「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第192話 生殺与奪権を顧客に握られない仕事のやり方とは?

「先生、儲かる仕事を探すことに時間を割かないといけないですね。」

生産性向上プログラムの最終回です。今後、強化すべきことを整理していました。プロジェクトを主導していた幹部が出てきた意見が冒頭の言葉です。的を射ています。

 

50人規模の素材加工企業です。既存顧客に依存したビジネスモデルでは行き詰まる・・・こう考えた経営者は新たな仕事のやり方を模索しています。

頼まれれば残業・休出も厭わずに仕事を引き受けて、信頼を獲得し、安定した事業基盤を築いてきました。

 

ただし、働き方改革の例を出すまでもなく、残業・休出を常態化している企業の将来は明るくはないでしょう。将来を担うべき若い人たちはそうした職場を避けるからです。

こればかりはどうしようもありません。時代の流れを読めば、付加価値額人時生産向上が生き残りのカギであると理解できます。

また、既存顧客も生き残りに必死です。新たな仕事のやり方を仕掛けてくるかもしれません。顧客が内製化や他の外注先という選択権を握っているのです。

 

そこで、新規顧客、新規市場への拡販活動を通じて、新たな付加価値額を積み上げる機会を増やします。既存顧客の受注だけを期待してぼっーっとしていては、いつ足をすくわれてもおかしくはないです。

 

そう考えた経営者は現場の基礎体力を鍛えようと決心しました。自立して生産性を高める活動を継続できる現場体制が不可欠だと考えたのです。今から1年前のことです。

それから、付加価値額生産性向上プロジェクトに着手しました、今、仕上げの段階です。

 

人時生産性を高めるには、コスト削減だけでは成果が限定的であること、製販一体でなければ新たな付加価値額を積み上げられないことにその幹部は腹落ちしたようです。

顧客がこけたら自社の命脈が絶たれるような従来のビジネスモデルとは決別したいと考えています。

 

 

 

 

 

先の経営者が考えたように、新規顧客、新規市場へ進出するにあたり、現場活動を強化することは理にかなっています。既存顧客との仕事のやり方を振り返り、今後、新規顧客、新規市場へ進出するために必要なことを問うからです。

 

儲かる価格の構造を考えると分かります。

@コスト+@技術料=@変動費+@固定費+@技術料 (※)

(@は製品1個当たりという意味)

 

つまり(※)を踏まえて、少しでも有利な価格を付けられる現場力を構築するのが生産性向上活動の目的です。具体的にはどうするか・・・・・。

1)@変動費を下げる。

2)@固定費は効率を高める。

3)@技術料は上げる。

 

@変動費を下げる1)項は論を待たないでしょう。材料費の原単位や外注費を削減する現場活動です。

2)項で@固定費は削減しないの?と考えた方もいるかもしれませんが、弊社では固定費を削減の対象とは原則考えません。

 

ご存じのように固定費に占める大部分は人件費です。業種業態でいろいろなケースがありますが、固定費占める人件費の割合は50~80%であり、固定費削減=給料削減となります。

固定費削減から考えるのは大手の発想です。そもそも少数精鋭の中小製造企業では現場のやる気に焦点を当てます。

 

固定費は効率を高めたいのです・・・、つまり、詰めて、空けて、取り込むこと、リードタイム短縮と生産性向上です。

・既存の経営資源で高価なものを多品種で造れること。

・量を減らしてもなお生産性を高められること。

経営者が手にしている経営資源の効率を最大化することを目指します。

 

そして、最後の3)項はモノづくりで商売をしている私たちにとって、王道の中の王道の取り組みであることは言うまでもありません。

圧倒的な品質(設計品質)と圧倒的な納期です。新規顧客、新規市場は何を望んでいるでしょうか?

 

伊藤がかって従事していた大手企業で扱っていた自動車部品では軽量化、中小管理者時代の切削加工部品では超短納期がそれらに該当していました。

新規顧客、新規市場へ進出するために必要なことを明らかにして、儲かる仕事のやり方を共有します。

 

貴社では儲かる仕事のやり方が共有されていますか?

