「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第177話 原石を掘り出せる現場のリーダー役がいますか?

「現場のAさんが積極的に提案を出すようになりました。」

中小部品メーカー製造現場、GLの言葉です。

 

創業者である先代社長から事業を引き継いだ現経営者から、現場活動を活性化させて生産性を高めたいとのご要望をいただきました。

製品別儲けの見える化で目標の具体化するところからです。さらに課長とGLの上司チームによる作業者へのPJ内容の説明会をやりました。

 

リードタイム短縮が利益の積み上げにどう貢献するのか、付加価値額人時生産性を高めるとはどういうことか。現場活動に取り組む意義を現場に理解してもらうことに挑戦しました。

現場活動計画を明らかにして、取り組みに着手、2ケ月ほど経過したところです。

 

何か変化が起きていませんか?との伊藤の問いに、GLから冒頭の言葉が返ってきました。

 

 

 

 

 

いろいろな現場で作業者の方々と接して感じることがあります。どんな現場にも「どうせやるなら力一杯やりたい、最善をつくしたい」と考えるメンバーがいるということです。

そうしたメンバーが、すでに活躍していることもあれば、「宝石の原石」のごとく、現場に埋もれているままのことがあります。

貴社の現場ではどうでしょう?

 

経営者はこうした人材に目を配らなければなりません。

なぜか?

意欲的、積極的な人材が活躍できているか否かを見極めるためです。

 

やる気満々でやってやるぞ~っと燃えている作業者がいるなら、そうした人材は、当然に活躍してくれるはずだと思い込んでいないでしょうか。

現場活動はその組織に特有の文化や風土に影響されます。複雑な人間関係も絡むものです。

 

「どうせやるなら力一杯やりたい、最善をつくしたい」と考え、なんとかしようと立ち上がるものの、その想いを発揮できず、途中であきらめる事態を繰り返し、悶々としている・・。

こうした状況に直面している人材もいるのです。

 

意欲的、積極的な人材は、作業者という役割であっても、現場を引っ張るポテンシャルを持っています。

現場を動かすには、後押し役の経営者や経営者層、管理者に加え、引っ張り役のリーダーや作業者が欠かせません。

 

そして、引っ張り役に必要なのは、やる気満々でやってやるぞ~っと燃えていること。説得してそうして欲しいとか、そうしなさいとかいう経営者や管理者の指示をきっかけに湧き上がる程度のマインドでは引っ張り役はつとまりません。

その人材が、もともと持っているエネルギーのようなものが必要だと感じます。だからこそ、その人材からにじみ出てくるオーラのようなものが波及し、現場全体に肯定的、プラスの雰囲気が生まれるのです。

 

しかしながら、そうした人材が持つエネルギーを生かせない現場もあります。

うちの現場に問題点はないし、そんなことをやっても無駄だ、という思考が蔓延している現場です。往々にして、そうした思考回路を生み出しているのが、その現場の管理者やリーダー、ベテランであったりします。

 

現場への影響力が強い人材がそうした姿勢を示しているなら最悪です。そうした人材の思考回路がその現場の文化や風土を形成に大きく影響を及ぼすことは、肌感覚でお分かりになるでしょう。

 

貴社にいる、現場への影響力が強い人材の思考回路はどんなでしょうか?

・言われたことをしっかりやっているし、納期も順守しているから問題はないだろう。

・昔からこのやり方で結果を出してきたのだから、外部からとやかく言われたくない。

・とにかく自分でやるから、他人におそわりたくない。

 

判断基準が”自分”なのです。負の思考回路は負の同調圧力を生み出し、意欲的、積極的な人材の芽をつぶしてしまします。

 

ある現場で、若手から、こんな”愚痴”を聞かされました。

「ウチの上司は、自主的な活動を評価してくれないので、言われたことだけをやっていれいいんです。」

残念そうな表情をしていました。

 

 

 

 

 

意欲的、積極的な人材は、これまでやったことがないやり方に挑戦することが多いので、当初は少数派にならざるを得ません。

いわゆる白い羊の群れの中に、ポツンと一匹立っている黒い羊のような立場です。

 

新たなことに挑戦する黒い羊を周りの白い羊たちが応援するのか?それとも否定し、無視するのか?黒い羊が活躍できない現場であるなら、その現場を変えるのは経営者にしかできないことです。

