「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第238話 現場のお作法として習得したい分析手法とは?

「パートさんの指導に使えそうです。」

50人規模機械加工専業企業、プロジェクトリーダーの言葉です。

 

今月から、人時生産性向上プロジェクトに着手した現場です。機能別レイアウトの現場に「手離れのイイ」生産の流れをつくります。

経営者の発想は2割、3割ではありません。2倍、3倍です。プロジェクトを現状分析からはじめているようでは、事業を2倍、3倍に躍進させられません。

 

ビフォーアフターのアフターを設定するところからです。経営者の想いが込められます。経営者にしかできない仕事です。アフターを明らかにしてプロジェクトをスタートさせます。

 

目標はひとつでも手段は複数。その現場でのカギのひとつは「パートさんの活躍」です。工程分析のとき、プロジェクトリーダーの頭の中に何かがひらめきました。冒頭の言葉です。

 

 

 

生産性向上活動の具体手法は「作業研究」です。IEとも言われます。

・方法研究

・作業測定

これら2つで構成される改善手法の体系です。

 

方法研究は、さらに次の3つに分類されます。

・工程分析

・連合作業分析

・動作分析

 

人時生産性向上のために生産の流れを把握します。ボトルネックを解消しなければなりません。具体項目のひとつはリードタイム短縮です。

・納入リードタイム

・生産リードタイム。

 

お客様視点で手離れが良い仕事のやり方を探ります。物にせよ、情報にせよ、流れの「フン詰まりポイント」を認識できていなければボトルネック解消の論点が明らかになりません。

3現主義に基づいた方法研究による3つの分析が具体手段となります。

 

QMSやお客様要求への対応のために分析をやったことのある現場は少なからずあるようです。ご支援先の企業様の中にも、そうした現場があります。ただ、そこ止まりです。

資料作成のための分析で終わっています。やっつけ仕事です。これはモッタイ。プロジェクトを進める道具として使いたいのです。

 

 

 

現場のお作法としてやり方を習得しておきたい分析手法があります。工程分析です。方法研究の基本中の基本。狙い・目的も合わせて理解します。

やり方と共に、狙い・目的をセットにして、身につけさせなければなりません。「言われたからやりました。」ではダメだということです。

 

経営者は、現場には自主的にボトルネックを解消してもらいたいと考えます。そういう水準に至ってはじめて、ご自身が楽になるからです。社長業に専念できます。

工程分析の3本柱は下記です。それぞれ、明確な狙い・目的があります。

1.オペレーション・プロセス・チャート

2.フロー・プロセス・チャート(物の流れ)

3.フロー・プロセス・チャート(人の流れ・業務の流れ)

 

プロジェクトをこれら3つの分析から始める場合もあります。各チャートの様式を決めるところからです。知りたいことに焦点を当てれば自ずと様式は決まります。

 

 

 

オペレーション・プロセス・チャートの目的は、付加価値額を生み出す工程を明らかにすることです。

となると、オペレーション・プロセス・チャートでは何を記載しなければならないか?もう明らかでしょう。価値を生み出す2つの工程、「作業(加工)と検査」です。

オペレーション・プロセス・チャートは見積もりに使えます。見積もりに使えなかったら、その分析は不完全ということです。

 

フロー・プロセス・チャート(物の流れ)は工程と工程のつながり具合を明らかにすることが目的です。

工程設計には工程分割と工程統合があります。ここでは、リードタイムに影響を及ぼす原理原則に注意しなければなりません。

「工程分割すると停滞、運搬が生まれる。」どちらも付加価値額を生み出しません。必要以上にあったらまずいのです。それを見えるようにします。

 

フロー・プロセス・チャート(人の流れ・業務の流れ)の目的は一挙手一頭足、全ての行動を明らかにすることです。

意識的な動作、無意識の動作、全て細かく列記します。動画による分析も欠かせません。先のリーダーがコメントしていた対象はこのチャートです。

 

現状の一挙手一頭足を明らかにすれば、ムダが見えてきます。当事者も納得です。標準作業を議論する雰囲気が生まれます。

そうして出来上がったチャートは教える道具にもなるのです。先のリーダーはそうしたことを考えています。自身の仕事を楽にするためです。

 

 

 

工程分析のプロセスには作業(加工)、検査、運搬、停滞、保管の5つがある。

分析対象は工程と動作である。

分析結果は時間と距離で表現できる。

等々、ルールはいくつかありますが、それらを理解できれば、あとは習うより、慣れろ。経営者が知りたいこと、現場が知りたいことに焦点を当てて分析を実践するのみです。

 

プロジェクトではボトルネックが共有されていなければなりません。共有するためには道具が必要です。工程分析が使えます。人時生産性の分母を問うからです。

これを使えば、生産活動の体系と流れが見えるようになります。仕事の体系と流れの把握です。ということは、教育ツールにも使えます。

先のリーダーはそのことに気が付きました。役割を理解している熱心なプロジェクトリーダーです。

 

工程分析で求められるのは言語化、数値化のスキルです。ロードマップの実践に欠かせない具体化→抽象化→具体化のトレーニングにもなります。

 

ただし、お作法とは言え、こうした分析を闇雲にやっても失敗します。プロジェクトに組み込まれているからこそ、実行の必然性を感じさせられるからです。

なによりもアフターの設定が先です。人時生産性向上のマイルストン設計です。弊社は挑戦する経営者の後押しを引き続き、しっかりとやらせていただきます。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、工程分析で解消すべきボトルネックを明らかにして人時生産性を高める。

停滞する現場は、勘と経験に頼るためボトルネックに対してバラバラの認識ままである。