「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第232話 下請け型で儲かるモノづくりの構造を構築する観点

「これまであまり営業をやっていなかったので・・・」

ここ数年、売上高が減少傾向にある部品製造企業経営者の言葉です。

 

特定の産業機器に欠かせない機能部品を長年製造しています。しかし、技術革新のあおりをうけて、その産業機器の需要が減ってきました。

また、特定企業への依存度が高すぎるのも問題になっています。親企業も生き残りに必死です。親企業の収益構造も変わってきました。その企業とは、先代の時代からの信頼関係がありますが、どうしようもありません。

 

今後の課題は、新規顧客を開拓して、受注を積み上げることです。しかしながら、直ぐに動けない・・・。冒頭の言葉です。

 

下請け型の事業は自社ブランド、自社製品を扱う事業より営業コストを削減しやすいと言われます。親企業とのパイプを維持さえしていれば商売が可能だからです。

先の企業ではそれが仇となってしまいました。営業活動を強化しなくても、親企業との信頼関係で事業を維持できました。

 

したがって、今後の課題は営業力強化になりそうですが、より本質的なことへ焦点をあてることにしました。「儲かるモノづくりの構造」の再構築です。差別化可能なコア技術を有する企業だからです。営業力云々よりも大きな枠組みで考えることにしました。

 

 

 

 

 

貴社のモノづくりは儲かる構造になっていますか?儲かる構造かどうかの判断基準は人時生産性です。儲かる構造なら、人時生産性を6,000円、7,000円、8,000円と高められます。

2割、3割程度の生産性向上で満足していては面白くありません。

経営者の発想は2倍、3倍です。

 

そもそも、なぜ「儲かる構造」なのか?

経営者は従業員が物心両面で幸せになって欲しいと考えるからです。具体目標は利益アップ、給料アップとなります。そうであるなら、人時生産性向上しかありません。

 

人時生産性を高める「儲かる構造」が必要です。

・分母一定で付加価値額を一層積み上げる。

・分母を増やしながらそれ以上に付加価値額を積み上げる。

どちらかです。そして、どちらにしても付加価値額分を支払ってくれるのはお客様です。

 

下請け企業の価格はお客様の原価になります。お客様にとって原価を増やしてでも手に入れたいモノを提供できなければなりません。お客様に選ばれる商品、製品です。

 

 

 

 

 

原価を増やしてでも手に入れたいモノとは?

お客様の立場に立てば明らかです。お客様の「お客様」を満足させる商品、製品をつくるのに欠かせないものとなります。

 

先の企業の機能部品がそうです。機能上果たす役割が大きい上に、その企業でなければ組み上げられない機能部品でもあります。

特定分野ですが、競合を凌駕する差別化戦略が可能です。コア技術があります。納期や品質クレームも実質ゼロです。お客様に選ばれる製品になっています。

しかし、残念ながらお客様の製品が時代とともに需要減状況に直面しており、その影響をまともに受けてしまいました。

 

 

 

 

 

自社ブランドを持ち自社製品を展開すると儲かる構造になりやすいのはしばしば指摘されることです。ただ、全ての中小製造企業がそうできるわけでありません。

先の企業も外部のアドバイザーからそうした見解をもらって、それができれば既にやっている、出来ないから困っているのだと口にしています。

 

少数精鋭の中小現場です。現時点でやれることは限られます。したがって、今は下請け型でも構わないのです。儲かる構造の下請け型を目指せばイイのです。

特定の分野ですが、先の企業ではそれをやっていました。ただし、お客様の影響をもろに受けるのが下請け型の宿命です。

依存度が高ければ高いほど危険度も高まります。お客様と運命共同体です。下請け型で儲かる構造を構築するときの留意点です。

 

 

 

 

 

先の企業では、下記を探り始めました。

・お客様にとって原価を増やしてでも手に入れたいものはなにか?

・お客様のお客様を満足させられる商品、製品をつくるのに欠かせないものは何か?

早速、行動したところ、新たなお客様の”現場“に入り込んでヒントをつかんだようです。

 

先の企業が目指すモデルは、特定のお客様に依存せず、強みを多様な業種・業態のお客様へ提供できる下請け型です。変化への対応力を高めます。

中小製造現場の管理者時代、同様の課題を掲げました。従来のやり方の延長線上には解決策がなかったからです。現場のベテランからは環境整備の要望もありました。

 

方針が明らかになれば営業に挑戦しやすくなります。「これまであまり営業をやっていなかったので・・・」という経営者は営業活動の羅針盤を手にすることになるのです。

 

自社商品を市場に問う経営者はションピングモールで消費者を観察します。新商品、つまりお客様が余分にお金を払ってでも手に入れたいもののヒントをつかむためです。

下請け型で単品部品や機能部品を提供している経営者にとっての「ショッピングモール」はどこにありますか?貴社にとっての「ショッピングモール」は?

 

・お客様にとって原価を増やしてでも手に入れたいものを探る。

・お客様の「お客様」を満足させる商品、製品をつくるのに欠かせないものを提供する。

・下請け型の真のお客様を探る。

・特定のお客様に依存しないよう、自社の強みを多様な業種・業態のお客様へ提供する。

 

 

 

 

 

VUCAと称される混迷の時代です。下記3つの問いかけで、不確実性への耐久力を確認して下さい。

1.本当に「儲かる」工場経営の「構造」になっているか?

2.全てが「手順化」、「見える化」されているか?

3.「将来」と「コミュニケーション」がとれる現場か?

 

経営者は時代の「流れ」を読みます。儲かる構造をどの業界、市場で構築するか?です。

事業が行き詰まっているお客様と一緒に仕事をしても共倒れになります。係わる業界の選別も無視できません。時代の「流れ」を読んでお客様を特定するも大事です。

 

コア技術を軸にした下請け型ならば、所属する業界を選べます。そうした営業活動に着手した企業様もいます。これなら下請け型でも前向きです。

「外」に合わせて「内」を変えるので、3つの問いかけの2番目と3番目は1番目に連動しています。製販一体でなければ儲ける体制はできません。

 

企業の目的は「顧客を創造すること」だとはドラッガーの言葉です。お客様に目を向けます。「内」ばかりを見る、特定の企業だけを見る、視野狭窄にならないことです。

下請け型でも構いません。まずは儲かる下請け型のやり方を考えたいのです。貴社にはコア技術があります。先の企業にもあります。それを活かすのです。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、儲かる下請け型のやり方を探るために「外」に合わせて「内」を変える。

停滞する現場は、お客様に言われたことをやるだけの運命共同体のままである。