「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第145話 数値が果たす2つの役割

数字で現場を動かす2つの観点を持っていますか?

「今月も目標をクリアできたとの連絡が工場長からありました。」

現場を取りまとめる幹部が笑顔で報告をしてくれました。

 

儲かる工場経営の要点は付加価値額を積み上げることです。それも継続的に積み上げなければなりません。弊社が強くお勧めする将来投資型固定費戦略で欠かせないのは継続的な成長力だからです。

 

詳細はセミナーやご指導でお伝えしていますが、固定費は削減の対象ではなく、「健全に」成長させる対象と考えます。

成り行きで大きくなるのが「肥大」であるのに対して、経営者の想いが込められて大きくなるのが「成長」です。

 

そこで「固定費 VS 付加価値額」の考え方を経営者は現場と共有し、積み上げる儲けを見える化します。

先の幹部の現場では、儲けの見える化を図りました。そして、毎月、目標値を設定し、生産活動に挑んでいます。

 

「儲けの見える化」を始めたのは昨年の後半ですが、今では幹部と工場長が生産状況を確認する道具として定着しました。

その結果、それまで「なんとなく」示されていた生産目標が、明確化され、工場長がその達成にこだわりを持ち始めたのです。

 

 

 

 

 

現場で影響力を持つ工場長のこだわりはリーダーや作業者へ波及します。そうして、現場で頑張るための共通用語が生まれ、現場力が高まるのです。

目標達成にこだわりを持った工場長は、先月、月末の生産で追い込みをかけました。月初から月中で遅れ気味だった生産を挽回するためです。

その結果、目標値まで積み上げるに至りました。最終日前日のことでした。

 

工場長以下、リーダーや作業者の工夫や踏ん張りが成果の原動力になったであろうことは想像に難くありません。

チームとしての成果がうれしくて工場長がその幹部へわざわざ成果を連絡した気持ちも理解できます。さらに工場長をそうした気持ちにさせたその幹部の仕事のやり方も素晴らしいの一言です。

「数字には現場を動かす力がありますね。しっかり成果を評価しましょう。」と伊藤はその幹部へお伝えし、次のステップへ進める準備にとりかかりました。

 

 

 

 

 

当コラムでもなんどか触れていますが、数字が持っている現場を動かす力について、今一度、考えていただきたいです。

現場のやる気を引き出し、さらには現場へ活力を注入するのに経営者が設定しなければならないものがあります。組織やチームが持つべき大きな目標や共通の目標です。

 

皆さんの〇〇丸(〇〇には貴社名)がどこへ向かって航海しているのか、水夫ひとりひとりが知っているのと、知らないのとでは、ここ一番の踏ん張りに大きな違いが生まれます。

「東へ向かって進め!」よりは「アメリカ大陸を目指せ!」がより具体的で頑張れます。さらには「ロサンゼルスを目指せ!」のほうが焦点を絞った頑張り方ができるのは明らかです。

目標を設定し、それを現場へ示すのが船長の仕事であることは言うまでもありません。具体的であればあるほど現場は頑張れます。その意味で数字は現場を動かすのです。数字に働いてもらって現場を動かします。

 

ここで、数字の2つの役割に注目です。2つの観点で生産指標を設定し、現場を動かしてください。2つの観点は経営判断に欠かせない論点ともなります。

数字で現場を動かす2つの観点は下記です。

1)進捗状況の把握:累積数 ~現場の追い込み力、踏ん張り力がわかる

2)実力値の把握 :生産性 ~現場の基礎体力がわかる

 

 

 

先の事例で上げた儲けの見える化は前者です。流動数曲線で積み上げ状況の進捗度合いを視覚的に理解します。この数値表現の優れたところは「ゴールまでの残り」が見えることです。

横断歩道の歩行者用信号で赤から青、および青から赤へ切り替わるまでの残り時間が視覚的に示されているのを思い出して下さい。あれがなければ、結構イライラしますよね。

また、仕事柄、飛行機を使うこともしばしばありますが、タラップを降りてから出口までの距離が示されているのと、示されていないのとでは気持ちが変わります。

飛行場の「端」のゲートに降ろされて、どこまで歩くのだろう?という状況に置かれると結構疲れます。

もう少しで目標達成!ということが分かれば、最後のひと踏ん張り、火事場の馬鹿力が生まれるのです。1)進捗状況の把握では、現場の追い込み力、踏ん張り力という、ここ一番での現場力を評価します。

 

 

 

後者は将来投資型固定費戦略で欠かせない継続的な成長力のベースです。現場力の底上げを図りたいときの指標はこれです。平均的な観点となります。具体的には生産性(=産出÷投入)です。分母と分子で表現できます。

この数値を右肩上がりで高めることが現場の豊かな成長に欠かせません。弊社では付加価値額生産性(人当たり、人時当たり)を重視しています。

付加価値額を効率よく高める仕事のやり方が少子化という外部環境変化へ対応できる唯一の手段だからです。しばしば取り上げている数値、大手製造企業6,500円/人時、中小製造企業3,600円/人時がそれです。

この付加価値額人時生産性を高めることが昇給の原資獲得につながります。2)実力値の把握では、現場の基礎体力を評価します。

 

 

 

 

 

経営者は基礎体力を常に把握しつつ、踏ん張り力も見える化して、現場のやる気を引き出すのです。踏ん張り力を鍛えるうちに、基礎体力がついてきた・・・・筋力アップと同じアプローチを見える化して現場の奮起を促します。

納期をこなすだけの現場では得られない”積み上げ”感覚を現場へ実感させることは経営者の仕事です。

・成長する現場は、「積み上げ」を意識して、筋力アップを図っている。

・停滞する現場は、納期をなんとかこなしながらも、疲弊感を感じている。

数字で現場を動かす仕組みをつくりませんか?