていました。

 

工程管理の機能には大きく分けて、段取り、指示、フォローと評価の3つあるとお伝えしていますが、2つめの「指示」には、儲かる工場経営の3つの設計図のうちのひとつ「一体化」を強化する機能があります。

つまり、「チーム〇〇」を構築する手段にもなり得るわけです。

 

そこで、弊社では”日々チェックのトライアングル”をご指導していますが、この現場で足りなかったのは”工場全体 全体最適化”のコミュニケーションでした。

ここで、そのリーダーに持って欲しいのは全体最適化の視点でした。

 

現場は顧客視点と作業者視点の2重構造になっているので、部分最適に焦点を当てがちな現場を全体最適へ導く役割の人が欠かせません。

作業者視点を持ちつつ、最終的には顧客視点でモノづくりをするためです。

 

つまり、モノ作りは、前工程から後工程への”価値連鎖”であり、後工程は顧客であるという意識を工程間でバケツリレーしているとも言い換えられます。

ですから、営業と整理した案件ごとの留意点の情報は、本来、各工程のキーパーソン全員と共有すべきなのであり、”個別”で止めてはダメなのです。

 

 

 

 

 

「留意点のポイントは各工程によって違うので、しっかり伝えたかったら個別に伝達するほうが確実ではないでしょうか?それに、他の工程の留意点を聞かされても関係ないのでは?」

情報共有化の実践を伝えた時、リーダーはこのような疑問を口にしました。

 

そのリーダーは、情報共有による一体化の効果、それが自ら望んでいる「チーム〇〇」へ繋がることには気が付いていないようでした。

 

そのリーダーは、留意点を各工程のキーパーソンへ”個別”に伝えています。

ですから、情報を伝達するという機能においては確実かもしれません。

 

ただし、これでは部分最適化にとどまるのです。

特定工程への情報伝達に加えて、他工程のキーパーソンと情報共有させて、キーパーソン同士の協働を促すことに狙いがあります。

 

ですから、朝一番に営業と確認したら、各工程のキーパーソンを集めた、いわゆる”工程会議”の場で、その日に生産する案件情報を共有すべきなのです。

これは現場の規模に関係なく、現場でやるべきことであるとお伝えしています。

 

始業開始の合図と共にリーダーも各工程のキーパーソンも、自分の持ち場へ三三五五と散ってしまってはダメなのです。

まずは、一堂に会して、情報の共有です。

「チーム〇〇」の観点では、一堂に会すること自体にも意味がありますね。

 

 

 

 

 

全体最適化のフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーション、つまり朝一番、現場で実施する工程会議で情報共有することが、「一体化」、「チーム〇〇」へ繋がるのです。

繰り返しますが、モノ作りは”価値連鎖”ですから、前工程の結果が後工程となるわけで、現場全体として考えた場合、各工程が他工程への影響がゼロで存在することはあり得ません。

 

他工程のことであっても、情報を耳にすれば、考えるきっかけにもなり、問題を未然に防ぐ仕事のやり方も生まれやすくなるでしょう。

一堂に会して聞かされた情報ですから、万が一にでも問題が発生した場合、知らされていれば、自発的に動くことを促します。

 

儲かる工場経営では、現場が主役です。

現場が自発的にPDCAを回せる仕組みづくりがポイントですから、「やる気」や「活気」が欠かせません。

一堂に会して、共有された情報には共通の目標を抱かせる機能があり、それは、フォローや評価をしやすい環境を生み出すのです。

 

 

 

 

 

フェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションを通じた全体最適の情報共有で「チーム〇〇」を目指しましょう、というのが先の現場の課題となっています。

部分最適化を狙うフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションと全体最適化を狙うフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーション。

 

両者を使い分けて、「チーム〇〇」へつなげたいです。

特に、一堂に会する効果に注目してください。

 

目指すは「一体化」の強化です。

「人」に関わる問題も出てきますから、何かと取り組みがたいテーマにもなりますが、果敢に挑戦をして下さい。

 

デジタル化の時代であるからこそ、こうした人間臭い問題にはしっかり対応しなければならないと考えています。

大手と中小の製造現場を経験してきた弊社が痛感してきたところであり、経営者の後押しをしたいのは、特にこうしたテーマです。

 

経営者の想いを実現させるため、外部の力も利用して、是非とも、現場を望ましい状態へ変えて欲しいのです。

「一体化」を強化して、「今」のことを現場へ任せられる体制づくりを加速させ、儲かる工場経営の実現させます。

 

全体最適化を狙うフェイス ツゥ フェイスのコミュニケーションの仕組み、強化しませんか?