「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第239話 現状分析の前にやらなければならないことは?

 

「現場の悪いところがあれば言ってください。」

個別相談で訪問した産業機械メーカー経営者の言葉です。

 

現場のキーパーソンにはもう一踏ん張り頑張ってもらいたい、まだまだできるだろう・・。生産性向上に取り組んで欲しいと考えている経営者です。

「外」は当然のこと、「内」にも精通している経営者なので現場の問題点が、あれやこれやと見えています。冒頭の言葉です。

 

経営者の狙いが気になり、次のように尋ねました。

「社長は現場改革をどのように進めようとお考えですか?」

 

 

 

平成バブル、ITバブル、サブプライム問題、リーマンショック、東日本大震災、大規模洪水・・・。経営者は多くの危機を乗り越えてきました。その度に工場経営の足腰を鍛え、強固な事業基盤を築いてきたのです。

 

そして、危機を乗り越えてきたこれまでのやり方を振り返ると、あることに気付きます。あることを信じていました。

「今は大変だが、いずれは元に戻る。」

だからこそ、危機に直面しても頑張れました。絶えれば報われます。25年に渡る工場勤務とご支援の実務を通じて感じることです。

 

さて、2020年は経営者の方々の記憶に残る年になりました。歴史上の出来事でしか知ることができなかったパンデミックを経験したのです。

中国河北省武漢市で原因不明のウィルス性肺炎に感染した患者が2019年12月に確認されたことに端を発する新型コロナウィルスの世界的感染拡大。私達はその真っ只中にいます。

 

この危機はこれまでと違うぞと肌感覚で感じているのではないでしょうか。

「元には戻らない。」

これまでのやり方ではダメだと問われている気がしてなりません。製造業は技術で戦っています。大きく変えて飛躍し始めているところもあります。2極化すると言われる所以です「今は大変だが、いずれは元に戻る。」との思い込みは捨てなければなりません。

 

 

 

改革プロジェクトは改善活動ではありません。工場経営の再構築です。現場改革、意識改革、構造改革。全てを変える改革です。

事業の目的はお客様の創出である以上、成長発展のヒントは「内」にありません。「外」にあります。つまり市場、顧客、技術の変化や進化に合わせて「内」を変えなければならないのです。

 

今は100年に一度と言われる大変化の時です。将来、2020年を振り返るとそう説明させるのはほぼ確実ではないでしょうか?

「元には戻らない」のです。先手を打てば機会になります。意欲的な経営者は動き始めました。これをチャンスとして成長しようとする企業は既に動いています。

 

ただ、現場は「外」を肌感覚で感じることができません。従業員は日々の納期で頭がいっぱいです。経営者が普通に伝えているようでは、現場も「ふ~ん、そうなんだ。」止まりです。問題は経営者が解決してくれると考えているからです。

 

 

 

経営者が変化の必要性を繰り返し、地道に、熱く語らない限り、仕事に追われている現場は経営者の意図や狙いを理解できないのです。

ビフォーアフターも示します。見えない事を伝えるわけです。具体的でなければなりません。頭と心に訴えて現場を動かします。

「言わなくても分かってくれている。」は経営者の思い込みにしかすぎません。言わないと分かってもらえないのです。

 

 

 

経営者が望む成果は人時生産性アップです。現状の3,000円、4,000円を大変革の機会を通じて5,000円、6,000円・・・と高めます。

大変化を機会として競合を凌駕する大躍進を狙うなら、「今」の延長線上には答えはありません。したがって、改革プロジェクトは挑戦そのものです。生き残りを掛けます。

・できないことをできるようにする。

・無理を承知でもやる。

 

こうした水準でなければ改革、イノベーションは起きないのは明らかです。技術開発を柱とした製造現場での改革プロジェクトとはそういうものです。製造業は技術の世界で戦っています。競合と同じ事をやっていても儲からないし、負けます。

 

 

 

改善活動は現状分析から始めます。問題を見つけて、作業標準を変えます。そうして新たな作業標準を設定するのです。これは改善活動のお作法です。ただし、これでは、たかだか2割、3割アップのレベルです。

2倍、3倍アップのレベル、改革のレベルを狙う場合は、経営者の目標設定からです。改革プロジェクトは経営者の決意表明からです。

 

製造業は技術の世界で戦っています。貴社の事業は常に技術革新や競合の追い上げに晒されているのです。「外」の変化を知れば、やらなければならないことが見えてきます。生き残るための具体作戦です。

できるとか、できないとか「内」の事情は関係ありません。やらなければ、やられます。経営者が設定する目標とはそう言うものです。

 

改善活動:

現場の問題点を抽出する →従来の標準(やり方)を見直す →新たな標準を設定する

 

改革プロジェクト:

経営者の目標を設定する →無理難題に挑戦しながら現状を知る →不可能を可能にする

 

現場は「内」しか知りません。経営者が変化の必要性を伝えない限り、現場は大きな変化を理解できないのです。

改革プロジェクトは経営者の目標を設定して伝えるところからです。その目標こそが、生殺与奪の権を他人に握らせない、生き残る具体策です。

2倍、3倍のスケールで成果を狙うのが改革です。現場の問題点からはスタートしません。

 

「言わなくても分かってくれている」は経営者の思い込みにしかすぎないのです。

なぜ今、改革に挑戦しなければならないのかを伝え、どのように挑戦するのかを言葉と数字を駆使して語ります。

 

想いを浸透させるには手間がかかるのです。中小管理者時代に痛感しました。その手間を省いて、「現場は分かっていない」というようではダメです。

 

 

 

「元には戻らない」アフターコロナ、ウィズコロナの社会で事業を成長発展させなければなりません。

従来のやり方でいいはずがないのは明らか。演じる舞台そのものが変わったのです。現場にもそのことを知ってもらう必要があります。

 

貴社が、今、やらなければならないのは改革です。改善ではありません。経営者の設定する目標からスタートです。現場の問題点からではありません。

言語化、数値化するスキルを駆使して、従業員の誰にでも伝わるようにします。

 

 

 

2020年、価値観や仕事観、社会観に大きな変化がありました。これは事実です。これから、ドンドン市場もお客様も変わることが予測されます。

したがって、それに合わせて、仕事のやり方を大きく変えなければ、現場は苦しくなるばかりです。在来の仕事のやり方を捨て、新たなことに挑戦です。現場は経営者の言葉に奮い立ります。

 

人時生産性向上プロジェクトとはそういう仕事です。難易度が高ければ高いほど、成果は大きくなります。時間を味方に付けてやり切るだけです。人時生産性を2倍、3倍と高めます。

ただし、闇雲に大きな計画を立てても上手くいきません。小さなPDCAや2:6:2の法則を踏まえることも欠かせないからです。

 

先の企業はロードマップ全体構想の検討に入りました。フットワークの軽い経営者です。着眼点を少々変えてもらうだけでグイグイ進みます。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、経営者が設定する無理難題に挑戦してできないことをできるようにする。

停滞する現場は、できる範囲のことしか考えないの無理難題にはそもそも挑戦しない。