「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第284話 経営改革をスタートさせる道具とは?

「計画ができてやっとわかってきました。」

そう遠くない将来に、次世代経営者として会社を引っ張ることを期待されている幹部の言葉です。

 

その幹部には悩みがありました。製造技術に明るくないことです。前職を経て、今のポジションで仕事をすることになりました。現場生え抜きではありません。

製造業で技術のことを知らずして現場を導けるのか?そうした思いに囚われた幹部です。

 

人時生産性を3,000円台から4,000円、5,000円台へ高める目標を立てました。経営者陣の願望です。それらを計画にして従業員へ説明しました。

その後、従業員の変化に気付くことになります。「次世代経営陣は何をどうしたいのですか?」という類の反応がなくなったのです。

 

職場の将来が気にならない従業員はいません。会社を引っ張る立場では「製造技術に明るくなる」よりも大事な仕事があるのです。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の指標は付加価値額(粗利)人時生産性です。

分母を減らすのではなく、分子を増やして人時生産性を高めます。付加価値額の積み上げです。業種業態に関わらず、ここまでの考え方は変わりません。ただ、その後は貴社独自です。

 

付加価値額をどうやって積み上げるか?ここから先は業種業態で違います。経営者が積み上げの具体策を決めるのです。

豊かな成長と発展はお客様の納期に合せた仕事だけでは実現できません。新たなやり方が必要です。経営者がその方針を決めなければなりません。

 

・高く売る。

・高く売れる商品群を開発する。

・付加価値額の規模と効率の最適解を見極める。

・販売数量を増やす。

・既存のお客様を深掘りする。

・新規のお客様を開拓する。

・品種数を増やす。

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改善と改革では成果の規模が異なります。改善は2割、3割ですが、改革は2倍、3倍の成果を狙うものです。

そうした規模で豊かに成長したいと考えるからこそ、経営者は改革をしなければと考えます。改善水準なら、ご自身でもやれるはずです。しかし、改革は違います。

 

地元の裏山に登るのと富士山に登るのとでは準備内容が違い、ましてや、ヒマラヤ山脈を目指すとなれば特別なスキルや訓練も必要です。

改革を決意した経営者は大きく変えることに躊躇しません。弊社はそうした挑戦する経営者のご支援と後押しをしています。

ここで欠かせない道具があります。

ロードマップです。

 

プロジェクトをスタートさせるにあたって弊社で重視していることがあります。ベクトル揃え、経緯者の思考回路を見える化して共有することです。

経営者が考える判断基準を定着させます。経営者は従来の仕事のやり方を大きく変えようとしているわけです。まずは「できない」「やれない」という現場の判断基準を捨てます。

ロードマップはそのための道具です。ロードマップで経営者の思考回路を浸透させます。

 

改革=新たな思考回路の浸透

 

壊してから再構築するのが改革です。ビフォーとアフターを現場へ示さなければなりません。アフターは経営者の頭に中にあります。ただし現場には見えません。

経営者は言ったつもりになっていても現場に伝わっていないことがあります。「改革」は最たるものです。抽象的だからです。

 

現場は日々、納期等、具体的なものに追われています。明確な言語化、数値化をしなければ浸透しません。言ったつもりになっている経営者は、そのことに気付く必要があります。

 

 

 

 

 

改革はロードマップからスタートです。

ロードマップをやり切るために組織で業務を分担します。

 

1)社長が構想をロードマップで言語化、数値化する。

2)経営幹部・工場長がロードマップを実現させる活動計画を立てる。

3)現場キーパーソンが活動計画を進める業務を作業者へ指示する。

4)作業者は現場キーパーソンから指示された業務をこなす。

 

業務を分担するのは、効率良く成果を出すためです。

サプライチェーンを思い浮かべれば納得できます。今やサプライチェーンはグローバルです。最適なところで造り、最適なところで売って、利益の最大化を図ります。

 

分担の狙いは業務の効率化です。儲かる工場では分担がしっかりしています。分担を通じ機能させたいことがあるからです。

上意下達=トップダウン=儲かる工場経営

 

トップダウンでロードマップをやり切ります。上意下達がなければ分担は成立しません。経営改革はボトムアップでは成り立たないのです。

経営改革のストーリーづくりは外を知っている経営者にしかできません。

経営者が「無理を承知でもやらなければならない」と考えるのは、外を知っているからです。それをやらないと生き残れません。

 

経営者は言語化、数値化されたロードマップで丁寧に説明するのです。丁寧な説明は共通言語を生み出し、貴社の現場に共感を醸成します。

職場の将来が気にならない従業員はいません。コロナ禍の影響を受けている現場なら、従業員は皆、先行きを心配します。

 

そうした現場に活力を与えるのが経営者の将来構想であり、それを実現させる具体ストーリーです。貴社の見通しを現場に示せばモチベーションは高まります。見通しと職場定着率には相関があるのとのデータもあるのです。ロードマップで見通しを示せます。

 

 

 

 

 

ただし、闇雲に経営計画を立てて現場へ提示すればいいわけではありません。ある経営者が次のように語っていました。

「なるほど、わかりやすい全体構想の示し方があるのですね。」

シンプル イズ ベスト。効果的で現場に刺さるロードマップや経営計画でなければなりません。床の間のお飾りにしてはダメです。

 

先の次世代経営者は「製造技術に明るくなる」よりも大事な仕事があることを知りました。

将来構想を言語化、数値化すること。見通しを示すこと。経営者にしかできない仕事です。

これこそが次世代経営者がやることでした。自ら試行錯誤しながらロードマップを仕上げた経営者にしか実感できないことがあります。

 

年明けに早速、次世代経営陣がロードマップを従業員へ説明する予定です。初めてのことですが、何かが伝わりそうな予感がします。

次は貴社の番です!!

 

成長する現場は、経営者はシンプルイズベストのロードマップで見通すので活性化される。

停滞する現場は、経営者は言ったつもりになっているのでいつまでたっても改革できない。