「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第241話 現場は営業活動を他人事と考えていないか?

「そうした営業活動はやっていませんでした。」

個別相談でご訪問した30人規模、産業機器製造企業、経営幹部の言葉です。人時生産性向上に取り組みたいとのご相談です。

 

5Sや改善活動は既にやっています。これまでもやってきたのですから、それを継続することでもいいのでは?との問いに対して、利益につながる実感がないとのこと。何かが足りないと感じている経営幹部です。

 

ご相談のきっかけは利益の減少。製造現場には改善の余地があると考えています。目指すのは人時生産性を高めて儲かる体質に変えることです。

この考え方に間違いはありません。しかし、前提条件があります。

それを尋ねたところ、経営幹部から返ってきたのが冒頭の言葉です。

 

 

 

 

下請け型モデルのメリットは営業コスト最小化です。販売費をかけなくても商売ができます。黙っていても電話がかかってくるからです。

届いた受注を納期遵守でどんどんこなせば結果がついてきます。90年代まではこれで十分に戦えました。したがって、親企業へのルート営業をやっていれば問題はなかったのです。

 

しかし、昨今、従来の下請け型モデルでは儲からなくなりつつあります。黙っていては仕事の依頼は増えず、それどころか予告なしの発注打切りもあるのです。

実際、ご支援先の企業様でこうした状況に直面したこところがいくつかあります。親企業も生き残りに必死なのです。そのことを四の五の言ってもしようがありません。

 

新たな下請けモデルを構築する必要があります。営業活動の強化はそのひとつです。黙っていても電話がかかってこないのならやり方を変えます。自ら攻めるのみです。新たな下請けモデルで目指すのは、「生殺与奪の権を他人に握られない」やり方を構築することです。

 

・自社商品

・自社ブランド

・競合を凌駕する圧倒的なQCD

・狭い商圏で高いシェア

コア技術を武器に、市場を探してお客様の選択肢を増やすのです。自律的な営業活動で自らお客様の選択肢を増やすことは、「生殺与奪の権を他人に握られない」に繋がります。

 

 

 

人時生産性3,000円、4,000円台を5,000円、6,000円台へ高めたいのです。多くの経営者は利益アップ、給料アップを願っています。それなら、儲ける力を高めればいいのです。

分母へ投資しながら分子を積み上げる「詰めて、空けて、取り込む」戦略が求められます。

そこで、先の個別相談で伺った経営幹部に「分子を積み上げる活動はどうしていますか?」とも尋ねました。

 

詰めて、空けて分母を減らす取り組みは重要ですが、それとともに大切なのは、分子を積み上げる「取り込む」取り組みだからです。これ抜きには儲かりません。

返ってきたのが冒頭の言葉なのですが、仕方がありません。従来の下請け型モデルでルート営業による御用聞きしかやっていなかったのですから。

 

それならそれで、これから新たな下請け型モデルに挑戦するだけです。できないことをできるようにするのは、技術開発に限ったことではありません。全てが対象です。

 

 

 

営業活動は営業部門がないと強化できないとの思い込みを取っ払います。

現場に、心意気のある当事者意識の高いリーダーやベテランはいませんか?経営者と一緒にお客様のところへ足を運べば受注につなげるきっかけに出会えます。

 

あるご支援先では工場長が納入先の現場キーパーソンと良好な人間関係を築きました。新たな受注への期待が高まります。

中小現場の管理者時代、地元に特定して、お得意様への働きかけ方を決めていました。営業部隊を持てるほどの規模ではなかったので、実働部隊は私と現場の若手です

 

自律的な営業活動は営業部隊がなくてもできます。

営業部門を持っているなら、それは幸いなことです。分子を積み上げる営業戦略を新たに設定します。営業戦略とは市場戦略です。ターゲットを明らかにします。

 

 

 

ご支援先の企業様には営業部門を持って活動しているところもあります。

・A社  80百万円/2名

・B社 150百万円/4名

・C社 200百万円/1名

上記は営業部門を持つ企業様の年間付加価値額(粗利)と営業部隊人員数の事例です。人員数に経営者は含まれていません。

営業部門を持つならどの程度の規模が適当なのか?が気になります。結論から言うと、判断基準はその企業独自です。業種業態で判断基準値は異なります。

 

お客様からいただく付加価値額と営業部隊人員数の関係が判断基準になり得ます。経営者による成果も含まれますが、1人当たり積み上げている付加価値額です。業種業態で判断基準値は異なるので、最適な考え方を探ります。

 

ここで、留意したいことがあります。営業部門は将来投資だと言うことです。営業部門のパフォーマンスを効率で計ったらダメです。

ルート営業だけなら効率を追いかけてもいいでしょう。しかし、新たな下請け型の営業活動では分子のさらなる積み上げに貢献することが求められます。

・お客様の要望や欲求に応える新技術、新商品を探る。

・新たな市場やお客様を探す。

効率を問われると本来の目的を果たし難くなります。開発業務で効率を問われると、イノベーションが生まれにくいのと同じです。技術開発は失敗を成功の糧としています。

 

 

 

営業部隊がなくても営業活動を強化できます。少数精鋭の中小製造企業です。現場も参画します。これが製販一体、全社一丸です。

ただ、そうした活動を闇雲にやろうとしても失敗します。

応受援体制がない現場はうまくできません。現場のキーパーソンが「外」の活動で抜けることもあるからです。それを相互補完できないと現場は回らなくなります。

「外」に合わせて「内」を変えるのが、人時生産性向上活動での正しい姿勢です。全体構想も示さなければなりません。

 

先の企業では既存顧客の分析からやることにしました。営業活動の焦点を明らかにするためです。それと並行して現場はリードタイム短縮活動に着手します。将来の「取り込む」案件へ対応するためです。

弊社は挑戦する経営者のご支援をして参ります。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、現場も製販一体に参画して顧客のところへ足を運びチャンスをつかむ。

停滞する現場は、分担された業務をこなすことだけを考えるので営業活動に無関心である。