「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第280話 現場が「普通」と考えていることは何か

「先代はワークの身になって設計せよと言っていました。」

今月からプロジェクトを開始した産業設備メーカー幹部の言葉です。

 

特徴ある製品を持っている企業です。ただし、売上高が伸び悩んでいます。製販一体、従業員一体で売上高を積み上げなければなりません。計画が必要です。

強みの議論をしているとき、経営幹部が先代の言葉を紹介してくれました。設計も現場も繰り返し聞かされたので、そうしたことを意識しながら、ノウハウを積み上げることを普通にやってきたようです。

 

耳タコがその企業の思考回路を作り定着させました。先代の願望の発現です。

ワークの身になって設計すると、お客様はどんなベネフィットを手にするか?納期遵守以外の論点です。お金のにおいもします。

 

 

 

 

 

現場は納期遵守以外の論点を理解していますか?

製造業であるなら「納期遵守」は現場で共有されています。私たちの業界はそういうものです。ルールとしての納期遵守の徹底に苦労する経営者はほとんどいないでしょう。

 

そもそも、現場ルールとして、納期を守ろうとしない製造企業は既に淘汰されています。競合先が普通にやっていることをできない企業が生き残れるわけはありません。

経営者が意図しなくても、「納期遵守」は現場に浸透します。それが製造現場です。問題は「納期遵守」だけでは儲からないということです。

 

経営者は多くの願望を持っています。

・県下で上位〇位に入る水準の企業にしたい。

・コア技術を生かしてニッチでいいので、この分野では国内トップを目指したい。

・地元の発展に貢献できる企業にした。

・この地域で給与水準が上位となるよう少しでも多くの給料を払ってあげたい。

・県下でも注目される企業になって安定して新卒の採用ができる企業になりたい。

等々。

 

これらの願望は納期遵守の上に成り立つことですが、納期遵守だけでは実現できないのも、また事実です。経営者の願望があるならそれを言語化、数値化して、現場へ伝えなければなりません。納期遵守以外の論点です。

 

経営者は納期遵守以外の論点を明らかにして、貴社の事業を豊かに成長、発展させる必要があります。要点は「豊かに」です。力づくではありません。継続性が問われます。

したがって、あらゆる仕事を仕組みでやりたいのです。

納期遵守は力づくでもやれます。

 

 

 

 

 

製造業の3要素。

QCD。

・品質

・コスト

・納期

製造業で儲けるために取り組まなければならないフィールドです。納期以外の論点がここにもあります。

 

先の企業の先代が現場へ繰り返し、繰り返し語っていた「ワークの気持ちになって設計せよ。」は設計品質に触れています。私たちは設計品質製造品質で価値を付加するのです。

この表現が優れているのは、自社で設計した設備から「生み出される」製品に言及していることです。お客様視点になっています。

 

お客様がワークを手にして満足できる設備を設計せよ、我が社はそうしたこだわりで儲けるぞ、という先代からのメッセージです。先代の意志が現場に浸透しています。

先の幹部は設計も現場もそうした意識が強いと語っていました。皆それぞれ、ワークに傷つけないノウハウも磨いているというのです。差別化に寄与しています。

先の現場ではそう考えるのが普通になっているということです。

 

 

 

 

 

製造業では、納期遵守以外の論点で成長発展させなければなりません。

だまっていても受注が舞い込み、それらをこなすことで精一杯!なら、「納期遵守」の一点張りでも儲かります。90年代がそうでした。

 

生産形態に応じた納期遵守の思考回路だけで十分だったということです。生産形態に応じて、普通に仕事をこなし、儲けていました。

・特注品の職場では特注品で納期を守る仕事ぶりが普通になる。

・24時間連続操業の職場では24時間連続操業で納期を守る仕事ぶりが普通になる。

・最終消費者向け商品の職場では最終消費者向け商品で納期を守る仕事ぶりが普通になる。

・機能別レイアウトの職場では機能別レイアウトで納期を守る仕事ぶりが普通になる。

 

しかし、時代は変わりました。多品種少量、変種変量、ものづくりが高度化、複雑化しています。

生産形態に応じた納期遵守の思考回路だけでは儲からなくなりました。今や納期遵守以外の論点がなければ経営者の願望を実現できません。

 

 

 

 

 

今よりも水準を高める観点です。

・リードタイム短縮

・高直行率

・高価格商品

・若手に選ばれる企業

などなど。

 

貴社の価値を高める納期遵守以外の論点はいろいろあります。経営者の願望次第です。繰り返し、繰り返し、繰り返し伝えることで、それが浸透します。

浸透すれば思考回路になって、そう考えるのが普通になり、それが貴社の風土や文化、雰囲気を形成するのです。その結果、仕組みができます。

そして、仕組みが人を育てます。思考回路の組み込みです。これが人材の再生産体制です。中小現場での最適な人材育成方法と言えます。

 

だから仕組みで仕事をしたいのです。

仕組みをバージョンアップさせて豊かに成長発展したいのです。

 

経営者の頭の中は経営者が考えるほどには現場へ伝わっていません。丁寧に伝えない限り、それも繰り返しやらないとダメです。

人材再生産の雰囲気醸成には経営者の粘りが欠かせません。

 

・納期遵守以外の論点を普通に考える現場は儲かる。

・納期遵守以外の論点がない現場は儲からない。

 

 

納期遵守に加えて、納期遵守以外の論点を普通に考える現場に変えたいのです。そうして経営者の願望を実現させます。

 

納期遵守以外の論点を明らかにする

繰り返し、繰り返し、繰り返し語る

→納期遵守以外の論点を浸透させる

→「納期遵守+納期遵守以外の論点」を考えることが普通になる

→そう考える風土や文化、雰囲気が醸成される

→そうした人材が育つ→人材再生産体制ができる

 

 

 

 

 

納期遵守以外の論点が浸透すれば、人時生産性向上活動が加速するのです。状況の見える化で活動を継続させます。売上高“移動累計グラフ“や人時生産性“平均グラフ”等がその具体手段です。

 

ただ、こうした手段を闇雲に使っても上手くいきません。

なぜなら、現場が納期遵守以外の論点を具現化するお作法を知らないと、肝心の活動自体が「我流」になるからです。属人的になります。

 

納期遵守以外の論点を実現させる本質は「お作法」にあります。見える化はあくまで手段です。したがって経営者や幹部がQCDのお作法を教育しなければなりません。

さらには、大手と中小現場の差異を踏まえる必要があります。なぜなら、少数精鋭の現場には大手のアプローチが辛いからです。

 

先の企業では、先代が埋め込んだ思考回路を踏まえて、人時生産性を高める論点を明らかにしているところです。来月、全従業員へ説明し、取り組みを本格化させます。

貴社では何を繰り返し語っていますか?

 

納期遵守以外で「普通に」考えられることがありますか?

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、納期遵守以外の論点を普通に考える雰囲気が醸成され、仕組みができる。

停滞する現場は、納期遵守以外の論点がないので力づく、属人的、我流のやり方ができる。