「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第26話 変える事と変えない事を現場へ明示する
儲かる工場経営ではカイゼンやイノベーションは「変える事」、経営理念やこだわりは「変えない事」である、という話です。
カイゼンを現場へ定着させるには
1)カイゼンは将来投資のために行うという明確な目標を設定する。
2)カイゼンは日々の生産活動の一環として行う。
この2つの視点が欠かせません。
さらに1)項ではイノベーションへつながることをねらいます。すでに申し上げたことですが、カイゼンとイノベーションはセットです。
”今”のカイゼンと”将来”のイノベーション。
それぞれの活動が関連付けられて明示されている現場は強いです。将来への見通しをもって、今日の活動に専念できる状態が現場の動機づけを最大化するからです。
現場のやる気を引き出す観点を忘れないでいただきたいです。
儲かる工場経営では、ここにもうひとつ加えます。
それはカイゼンやイノベーションを展開する上での土台です。経営理念とも表現できます。あるいは経営者の想い、経営者が目指す理想の姿。
何が起きても、世の中がどう変化しても変わらない自社の考え、思想です。こだわりです。
コンサルティング等を通じて、経営者様へお伝えする中では重要な部分となります。
当社はコア技術にこだわります。現場に存在している顕在的、潜在的な強みです。このこだわりは経営理念に通じます。
当コラムでは、コア技術の事例としてたびたびトヨタ生産方式を取り上げますが、トヨタにとってのこだわりはJITと自働化です。
トヨタが目指している「もっといいくるまをつくろう」という理念の基盤になっています。また、人財育成の場も提供しているとトヨタは考えています。
儲かる工場経営では、こだわり(経営理念)を重要視します。
いつの時代になっても変わらない事は、現場と共有すべきです。言語化して共有することで現場へ浸透しやすくなります。
現代は不確実性が高く、不透明な時代と言われます。
何が変わって、何が変わらないか。何を変えて、何を変えないのか。先見性を磨いて、5年先、10年先を読まねばなりません。
経営者は儲かる工場経営を実現させるために、何かを変え、何かは変えないのです。自社が将来へ向けて豊かな発展をするために、極めて大切な意思決定です。
変える事。
変えない事。
この2つは経営者の意思で決める事です。
時代の流れの中で変わる事と変わらない事があり、それらに適応するよう、変える事と変えない事を経営者が決定する。
変えない事とは経営理念であり、経営者の想いであり、こだわりです。モノづくりでの強み、コア技術と考えた方が理解がしやすいかもしれません。
”今”のカイゼン、”将来”のイノベーションは「変える事」に相当します。
つまり、将来に目指すイノベーションは、時代の流れ、つまり「変わる事」と「変わらない事」を見据えてターゲットを決めるものです。5年先、10年先を見通した技術ロードマップが具体的な取り組みです。
マイルストーンを設定し、定期的に向かうべき方向性に誤りがないかどうかをチェックします。ですから、ちがうなぁと判断したら必要に応じてターゲットの軌道修正をします。
そうしたイノベーションを睨みながら、適切なカイゼンを展開します。カイゼンテーマは目指すものやコトに応じてドンドン変えるべきです。
このように考えると、カイゼンのテーマでは単なる現場の困り事の解決にとどまらない水準を目指すことになります。
したがってカイゼンやイノベーションは「変える事」なのです。。
今から10年前、20年前を思い出して下さい。そうした時代と現在で、同じ仕事のやり方でイイはずが絶対にありません。
カイゼンやイノベーションは「変える事」であるので、仕事のやり方も「変える事」になるのです。
現場の若手人財からこのように声をかけられたことがあります。
「うちは仕事のやり方が全然変わらなくて、イヤになってしまいます。他の会社はいろいろとやっているのに・・・。」
あらゆる情報がインターット等を通じて簡単に入手できる時代です。他の企業に入社した同級生の話を通じて他社との比較も容易になされます。否が応でも自分が選択した会社のレベルを知ることになります。
先の若手人財は自分の職場の仕事のやり方を変えたいのに上層部が動いてくれないともらしていました。
時代に合った、求められる成果に応じた仕事のやり方に変えねばならないのは当然のことです。相変わらず仕事の成果を時間で評価し、慢性的な残業ありきの仕事のやり方を継続していては、カイゼンもイノベーションも的外れ。
そもそも、そのような企業に魅力を感じて若手人財が集まるでしょうか?
「変える事」は経営者が決める事です。
現場や事務所の仕事のやり方が、変化に適応できているかと問うて下さい。変化に適応したカイゼンやイノベーションが展開できているかどうかのチェックになります。そして、5年先、10年先を見据えた、変化に適応したイノベーション、カイゼンを設定するのです。
一方で「変えない事」。
「変えない事」で重視すべきはモノづくりのこだわりです。コア技術です。こうした「変えない事」を言語化して現場と共有することで最上位の判断軸が出来上がります。
ただし、こうした「変えない事」を言語化できている現場も少ないと感じています。したがってコア技術の見極めはとても重要なのです。
判断軸を明示された現場は自律的に考えはじめます。経営者がいなくても、仕組みが自然と回ります。
儲かる工場経営で経営者は「変える事」「変えない事」を決定し現場へ明示します。特に「変えない事」を言語化することで現場は判断軸を持ちます。カイゼンのテーマを選択するときに、現場はその判断軸を活用するのです。
「変える事」と「変えない事」が明確になっていますか?
仕事のやり方は「変える事」と考えていますか?
まとめ:儲かる工場経営ではカイゼンやイノベーションは「変える事」、経営理念やこだわりは「変えない事」である。