「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第163話 現場と利益

利益を増やしたいという想いをどのように現場へ伝えていますか?

 

「図にすると現場でやるべきことが見えてきますね。」

部品製造現場(30人規模)を引っ張っている管理者の言葉です。

 

その企業の経営者は、現場の生産性向上を実現させたいと考えていますが、具体策を展開できていません。

生産性を高めて利益を増やすことと現場活動とを結びつけるのに頭を悩ませています。経営陣が掲げた経営目標を現場の作業者ひとりひとりへ落とし込みたいと考えているのです。

 

儲かる工場経営の初手は儲けの見える化。ここから着手しました。繰り返し生産品と特注品に分類し、まずは繰り返し生産品の分析です。儲けと現場の手間暇との相関を把握します。

管理者が主要3機種の分析結果を目にしたときのコメントが冒頭の言葉です。

利益と製品の儲けとの関係が理解できれば、現場でどうすべきか、おのずと見えてきます。

 

 

 

 

 

生産性向上を経営方針に掲げる経営者は多いです。当コラムをお読みの皆さんも同様と思います。一方で、下記の悩みをお持ちの経営者も少なくないのでは?

「生産性向上の重要性を理解はしているが、それを現場活動へどうつなげるのだろうか?」

 

経営者が望むのは利益です。キャッシュです。持続的競争優位性を確立するのに欠かせないのは投資であり、そのための原資となります。

ですから、経営者は継続的に安定して、利益を獲得したいと考えます。

日々の生産活動をこなしているだけではダメです。5年先、10年先を見通すと、先行投資の観点が必要となってくるからです。

 

したがって、利益を獲得できていない状況(赤字)が続くと経営者は不安になります。

「今は手元のお金でなんとかなっているけれども、将来へ向けたお金が減ってしまうと・・・」

 

儲かる工場経営で、儲かる体質に体質改善すれば、利益を持続的に獲得でき、不安は解消できるのです。ですから、全社一丸となって利益を獲得しにいくのだ~っという目標を掲げることになります。

 

が、ここで問題に直面です。

経営者が売上高〇〇、利益〇〇を掲げても、現場は今一つピンとこないということです。

 

先週のコラム「刺さる目標値  https://koujoukeiei.jp/column/no162 」で付加価値額を積み上げる観点についてお伝えしました。

経営者の想いを、現場に刺さる言葉に翻訳する必要があります。

 

利益を獲得するのに現場は何をすべきか・・・。

ひとつが「積み上げる」でした。

利益と製品別儲けとの関係を思い浮かべれば、ご理解いただけるのではないでしょうか?「継続的」に利益を獲得する観点です。

 

 

 

 

 

ここで、もうひとつ、利益確保で現場へ伝えたい観点があります。

時間軸に着目したときの「ばらつき」です。

 

それは「安定して」利益を獲得する論点でもあります。製品別儲けの見える化で把握できるのです。

儲けと現場の手間暇との相関を明らかにすると、その製品の手間暇、つまり所要工数の「ばらつき」に気が付かれることでしょう。

 

製品の儲けをy軸、所要工数をx軸としたとき、所定の儲けを積み上げる手間暇が、x軸方向にばらついていることがあります。

平均値に対して50%以上もばらついているような場合、ここに注目です。平均値と標準偏差を議論する以前の課題とも言えます。先の現場がそうでした。

 

先の現場では、日報で「工数」を集計、実績値をデジタル化し、フィードバックしています。ただし、そのフィードバックは製品別のフィードバックに留まっていました。

目標を掲げるけれども評価はやっていないという現場が多い中、個別のフィードバックができているだけでも素晴らしいことです。

 

しかし、利益を獲得する観点では、もう一歩踏み込む余地がありました。図にすれば、論点が目に見えます。

工数の「ばらつき」を抑えなければ・・・。

管理者はそう気が付きました。

 

 

 

 

 

生産性向上の狙いは、新たな付加価値額を積み上げる余地の創出にあります。

リードタイム短縮がキーワードです。

所要工数の削減であり、滞留時間のゼロ化であり、滞らない生産の流れ化です。

 

注文リードタイムや生産リードタイムを短くしていきたいわけですが、その前にやりたいことがあります。

工数「ばらつき」の最小化です。

 

最長の手間暇を最短の手間暇に合わせることができます。最短の実績があるわけですから、それを手本に合わせることは自然な取り組みです。

したがって、なぜばらつくのか?を考えることになります

 

先の現場では標準工数が設定されていました。標準工数をプロットすると実績値はその標準工数の周辺でばらついています。

概ね、標準作業は順守されているものの、作業者の技量差が原因でばらついているのでは?と仮説が立てられました。

 

ですから、次は、その検証です。

「作業時間を短縮せよ」という前に、「作業時間のばらつきをなくそう」と現場へ伝えたほうが、受け入れやすそうだとも管理者は感じています。

チームで仕事を進める雰囲気も生まれそうです。

 

なお、この考え方は繰り返し生産品だけでなく、特注品でも適用できます。特注品ではGTという考え方があるからです。

 

 

 

 

 

現場でコントロールできるのは「時間」です。

したがって、現場がコントロールできる対象、つまり「時間」軸で利益を説明すれば、理解できます。営業であるなら「販売数量」軸と「単価」軸です。

 

オーケストラで美しい調べを奏でるには、楽器ごとのパート練習が欠かせません。弦楽器部門、管楽器部門、打楽器部門では、着眼点が異なります。扱う楽器に応じてコントロールできる軸が違うからです。

指揮者は、その「軸」に沿って、各部門に的確な指示を出して練習させ、本番で美しい音楽(利益)を生み出します。

製造現場の着眼点、つまり時間軸で利益(美しい音楽)を説明することが欠かせません。

 

 

 

 

 

売上高や利益だけを伝えても、現場の反応が今一つではありませんか?現場の生産活動は全て「時間」をベースにやられているからです。金額ではありません。

利益獲得を現場へ伝えたければ、「時間」軸を加えて翻訳します。

 

製品の手間暇、所要工数は、まさに「時間」軸で表現されており、「ばらつき」最小化は現場にとっても取り組みやすい論点です。

この対応策が、「安定して」利益を獲得するのにつながることは言うまでもありません。

 

繰り返し申し上げていますが、儲かる工場経営は固定費vs付加価値額です。利益を最大化するために、付加価値額人時生産性を高めます。

生産性向上とはつまり付加価値額の人時生産性を高めることであり、そうして、経営者は継続的に安定して、利益を獲得するのです。

 

現場視点では、「ばらつきを最小化し」、「付加価値額を効率よく積み上げる」ことです。

現場は「時間」を投入して、価値を生み出しています。

こう考えれば、翻訳の勘所を理解できるのではないでしょうか?

 

経営者の想いを売上高や利益のみで一方的に伝えるのではなく、「時間」軸を加えて翻訳すれば、生産性向上の具体策が見えてくるのです。

 

 

 

 

 

利益を獲得するのは経営者だけの仕事ではありません。

そもそも、現場活動は経営課題を解決する手段であり、利益獲得は現場を含めた製販一体のテーマでなければならないのです。

 

利益を獲得するために、現場はどのような生産性向上活動に取り組めばいいのか、その具体策を示すのは経営者の仕事です。

「生産性向上をせよ!」と号令をかけるだけでは何も進みません。弊社は利益獲得と生産性向上活動を結びつける後押しをして参ります。いっしょに挑戦しましょう!

 

・成長する現場は、利益を生み出すのは我々の仕事だと考える。

・停滞する現場は、利益を生み出すのは経営者の仕事だと考える。

利益獲得と生産性向上活動を結びつけませんか?