「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第196話 困難に直面している今、やるべきことは何ですか?

「仕事が減るのを機会に現場教育を強化します。」

先月上旬、50人規模のメーカー幹部からご相談をいただきました。

新型コロナウィルスの経済への影響が懸念され始めたころです。その企業の受注は、その時点で、まだ目に見えて減ってはいませんでした。

しかし、4月以降、大きく落ち込むであろうと考え、それに備えてどうすべきか検討していた折のご相談です。

帰休も計画しなければと考えていました。そうしたなかで、これを機会に現場教育を強化しようとも考えたのです。冒頭の幹部のことばです。

 

 

 

 

 

最悪の事態を回避したかったら、起こり得る全ての事象を洗い出し、手を打つことです。未然防止と先手必勝は少数精鋭の中小製造企業がとるべき戦術です。

中小は大手と違って、余力がありません。事が起きてからでは事象に振り回されます。先の企業では先読みの結果にしたがって、事前に手を打とうとしたのです。

 

気が付くと、現場作業者の手が空き、一日中掃除していた・・・・。こうした状況に至ってはじめて、帰休をやらねばと考える企業と違い、一足先に前進できます。

計画を立てて事業を展開する仕事のやり方を実践している経営者です。競合よりも一歩早く足を踏み出せる上に、現場のバタつきを最小化できます。

 

 

 

 

 

そして、もう一つ、注目したいことがあります。それは、受注減という問題に直面した状況下での現場教育強化です。

計画的に帰休を導入しても、現場がバタつくのは避けられません。受注がゼロになるわけではなく、それなりに仕事はあるのです。

 

貴社でもそうでしょうが、最小限の従業員数で対応しようとするわけです。かえって、現場は忙しくなります。役割変更などで混乱も避けられないでしょう。

そうしたときに、あえて現場教育を強化しようと考えているのです。貴社では非常時の現場教育強化、将来投資をどう考えますか?

 

平時での重要性もさることながら、大きな問題に直面した、非常時のときこそ、将来投資に腰を据えて取り組むべきだと弊社は考えます。変化に対応できる、強い会社、強い現場を作るためです。

 

 

 

 

 

臨済宗中興の祖と称される白隠禅師はその著書、『遠羅天釜(おらてがま)』で「動中の工夫は静中に勝ること百千億倍す」と語っています。

修行というと、坐禅のような「静中」の修行が大事と考えられがちですが、農作業や掃除、雑務等のいわゆる日常生活での修行、つまり「動中」の修行もそれに劣らず大事であるとの教えです。

 

「静中」では、煩わしいものがありません。したがって、修行に専念できます。修行が進みそうです。

一方、「動中」は煩わしい日常です。困難や誘惑があります。実社会ではそうしたものが普通にあります。そうした環境で、弱い心に打ち勝ち、自制心を保って修行をすることの方が、修行の目的に合致しているような気がします。

宗教が実社会で悩んでいる人を救うものであるなら、「動中」での修業を積み重ねないと”成果“は得られないでしょう。「顧客」は「動中」にいるのですから。

 

 

 

 

 

白隠禅師の言葉は儲かる工場経営のヒントになると感じます。(少々、拡大解釈となりますが)白隠禅師が言う「静中」を平時、「動中」を非常時と置き換えて考えたいのです。

事業環境に大きな変化があるとき、大きな問題に直面したとき、そうしたときにこそ、それを機会に将来投資を強化するのです。そうして、新たなステージへ進みたいのです。

 

企業の機能は「成長」と「変化」で発揮されます。21世紀は変化の時代。特に今は、地殻変動の真っただ中。事業を成長、発展させるのに大切なときです。イノベーションは技術だけではありません。人や仕組みも対象です。

経営者が、今を、「困難なとき」としか考えないか、「変えるきっかけ」とも考えるかです。5年後、10年後に答えが出ます。

 

今は目の前の困難を乗り切ることに専念し、平時になったら“じっくり”現場教育や設備投資を考えよう・・・この思考回路では競合に競り負けます。

アフターコロナでは、以前と同じ状況に戻ると言い切れません。平時に戻るにしても、「以前とは違った状況」に向かって戻る(と言うより変化する)かもしれないのです。したがって、「動中」で動かないと流れを見誤ります。「静中」を待っていたら遅れるのです。

 

大きな変化があるとき、大きな問題に直面したとき、そうしたときを機会ととらえて、現場教育や設備投資を強化しておけば、状況好転をきっかけとして、成果は出まくります。

熟した果物がなる樹の下で、口を開けて待つ状況をつくりたいのです。「動中」での事前対応は「静中」で儲けまくる準備になります。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の要諦は「顧客に選ばれる製品」を「効率よく造る」ことにありますが、現場には、「顧客に選ばれる製品」という観点、顧客視点も理解してもらう必要があります。

成熟化した国内市場で生き残るには、営業部隊だけでなく、製造部隊も持たなければならない視点です。そうして付加価値額人時生産性を高めます。

値決めの仕組みづくりも含めた、人時生産性向上活動を展開しなければならないわけで、必然的に製販一体へ行き着くのです。

 

従来のモノ作りが、肥大化を踏まえた削減の時代のやり方であったとするなら、今は、付加価値額人時生産性に焦点を当てた積み上げの時代のやり方になります。20世紀型から21世紀型へ、視点を変える必要があります。

そして、新たな視点を持つ必然性を現場に感じさせるには、変化のとき、非常時、「動中」が適しています。「健全な危機感」でリーダー、現場キーパーソン、従業員一人ひとりのベクトルを揃えられるからです。

「健全な危機感」は組織の凝集性を高めます。

 

・従来技術だけでは、新規顧客を開拓できない。困った。

・従来の仕事のやり方では2年続いた赤字を黒字化できない。困った。

・既存顧客からの従来の仕事を請けているだけでは利益が積みあがらない。困った。

 

直面している危機を現場へ伝えて、「健全な危機感」を共有します。ベクトルを揃えやすくすれば、次の具体策へ踏み出せます。

当事者意識に欠ける現場で共有できないのが「健全な危機感」です。健全な危機感を共有できる現場とそうでない現場の格差は広がるばかりです。

 

 

 

 

 

先の現場では、顧客視点を持った生産活動にやり方を変えようとしています。経営者の新たな戦略ではそうした観点が求められるからです。

そこで、健全な危機感を共有して、現場教育をお勉強で終わらせるのではなく、実践します。そこで、リーダーなど核となる人材に関連した基礎知識を習得してもらうのです。

考えること以上の行動はできません。知識も必要です。非常時に現場教育を強化する所以です。5月からスタートします。(本来、現場で「熱」を伝えながらやりたいところですが・・・、当面はモニター越しです。)

 

 

 

 

 

多くの経営者は、緊急事態宣言、新型コロナウィルス対応が加わり、多忙な日々を送っています。短期視点に囚われがちですが、こうしたときこそ、アフターコロナを見据え、将来投資を緩めないでください。

現場教育強化はそのひとつです。健全な危機感でベクトルを揃えておけば、アフターコロナでは一気にスタートダッシュができます。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場は、問題に直面したときを新たなやり方に変えるきっかけとする。

・停滞する現場は、問題に直面しても当事者意識がないので何も変わらない。