「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第205話 振り返り会議で成果を伝達する狙いとは?
「先生、現場での会議がイイ感じで、結構、盛り上がりました。」
素材加工メーカー製造課長の言葉です。
受注が舞い込む時代が過ぎ去った現在、儲かる生産性向上とはただひたすら分子の積み上げです。積み上げるべき付加価値額に焦点を当てないと生産性向上が利益につながりません。
とは言え、現場活動の初手は分母の削減、つまり工数削減からです。これが定石。付加価値額を積み上げる事前準備です。
この企業では複数工程で工数削減活動に着手しました。幹部や管理者の一生懸命で丁寧な仕事ぶりが波及している現場です。
リーダーが主導して、作業者と一緒にストレスフリー項目を洗い出し、対策を考え、実行する・・。小さなPDCAが回りはじめました。
半年間の活動で前年度対比20%工数減を達成しつつあります。意欲的な現場では、数値目標を掲げるだけでも成果が出るとはしばしば言われることです。
活動を開始してから半年。活動を振り返るのにイイ時期を迎えました。フィードバックミーティングです。作業者とリーダー、管理者が集まって、進捗確認や成果を議論しました。
ストレスフリー項目を検討した場でもそうでしたが、今回の打ち合わせでも作業者から活発な意見が出たようです。冒頭の言葉です。
組織を活性化させる3要素があります。アメリカの経営学者チェスター・バーナードが提唱した組織が成立する3つの条件です。
・共通の目標
・貢献意欲
・コミュニケーション
コミュニケーションがチーム力を高め、チームを活性化させます。上司と部下、メンバー同士でのコミュニケーションが不活発なチームでイイ仕事ができている事例を知りません。
コミュニケーションこそがチームワークの源です。忙しい業務の合間を縫ってミーティングを開く狙いは相互のコミュニケーションを深化させることにあります。
チームに所属している以上、やらなければならない仕事が2つあります。
1)できる仕事
2)やらなければならない仕事
チームをチームとして機能させるのに欠かせないのは「仕組み」です。標準書、手順書、マニュアル、説明書など。つまり、現場の「トリセツ」です。
したがって、儲かる現場では、作業者全員が2つの仕事をやっています。
1)モノづくり
2)しくみづくり
前者ができる仕事であり、後者がやらなければならない仕事です。中小製造現場では前者を優先するきらいがあります。貴社ではどうでしょうか?
経営者が前者優先を放置すると面倒くさい状況に陥ります。人に仕事が付くからです。「できることがエライノダ」という誤ったメッセージを現場へ発することになります。
この仕事観を持った作業者の判断基準は「自分」「個人」です。自分さえできればいいという思考回路になります。
より多くの付加価値額を積み上げたいのなら、チーム力が必要です。付加価値額の高い仕事は複雑で高度だからです。一人でできる仕事はたかがしれています。
自分が知っていることを他の人にも使ってもらおう。そうしてチーム全体で人時生産性を高めよう。チームは、作業者へ全体最適の価値観を持つよう求めます。できる仕事だけではなく、やらなければならない仕事もあるのです。
仕組みづくりでチームに貢献です。「人の役に立つ」ことで始めてチームに所属している意味が出てきます。これはバーナードの唱える貢献意欲です。
コミュニケーションの深化とは「あなたは私に貢献してくれています、役に立ってくれています。」というメッセージを相互に発信するプロセスに他なりません。
チーム力が高い現場では、日常的に作業場での立ち話や休憩所での雑談等々、さりげない会話が活発に交わされているものです。雰囲気の良さは肌感覚で分ります。
先の企業の現場がそうです。ただ、コミュニケーションが活発な現場であっても、あえて、作業者を集めて振り返りの会議を開催します。狙いは「成果の伝達」です。
先の現場ではリーダーが主導して新たな手順書をどんどんつくりました。自分のやり方をメモに箇条書きにして手順書作成のサポートした作業者もいたようです。
さらに、手順書作成が追いつかない業務については、それを熟知している作業者が自主的に周囲へ教えています。
そして、製造課長がフィードバックミーティングで成果を伝え、全員で工数削減の実績を確認しました。
直接作業だけでなく、それを支援する仕組みづくりも進んだおかげで成果が出たと製造課長は説明しました。
成果を通じて、モノづくりだけでなく仕組みづくりも大切であると考える思考回路が共有されるのです。
その結果、コミュニケーションが一段と深化し、相互貢献もイイ感じで進みます。
チームに所属している以上、作業者にはチームに貢献してもらわないとなりません。できる仕事だけでなく、チームとしてやらなければならない仕事も大事だと考えて欲しいのです。
経営者は成果をしっかり伝え、仕組みづくりの大切さも教えます。仕組みがあるからこそ成果が出たことを理解させるのです。
さらに、コミュニケーションで相互貢献が促進され、仕組みづくりが現場に定着します。
・成果の伝達
・仕組みづくりも大切と考える思考回路の共有
・コミュニケーションで相互貢献の促進
成果に焦点を当てたフィードバックミーティングで仕組みづくりを促します。
ただ、次の2つができなければ、成果を伝えようもできません。
・最適な目標を設定すること。
・目標達成度を計測する指標を設定すること。
こちらも大切なスキルです。
弊社は挑戦する経営者を力強く後押しして参ります。
次は貴社の番です!
成長する現場は、成果を知ってチームに貢献する仕組みづくりも大切な仕事だと考える。
停滞する現場は、成果を知らないので相変わらず自分さえできればいいと考える。