「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第233話 「なんとなく」外注を戦略的外注に変えるには?

「付加価値額を積み上げるために外注費削減をやらなければなりません。」

昨年から生産性向上プロジェクトに着手した部品製造企業経営者の言葉です。

 

製造には2~3工程を要します。切削加工を中心にした機能別レイアウトの現場です。受注可否判断は現場のリーダーに委ねられています。

受注可否判断の結果、「入らない」「出来ない」となれば、それを外注に出すのがその企業でのやり方ですが、経営者はそこに問題があると感じています。

 

お客様からの案件を断りたくありません。もし、自社の現場で「入らない」「出来ない」という判断になれば、外注を使ってでも対応するのは当然です。

しかし、こうした外注が人時生産性向上につながらないこともあります。外注化の判断基準が「自社で対応できないから外へ出す」だけは不十分です。

 

外注問題の本質はそこにあります。経営者からは冒頭の言葉が出てきました。外注を儲かる体質づくりにつなげます。

 

 

 

 

 

外注化は戦略的に決められるものです。

「今、ウチでできないから」という対処療法や「外注は内製より安いから」という思い込みで、「なんとなく」安易に外注化していては儲かる体質づくりの機会を失います。

 

外注戦略は儲かる工場経営を構築するのに欠かせない戦略のひとつです。外注が正しい、内製が正しいという唯一の答えはありません。

儲かる体質づくりのために貴社独自の外注戦略を設定したいのです。外注方針を明らかにすれば、現場は外注化の判断基準を持てます。

 

外注戦略の論点は2つです。

●なぜ外注化するのか?

●その外注化は本当に儲かるのか?

論点を明らかにして「なんとなく」外注を排除します。人時生産性を高めるためです。

 

そして、前者を考える時、2つのケースがあります。

●工場で「できないから」外へ出すケース

●工場で「できるから」外へ出すケース

 

 

 

 

 

まずは、工場で「できないから」外注化するケースです。

・生産能力を超えた受注をこなす

・小ロット製品でも全社生産性を維持する

・自社の固有技術では対応できない製品を扱う

などなど、こうしたケースで外注化することは貴社でも多いはずです。儲かる体質づくりではこの時点で課題を設定します。課題は「できない」を将来的にどうするか決めることです。

 

具体計画をロードマップで示します。今はできないけれども、将来的に内製化を目指すのは具体計画のひとつです。

・現場活動と設備投資で生産能力を高める

・現場活動と設備投資で生産性を高める

・研究開発と設備投資で固有技術を広げ技術対応力を高める

 

目的は「数量・仕様変化への対応力強化」や「ノウハウの蓄積」です。この外注の本質は内製化です。

時間軸といっしょに現場へ外注方針を示して、現場の課題を明らかにし、今、やるべきことを共有します。この場合、外注のスキルアップは本質ではありません。

 

一方で、こうした内製化によってもたらされるリスクも評価しておかなければなりません。

異種技術分野へ進出して技術対応力を高めようとしても、技術的な問題に直面して上手くいかないこともあります。リスクを冒してまで新技術を内製化する意義は何か?を明らかにすることです。

対応力強化のための設備投資が予想外の市場変化のために、かえって足かせになることもあります。固定した設備でどれだけ変化する市場に対応できるか?を明らかにすることです。

 

内製化によるリスクがある以上、「できないから」外注を継続するという選択肢もあります。ファブレスという事業モデルを目指すのもありです。

全て、経営者による戦略的意思決定によります。

 

 

 

 

 

もう一つが、工場で「できるから」外注化するケースです。

工場で「できるから」外へ出す場合があります。汎用性が高くコモディティー化した製品をあえて外注へ出すのがそうです。目的はいろいろあります。

・付加価値額生産性の高い製品を優先的に取り込むため

・新製品や新技術を開発する余力を生み出すため

・グループ会社の稼動を高めるため

などなどです。

 

この外注化も戦略的に判断されます。課題は外注方針を現場へ衆知徹底して全体最適化の視点や思考回路を共有することです。

 

自社内でできるのにあえて外注を出します。現場では払い出し、受け入れ、検査など製造以外の外注管理業務が発生するのです。

外注だから現場は楽になるわけではありません。特別な流し方をしなければならず、現場の負荷が高まることもあります。

「ウチでできるのになぜ、わざわざ外へ出すのだ」と考える現場の疑問には答えなければなりません。

 

 

 

 

 

「できないから」にせよ、「できるから」にせよ、外注を人時生産性向上の手段のひとつと考えて、戦略を組み立てたいです。

戦略があれば、「その外注化は本当に儲かるのか?」が見えてくるので、儲かる体質づくりにつながります。対処療法の「なんとなく」外注ではできないことです。

 

「その外注は本当に儲かるのか?」に対する評価方法を持つことも欠かせません。貴社にはその評価方法がありますか?

次は貴社が成功する番です!

 

成長する現場は、戦略的外注で人時生産性を高めて儲かる体質に変えていく。

停滞する現場は、対処療法の「なんとなく」外注のままなので体質は変わらない。