黒い羊が白い羊の群れに負けないことを期待しては、酷というものでしょう。白い羊を代表する影響力が強い人材の思考回路を変えること、これしかありません。

そうして、黒い羊が活躍できる現場に変えることです。

 

 

 

 

 

先の現場では、そこここに黒い羊が活躍しています。そうした現場ですから、課長とGLの思考回路は前向きです。

「会社を良くしたい、成長させたい」という1点に焦点を当て、仕事のやり方を変えることに挑戦しようしています。そして、そのことを常に現場へ語っています。

問題が発生したら、自分たちで解決しようという自主性に富んでいる点にも注目したいです。貴社ではどうでしょうか?

 

問題が発生したとき、管理者やリーダーはどのような行動をとりますか?

・自分たちには関係ない、経営者や経営者層にやってもらおうと考える。

・ウチの会社で起きたことなので、自分たちで対応しようと考える。

 

いわゆる当事者意識です。当事者意識を持つリーダーに率いられたチームは、当然のようにその思考回路共有します。

ですから、現場の作業者の中に、「どうせやるなら力一杯やりたい、最善をつくしたい」と少しでも考えている人材がいるなら、その人材は上司に共振して、頭角を現してくれます。

 

さらに、先の現場で感じるのは、職場における人間関係要因に関してです。仕事を通じたコミュニケーションの雰囲気がいいのです。

組織が活性化されているのを感じます。組織活性化の3要素として、①共通の目標②貢献意欲③コミュニケーションをしばしば説明していますが、先の現場では③のコミュニケーションが優れているのです。

 

上司チームの思考回路が前向きで当事者意識に富んでいれば、部下の発想も刺激を受け、前向きのやり取りが生じるであろうことは容易に想像できます。

黒い羊が活躍できる雰囲気を醸成するもしないも、全てはその現場を直接に率いる管理者やリーダーの姿勢によるということです。

 

 

 

 

 

先の現場では、上司チームが付加価値額人時生産性(その企業では付加価値額をスループットと表現していますが)の意味を作業者へ一生懸命に説明していました。

上司チームにもまだまだ理解が浅いところがありますが、そんなことはたいした問題ではありません。なんとか現場に理解してもらおうという気持ちが大切なのです。

 

わからないところはあるけど、上司が一生懸命に説明してくれているのだから、大事なことなのだろうな・・・。

現場のメンバーに伝わっているのが手に取るようにわかりました。話を聞いているメンバーの表情を見れは一目瞭然。

 

GLの話に出てきたAさんもそうした話に触発され、積極的な姿勢が前面に出てきました。そのAさんは周りのメンバーにも声をかけ、仕事のやり方を工夫しようとしています。

新たな黒い羊が活躍し始めました。

 

 

 

 

 

どんな現場にも「どうせやるなら力一杯やりたい、最善をつくしたい」と考える人材がいます。

そうしたメンバーが潰されず、活躍できる現場になっているかを見極めてください。意欲的、積極的な姿勢が評価されない現場になっていたら、それを放置してはなりません。

セミナーやご指導のなかで、伊藤の経験をお話しすることがありますが、チーム一体化の重要な論点です。場合によっては、厳しい意思決定を迫られるかもしれません。

 

ただ、経営者にとって、現場に埋もれている”宝石の原石”を、そのままの状態にしておくほどもったいないことはありません。

2:8の法則という考え方があります。貴社の現場のメンバーにも必ず、黒い羊候補がいるのです。黒い羊が活躍できる現場づくりは人材育成の観点からもはずせません。

 

 

 

 

 

組織活性化の担い手は現場のリーダー役であることを思い出してください。宝石の原石を掘り出し、磨くのはリーダー役の仕事です。そして、黒い羊が活躍できる場を整備します。

その担い手が、宝石の原石を埋もれたままにするだけでなく、黒い羊が活躍するのを阻害することがあるなら、放置してはなりません。

 

先の現場では、来月から活動の本格的なPDCAを回し始めます。地道でも確実に付加価値額人時生産性を高めていく仕組みづくりに着手です。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場のリーダー役は、当事者意識に富んでおり、ウチの会社で起きたことなので、自分たちで対応しようと考える。

・停滞する現場のリーダー役は、他人事のように、自分たちは関係ない、経営者や経営者層にやってもらおうと考える。