「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第255話 現場を成長させる経営者目線の高さとは?

「入社してくる人に合わせて仕事を生み出すのが社長の仕事です。」

2年前よりご一緒に仕事をさせていただいている経営者の言葉です。

 

先代から事業を引き継いで以来、試行錯誤しながら、自ら進むべき道を模索してきました。誠実さを現場へ訴えながら従業員を導いてきた経営者です。

正しい姿勢は良い結果を引き寄せます。伸び悩んでいた収益も、2019年から回復基調です。先を見通したいろいろな挑戦が成果に結実しつつあります。

 

先日、売上が移動累計ベースで過去最高を突破したとのうれしい報告がありました。コロナをものともせず、移動累計での傾きがプラス維持なのです。

決算は年末ですから、まだまだ天井を突き破り続けるかもしれません。

 

 

 

 

 

工場経営の本質は経営者の想いを、“他人”を通じて実現することにあります。したがって、経営者の想いを具現化するのは従業員です。そのための人材を確保しなければなりません。

人材は計画的に採用し、戦略的に育成するものです。

しかし、中小製造企業にはいろいろな制約があります。必ずしも経営者が望む人材を採用できるわけではないのです。大手のようにはいきません。

 

意欲はあるものの・・・。

経営者が望んだ仕事をこなせる人材ばかりではない・・・。

 

「従業員の精一杯の能力に合わせた仕事を作り出す」という考え方が生まれます。

・できないことに焦点を当てない。

・できることに焦点を当てて、そこでの最大化に知恵を絞る。

 

従業員が持つ能力を最大化する環境を整備します。ただ、従業員が持つ精一杯の能力に合わせた仕事を整備すると言ってもそこに甘えはありません。

どんな現場であっても付加価値額vs固定費の構造をクリアしないと生き残れないのは同じだからです。

 

 

 

 

 

経営者は、“他人”を通じて自身の想いを実現させなければなりません。想いを実現させられるよう、”他人“を導く必要があります。

できないことに焦点を当てると次です。

・できない人はできるようになって欲しい!(a)

一方、できることに焦点を当てて、そこでの最大化に知恵を絞ると次です。

・できる人ができない仲間を支援して全員でできるようになって欲しい!(b)

 

外の変化に合わせて内を変えるのが中小製造現場の生き残り戦略です。

製造業は技術革新と競合の追い上げに晒されています。現状維持は相対的な衰退・後退です。現場は変わり続けなければなりません。”他人“の変化を促す必要があります。

 

(a)は王道のアプローチです。ただし、これに期待できない現場もあります。(b)のアプローチです。貴社では(b)ができますか?

チーム力が問われます。

チーム力を引き出す経営者の視点が欠かせません。

 

 

 

 

 

経営者は現場を客観的に評価する必要があります。製造業は競争です。市場におけるポジション、競合との優劣。できることとできないことを見極めなければなりません。

経営者の目線には高さが必要となります。路上からよりも2階建ての家、さらにはビルや高台から遠くを見通せば、誰よりも早く、迫りくる津波を見つけられます。正しい経営判断は目線の高さ次第です。

 

認知心理学にメタ認知という言葉があります。メタ認知能力が高い人は自分を俯瞰的に捉えることができるので、目標達成能力や課題解決能力が高いと言われています。

メタとは「高次の」という意味です。メタ視点なら、ものごとを俯瞰的に客観的に捉えられます。高台よりもずっとずっと高い、宇宙から地球を眺めるくらいの感覚でしょうか。

そんな視点です。

 

視点が高くなればなるほど、貴社を俯瞰的に把握できます。宇宙から地球を眺める高さの視点になると人材の見え方も変わってくるものです。

縁あって仲間になった従業員です。活躍してもらいたい。充実した仕事をしてもらいたい。幸せな人生を送ってもらいたい。

こうした想いを生み出すのもメタ視点ではないかと考えています。手にした経営資源のなかで最善を尽くす感覚が生まれるのです。目線の高さが成せる思考回路の高度化です。

 

 

 

 

 

メタ視点は経営者ご自身の哲学に通じます。それは現場へ波及するのです。哲学とは言動そのものだからです。

その結果、メタ視点に基づいた経営者の導きは、いわゆる「ウチの会社」「ウチの現場」感覚を生み出します。現場の受応援性も高まるのです。

 

経営者の視点の高さ→俯瞰、客観→思考の高度化→チーム力を引き出す導き→高応受援性

 

先の経営者の現場がそうです。

「強者」とは言えない従業員が仲間に加わります。一人で仕事を任せるには心もとないです。経営者はそのことを現場へ伝えます。

それを受けて現場では従業員たちがサポート役を果たすのです。それも”自然に“です。経営者からの指示はありません。リーダーたちも当事者意識高く対応しています。

 

現場は経営者の鏡です。経営者が現場へ丁寧に考え方を伝えていれば、その成果は高い応受援性に表れます。経営者独自のメタ視点が現場に波及するのです。

経営者の目線の高さは、現場の応受援性の高さにつながります。そうして、経営者は社長業に専念できるのです。メタ視線で俯瞰して浮かんできた想いを実現できます。

 

ある経営者は現場の応受援性の高さを「品格」とおっしゃっていました。なるほど、現場の品格も経営者の目線の高さ次第であるということです。経営者の言動が影響します。当然のことかもしれません。

 

 

 

 

 

ただ、メタ視点のような大きな目的、高い視点に基づいた思考を現場へ波及させるのは、容易なことではありません。

現場は、経営者が考えるほど、経営者のことを理解していないからです。自身の理念や哲学を繰り返し、繰り返し、繰り返し、語って現場へ浸透させる必要があります。

 

方針書、経営計画書、ロードマップで地道に伝えなければなりません。重要度は高いけれども緊急度は低い仕事です。経営者ご自身が一人でやろうとしても進まない状況に至ります。

弊社は挑戦する経営者の後押しをやって参ります。経営者ならではの大きな目的、高い視点に基づいた仕事のやっていただきたいと考えているからです。

 

従業員が強者ぞろいでなくても、経営者のメタ視点で貴社独自の「付加価値額積み上げチーム」をつくることができます。

チーム力を引き出す経営者の視点次第なのです。先の経営者はそのことを実績で教えてくれました。これからの成長発展が楽しみな現場です。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、経営者のメタ視点の働き掛けで応受援性を高め一体感でチーム力を磨く。

停滞する現場は、経営者の視点を理解できず仲間との連携に欠けるのでチームにならない。