 

 

 

 

 

経営者は、会社全体の付加価値額人時生産性を高めるために具体的にどうするのか?という問いに対して明確な答えを現場へ提示しなければなりません。

先の企業では、この点が不明確でした。

なぜなら、これまで、既存顧客から依頼された仕事を納期までに(時として力づくで)納入しさえすれよかったからです。儲けはその結果ついてくるものだと考えていました。

 

この状態から、積極的に儲けを稼ぐ、新たな付加価値額を積み上げるという思考回路を共有しようと試行錯誤したのです。その企業独自の儲かる仕事のやり方を明らかにしようとしました。

 

その企業に特徴的なことがありました。

材料は顧客から支給されていることです。

 

コスト構造上、@変動費がありません。

コストは原則、@固定費のみです。

 

こうしたモノづくりで留意しなければならないことが2つあります。

1)変動費削減の機会がない。

2)顧客が材料支給の納期を守ってくれないと生産計画が混乱する。

 

特に後者は、滞りのない生産の流れを作るときに大きな問題となります。納入が遅れれば、現場は生産に着手できず、結局、生産計画も顧客に握られた状況になるのです。

本来なら契約時に顧客へしっかり伝えなければならないことですが、先の企業では、商習慣上、こうした曖昧さが放置されています。

 

今は如何ともしがたく、本来、作業ごとの着手時刻と終了時刻を指定すべき小日程計画において、その現場では、一定時間枠内で複数の製品を指定し、顧客から支給された材料が手元に届いていれば生産着手というやり方でしのいでいます。

長い間、こうしたやり方をしていたため、異常な状況とは感じていなかったようです。

 

さらに、@変動費の原単位を減らす機会がありません。自ずと焦点を当てるべきことが明らかになりました。@固定費の効率を高めることと@技術料を上げることを目標にして現場活動を展開したのです。

 

段取りと加工のバラツキを最小化するために、標準書を整備しなおす仕組みをつくり、PDCAを回し始めました。

また、品質保証の強化が儲けにつながることも経験しました。

 

こうして、現場では「詰めて、空けて」、営業は空いたところに新たな仕事を「取り込む」のです。製造と営業のベクトルが揃っていないとできません。

 

製販一体でなければ儲かるモノづくりができないことを1年間のプロジェクトで理解し、それを実践する仕組みをつくり上げました。

 

 

 

 

 

貴社の現場でこんな言葉が飛び交っていたら要注意です。

「それは営業の仕事だ。」「製造がこちらの言うことに耳を傾けてくれない。」

もはや時代遅れの思考回路と言わざるを得ません。

 

削減の時代から積上げの時代ですから、双方が一体とならないと顧客から選ばれる仕事なぞできるはずもないのです。

1)製造は、営業が持ってきた顧客要望を業界に先駆けて実現させるモノづくりを目指す。

2)営業は、製造の特徴を生かし、滞りのない生産の流れをつくれるよう顧客と交渉する。

 

大手では市場ニーズに焦点を当てて、営業活動、技術開発、製品開発、現場活動が連動させています。

伊藤は大手で自動車部品の製造・開発に携わりましたが、こうした製品では顧客が明確です。ターゲットがはっきりしている分、連携しやすかった経験をしました。

 

大手だから営業、開発、製造を連動させていたのではありません。顧客の心に「ズドン」と響く仕事を提案しないと儲からなかったからです。これは製販一体でないとできないことです。

相手は0.1円単位でコスト管理をしつつ、魅力的なクルマをつくろうとしていました。「私、売る人」「私、開発する人」「私、造る人」。ベクトルの向きがバラバラでは顧客から選ばれないのです。

 

 

 

 

 

中小製造企業でも製販一体が欠かせなくなりました。自主的に、積極的に儲かる仕事を取ろうとしたかったら、なおさらそうです。

製造は製造だけでコスト削減、営業は営業だけで御用聞きという時代は終わったのです。製販一体で付加価値額を効率よく積み上げられる現場が生き残ります。

 

自ら顧客へ働きかけ、価値の提供を主導できれば有利な交渉が可能です。顧客に選ばれる状況を目指します。これは製造と営業がバラバラでは絶対にできないことです。

生殺与奪権を顧客に握られない仕事のやり方を手にしなければなりません。詰めて、空けて、積み上げて、人時生産性を高めていきましょう。

 

先の幹部は営業に軸足をおいて業務をしています。現場にも顔が利きます。

「これからもガッチリやります。」

1年間のプロジェクトでつくった製販一体の仕組みを上手に強化してくれそうです。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場は、製販一体で生殺与奪権を相手に握られない仕事のやり方に変える。

・停滞する現場は、従来の仕事のやり方を変えず、顧客がこけたら、いっしょにこける。