「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第287話 願望を実現させる目標と手段の構造とは?

「現場の自動化を考えているのですが。」

個別相談をいただいた産業設備部品メーカー経営者の言葉です。

まずは困り事や生産性向上の目的を伺います。ご相談される方の願望を探るためです。経営者の頭の中は見えません。まずはそれらの見える化です。

 

ただし、留意点があります。経営者の頭の中に「今」浮かんだことが必ずしも「ずばりストライク」ではないということです。

潜在的な願望もあります。本当の願望を知ることは意外と難しいものです。

先の経営者からは冒頭の言葉が返ってきました。

 

 

 

人時生産性向上の具体策は3つフィールドで考えます。

外、内、製販一体。

自動化は現場(内)での具体策です。自動化、機械化、設備化には投資がともないます。十分な検討が必要です。中小では慎重さも求められます。自動化がかえって中小の強みを劣化させる恐れがあるからです。

 

自動化の対象は「固有技術」と「マテハン」です。これらの自動化は各種のメリットがあります。ただし、中小の強みである柔軟性を低下させるリスクも忘れはなりません。

産業用ロボットには多関節型やガントリーロボットのような直行型などありますが、どんな型のロボットであれ、しっかり検討しなければならないのは導入の前提条件です。

 

ワークの形状やサイズ、特性(硬軟、表面性状等)に制約があります。オールラウンダーの産業用ロボットはありません。多品種少量を標榜する中小では、将来の事業展開を見通した制約判断が必要です。

さらには投資リスクの低減も考えなければありません。ワークが制約され、固定される資産が増えます。投資した分は期間中に回収しなければなりません。

 

先の経営者が考えた「自動化」は人手不足解消の手段でした。ただし、自動化の実現の実務には多くの前提条件があります。そこで具体的に話を伺いました。

そして、経営者は自動化の前にやることがあると気付きました。

 

自動化で成果を出すには手順があります。「なるほど、やらなければならないことが他にあるようです。」経営者の本当の願望は別にありました。

プロジェクトの目標設定をやり直します。

 

 

 

プロジェクトを成功させる要点のひとつに正しい目標の設定があります。ベクトルを揃えるためです。全従業員に腹落ちしてもらいます。

そのために過去から現在までの経緯を表やグラフで整理します。さらに必要なのが経営者の願望を言語化・数値化することです。

ここがズバリストライクにならなければ、迫力のあるプロジェクトになりません。経営者の願望をズバリ言い表す目標(目的)です。

 

人時生産性向上プロジェクトでは下記の構造を理解している必要があります。

目標と手段の階層構造

経営者の願望を実現させる目標と手段の階層構造を設定することです。願望実現のストーリー、手順とも言い換えられます。経営者の頭の中を見える化するのです。

 

目標と手段は段階的、階層的です。目標はさらに上位目標の手段になります。

人時生産性向上の目標は持続的競争優位の確立です。

私達、中小製造企業は技術の世界で戦っています。技術の進化と競合の追い上げに晒されているのです。生き残らなければなりません。差別化戦略で生き残りをかけます。価格競争を回避し、戦わずして勝つためです。大手と同じ価格競争戦略では疲弊します。

差別化戦略を実現すために人時生産性を高めるのです。そして、さらに差別化戦略の目標は?。ここから上位の目標に経営者の願望が表現されます。

 

 

 

中小製造企業経営者に掲げていただきたい上位目標があります。

持続的な利益アップと給料アップ

一時的ではダメです。一時的なら力技でも積み上げられます。それでは構造的に儲かる体質とは言えません。

 

現場改革→意識改革→構造改革

こうした過程を経て儲かる体質に変えます。持続的にそうしたいのです。持続的な利益アップと給料アップは経営者の願望ではないでしょうか?

そして、さらに上位の目標があります。

 

選ばれる企業になること。

 

貴社には「選ばれる会社」になっていただきたいのです。地元や地域に選ばれ、お客様に選ばれ、若くて意欲的な人材に選ばれ、将来の従業員に選ばれ・・・・・。「選ばれる会社」は景気に関係なく生き残れます。

 

選ばれる会社(経営者の願望)

持続的な利益アップと給料アップ(経営者の願望)

価格競争回避の差別化戦略で持続的な競争優位確立

人時生産性向上

 

これが人時生産性向上プロジェクトにおける目標と手段の構造です。上位の目標をにらみながら人時生産性向上の具体策を考えます。フィールドは外、内、製販一体の3つです。

 

そして、さらに考慮すべき検討要因があります。時間軸です。

直近と中長期

直近とはここ2,3年、中長期とは5年先、10年先です。この2つの時間軸で人時生産性向上の手段を考えます。

 

先の経営者の頭に真っ先に浮かんだのは「自動化」でした。これは現場における直近での手段です。ここに中長期を加えます。将来の人時生産性のためです。

将来の人時生産性を高めるために5年先、10先を見通した手段を考えます。経営者の頭に経営問題が浮かんできます。

先の経営者の頭の中には若手人材というキーワードが浮かんできました。こちらの方が気になっていたことです。こちらの優先度が高くなります。

 

 

 

願望は2種類あります。

潜在的願望と顕在的願望

正しい目標を設定するにも手順があると言うことです。

我流では時間がもったいなくなります。

貴社の人時生産性向上プロジェクトにおける目標(目的)と手段(対策)の構造はどんな風感じですか?直近と中長期で人時生産性向上の具体策を考えます。

経営者の願望を整理し、ロードマップに落とし込みます。ここまでやらないと現場に浸透しないからです。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、選ばれる会社を目指し直近中長期の目標構造を組み立て願望を実現する。

停滞する現場は、頭に浮かぶ目標だけに囚われ手段が目的化するので願望のままで終わる。