「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第206話 成長発展する現場が必ず直面する課題とは?

「管理台帳への記入作業が負担になっていたとは・・・・・・。」

30人規模板金加工企業経営者の言葉です。

 

現場活動では、作業者一人ひとりに「ストレスフリー項目」をあげてもらいます。ストレスフリーとは「そうありたい状態」のことです。問題を課題へ変換し、PDCAを自ら回す術を身につけてもらいます。

経営者の仕事の軸足を「将来」へ移すためです。経営者には「現在」の業務を手放してもらいます。そうでないと経営者は楽になれません。

 

先の企業の現場でも、ストレスフリー項目を上げてもらいました。初めのことです。作業者も勝手が分らず、言葉がなかなか出てきません。

しかし、誰も言わないなら、自分が言葉を発しようと考える作業者もいます。そういう人は現場のキーパーソンであることが多いです。

興味深いことに、チームが機能している現場では、使命感を持った作業者が自然と出てくれます。キーパーソンが口を開いたのをきっかけに、他の作業者からも言葉が出てきました。

 

出された項目のひとつに原材料の在庫管理台帳廃止があります。論点は在庫数量です。数値の精度が問題になっています。月末の棚卸しで検証しますが、実数と台帳に差異が発生することが多いのです。

そのため、入出庫時に都度、在庫実数をチェックするのがその現場のルールとなっています。いわゆる「都度棚卸し」です。このあたりは経営者がこだわる精度次第です。この作業が負担になっています。

 

長年、そのやり方でやってきていたので、経営者は当り前のことをやってもらっていると考えていました。管理台帳が負担になっていることを初めて知ったようです。

生産性向上活動を本格化させる前に、手を打たなければと考えました。現場の負担を慮っている経営者です。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

チームをチームとして機能させるのにやらなければならないことがあります。「判断基準」の共有です。管理する人や指示を出す人が現場へ「判断基準」を繰り返し伝えます。その浸透には時間がかかるものです。経営者がひとりでやっていては埒があきません。

実績を「基準」内に維持する仕事が管理です。「判断基準」がないところで管理はできず、さらに管理がない現場では現場活動ができません。手順書や標準書、マニュアル、つまり仕組みを通じて、作業者1人ひとりへ「判断基準」を示します。仕事には比べるものが必要です。

 

先の現場では原材料在庫に関する判断基準が示されています。在庫数量を設定数量内で維持すること。そこで在庫数量を常時明らかにします。だから実績を帳票へ記入して情報共有するのです。帳票への記録は管理の定石です。

また、経営者はその精度にもこだわっています。やるならば徹底しなければなりません。そうでなければマネジメントにならないからです。その考え方に問題はありません。

ただ、その一方で作業者は「管理業務(在庫管理台帳の運用)がたいへんだなぁ」と感じるようになっていました。

 

 

 

 

 

中小製造現場が十数人規模から20~30人規模、そして40~50人規模へと成長発展する過程で必ず直面する問題があります。加工以外にやらなければならない業務が増えることです。言い換えれば、「チームを機能させるための仕組み」です。

規模が小さく、経営者の目が隅々まで行き届くなら、作業者は加工作業に専念できます。経営者が陣頭指揮採っているのでそれに従えばいいからです。仕組みはいりません。

しかし、チームが大きくなると、そのやり方では経営者は辛くなります。もはや力業でチームを回せません。

そこで、仕組みの出番です。そこでは、管理が必要になります。実績VS基準(標準)。これが管理です。

 

大手と異なり中小製造企業の経営資源には制約があります。したがって、限られた工数で最大限の付加価値額を積み上げるのに、やるコトはひとつです。作業者を「加工」に専念させること。直接作業時間を増やすことです。

一方、チームが成長発展する過程で、管理業務の重要性が高まります。経営者はこの両立に頭を悩ませるのです。管理は重要ですが、それを強化しても儲けに直接寄与しません。

では、どうするのか?

 

 

 

 

 

仕組みにおいて、フィードバックは絶対です。実績VS基準(標準)を抜きに仕組みは機能しません。実績を見えるようにしたいのです。

そこで、帳票類で記録して情報を共有します。ただ、これを”真面目“にやり過ぎると帳票類だらけ・・・。肝心の加工作業が疎かになるようでは本末転倒です。

 

中小製造現場で管理業務を強化するとき、忘れてはならないのは「現場の持ち工数は一定でる」と言うことです。コンビニの商品棚と同じです。

コンビニの店長は売上を伸ばそうと多くの種類の売れ筋商品を陳列したいと考えます。しかし、商品棚のスペースは一定です。取捨選択しなければなりません。

 

管理業務を強化するとき、必要最小限の項目に絞ることです。必要だからと言って、アレもコレもと現場へ指示すると、知らないうちに現場の負荷が大きくなっています。管理自体が疎かになる懸念もあるのです。少ない項目を徹底させます。

先の現場では、作業日報や現品票に加え、品質記録などの顧客要求もあり、現場での管理業務が増えていました。まずは、本当に必要な管理業務は?と考えます。

 

 

 

 

 

実績VS基準(標準)の狙いは「実績を見えるようにする」ことです。帳票類は手段のひとつに過ぎません。記録が不要な項目なら「モノに語らせる」やり方もあります。

先の現場における原材料の在庫数量管理なら、原材料の置き方で数量を一目瞭然とすればイイのです。10個単位、10本単位など置き方を工夫します。

見て数量が分れば帳票は不要です。現場のスペースを勘案しなければなりませんが、置き方で数量が判別できるなら、現場も“楽に”管理できます。

 

・現場の持ち工数はコンビニの商品棚と同じである。

・本当に必要な管理業務は?と考える。

・「モノに語らせる」管理のやり方もある。

 

 

 

 

 

マネジメントはチームを機能させるのに欠かせないものです。「チームを統括する人」と「仕組み」でそれを実践します。

中小製造現場が十数人規模から20~30人規模、そして40~50人規模へと成長発展するなかで貴社独自のやり方を構築するのです。この規模では、もはや力業でチームを機能させられません。

できているように見えたとしても、早晩、行き詰まります。特定の人物に依存している、あるいは内部に“巨大な”ストレスの塊を抱えているからです。

 

人時生産性を高めるために、本当に必要な管理業務は?と考えます。先の現場では帳票を廃止することを考えています。

実はこの「本当に必要な・・」がキモです。納期以外の判断軸がなければ、適切な「本当に必要な・・」にはたどりつきません。弊社は挑戦する経営者の後押しを力強くして参ります。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、現場の負荷に配慮して必要最小限の管理業務を徹底する。

停滞する現場は、アレもコレも管理しようとして、負担が大きく疎かになる。