「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第197話 見える化の本質を押さえていますか?

「先生、目標には今一つですが、昨年実績は超えています。」

生産実績を報告してくれた現場リーダーの言葉です。

生産性向上活動に取り組んで半年余り、いよいよ成果を刈り取る時期です。毎朝、工場長が営業部隊と一緒にその日の生産計画を立てる製販一体の取り組みも定着してきました。

また、新たな工程設計もできました。リードタイム短縮のためです。いよいよ、詰めて、空けて、取り込む体制を機能させます。

現場活動を定着させる3つの羅針盤のひとつが見える化です。早速、新たにやり始めた見える化の報告を現場リーダーがしてくれました。見える化の対象は生産実績、冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

現場活動の対象はQCDや安全、環境、教育と多様です。貴社では現場活動が定着していますか?継続できていますか?活動に意味や意義を見いだせていますか?

3つの羅針盤があれば活動を制御できます。一体化、見える化、収益化。経営者が現場活動を定着させるための戦術です。

 

「一体化→見える化→収益化」が手順となります。現場活動の実務が始まったら、見える化です。やる気を引き出す3要素のひとつ「有能性」を感じさせるには、活動結果を見えるようにしなければなりません。

フォローと評価の重要性を理解している経営者の皆さんが必然的に行き着く戦術です。

具体的には活動の結果を量や率、質で評価します。数値化、定量化です。そうして、活動結果を比べられるようにします。この「比べる」がポイントです。人は比べられる環境に置かれると頑張ろうとします。

 

 

 

 

 

体重を減らす方法としてレコーディングダイエットがあるのをご存じですか?比べられる環境を作り、体重を減らす意欲を高めます。

やることは日々の体重を記録するだけです。特別なことはやらなくても自然とダイエットが進むとされています。

 

なぜか?

1週間前、1か月前の体重と比べられるからです。変化を追えます。

 

そもそも体重を減らしたいと考えているわけです。結果を具体的に見せられると頑張らないと!という気持ちになります。前日よりも、1週間前よりも、1ケ月前よりも体重を減らしたいと考え、行動したくなるわけです。

このように「見える化」の本質は比べられる環境を整備することにあります。

 

 

 

 

 

体重を計測しようと決心した瞬間、計測の対象となる「体重」は特別な意味を持ち始めます。つまり気になる存在となるのです。クローズアップされます。

したがって、成果を出すために重視したいのは、計測対象です。「何」を計測すべきか?ということです。

 

ダイエットの計測対象は体重だけではありませんね。食事の回数や摂取カロリー量、あるいは一日に歩いた歩数やランニング距離、結果としての体重だけではなく、プロセスも計測対象となります。

何を計測するとダイエットに効果的であるかどうかは人それぞれです。「どうやって計測するのか」も重要ですが、その前に「何を計測するか」をじっくり考えます。

 

生産性向上活動ではどうでしょうか?

何を計測の対象にしますか?

生産数量や所要工数、リードタイム、直行率、不良率、稼働率、生産性・・・。こうした直接的な生産指標だけではありません。多能工化指標、スキルアップ指標、改善提案案件数、現場活動実践回数、5S実績、無災害日数・・・。

 

最終的には固定費VS付加価値額で判断するわけですが、そこへ至るプロセスで特別な意味を持たせたい対象を「計測」するのです。まずは「何を計測するか」です。

付加価値額人時生産性ははずせません。3,000円/人時→4,000円/人時→5,000円/人時→6,000円/人時のようにドンドン上げていきたい計測対象です。

 

 

 

 

 

興味深いことに、見える化はそれを実践するだけで成果が出たりもします。

製品別の所要工数を記録し始めただけで、所要工数が減り始めた現場があります。また、改善提案案件数をグラフに表示しただけで、案件数を増やした現場もあります。

 

実績と目標が比べられるので、目標達成の具体的な行動が呼び起こされるのです。実績と目標とのギャップを認識されると、みんなで何とかしなければという思考回路が機能します。

計測を始めると、計測の対象だけでなく、それを計測している現場自身も変わるのです。

 

ただし、どこの現場でもこうした行動が呼び起こされるかというとそうではありません。

行動が呼び起こされる現場とそうでない現場があるのです。それは組織力やチーム力、現場力の違いによります。一体化の水準次第です。

 

 

 

 

 

貴社では、活動結果のグラフや表を現場へ掲示したとき、どんな反応が返ってきますか?

一体感を感じる現場では、興味深げに眺め、作業者どうしてあれやこれやと話す姿がみられます。聞いてみると、次は今回の結果を上回るように頑張ろうという言葉を返してくれたりもします。

一方、そうでない現場では・・。言うまでもありません。チーム力に関心がなければ、興味も湧かないのでしょう。他人事です。実績と目標とのギャップを見せられても何も感じません。

 

貴社の現場はどちらですか?

見える化はやる気に火をつけ、現場活動を加速させる戦術ですが、一体感がなく、そもそも、そうしたことに興味を示さない現場ではどうしようもないということには留意しなければなりません。その場合は、一体化からスタートです。

 

見える化の本質は比べられる環境を整備することにあります。

「どうやって計測するか」も重要ですが、その前に「何を計測するか」を考えます。比べられる環境を整備するためです。現場にはその気になってもらいます。

ただし、一体化が進んでいないと、そもそも、何を見せても無関心です。この状況は一日も早く脱しなければなりません。

一体化を重視する所以です。ベクトルがある程度揃った状況なら、計測することで現場の意識は確実に変わり始めます。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場は、「計測」するだけで意識が変わり成果を手にできるのでドンドン進む。

・停滞する現場は、見える化しても無関心なので何も変わらず、相変わらず文句だけ出る。