「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第304話 現場はチームの良さを知っているか?

「なるほど、その表現がいいですね。」

今月から人時生産性活動を本格化させる輸送機器メーカー経営者の言葉です。

 

3カ月間のベクトル揃えで年間活動計画ができました。これまで漠然としていたことが言語化、数値化、図表化されて、スッキリした表情になっている経営者です。

これからが本番ですよと言葉を掛けて、プロジェクトの実務をスタートさせる準備に取り掛かかりました。プロジェクトを成功させる3種の神器を確認したところです。

 

そのひとつは「合い言葉、スローガン」。この企業の現場に気付いてほしい、ある表現を伝えました。それが現場へのメッセージになると感じた経営者です。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

多くの経営者が望んでいる現場のイメージや姿があります。ワンチーム。2019年に日本で開催されたワールドカップラグビーで日本代表チームが掲げていた言葉です。日本代表チームの活躍が思い出されます。

 

ご支援先経営者の多くの方々は「チームで仕事をやれるようになれば、もっと儲かるのに」と考えています。さらには、「その方が楽しいはずだ」と付け加える経営者もいます。せっかく働くなら楽しく、明るく、元気に仕事をしてもらいたいのです。

しかし、我が社の現場の雰囲気は・・・・。

 

ベクトル揃えがプロジェクトをやり切るのに欠かせません。先の経営者も試行錯誤しながらベクトル揃えを現場へ働きかけています。

改善の余地はまだまだありますが、走りながら環境整備していけば問題はないと判断できたのでプロジェクトをスタートさせたところです。

 

 

 

 

 

とにかく、全社をワンチームにすることです。

製販一体、全員商売、全社一丸、工程間連携、部門間連動。

 

生産の流れは、お客様から問い合わせをいただくところから始まります。

ゴールは出荷です。

経営者の旗振りのもと、共通の判断基準にしたがって、従業員は我が社の儲けに貢献するという一人ひとりの役割を果たしながら、「お客様からの問い合わせ」~「出荷」までの、滞りない生産の流れをつくります。

 

製造業はチームでなければできない仕事です。応受援性の高い集団である必要があります。経営者はそのことを知っているので、現場にそうなって欲しいと考えるのです。現場も全員が同じように考えてくれたら問題は解決します。

 

しかし、残念ながら、現場はそう考えないことが少なくないのです。「今のままでいいで、いいではないか。納期は守っているのだから。」

経営者はチームで仕事をする良さを現場へ伝える必要があります。

知らなければ、教えてあげるだけです。

 

 

 

 

 

昨今、製造業で儲けようとするなら、現場も複雑で高度な業務をこなさなければならなくなっています。

製造企業は常に2つに晒されています。技術の進化と競合の追い上げです。この2つに置いてけぼりを食うと商売ができなくなります。

お客様に選ばれなくなるからです。選ばれたとしても、価格でしか選ばれなくなります。経営者は辛いです。

 

したがって、生き残るために、お客様の開拓、商品開発、技術開発、リードタイム短縮などの取り組みを継続させなければなりません。今や現場でも複雑で高度な業務をこなさなければならないのです。

 

それにもかかわらず、「そんな必要はない、ひとりで仕事は十分にできる。」という従業員がいたらどうしますか?

その従業員がやっているのは業務ではありません。

単なる作業です。

作業ならひとりでもできます。ただ、それだけです。人工でしか稼げません。人工作業は人時生産性を高められないのは明らかです。忙しい割には儲からない壁にぶち当たります。

 

仕事や業務は仲間と一緒にやるものです。

ドラッガーは次のように説明しています。

「仕事は、仕事の論理だけでなく、共に働く人たちの仕事ぶりに依存する。」

相乗効果

複雑で高度な業務は1+1=2ではなく、1+1を3にも5にもしてくれる仲間と一緒に、プラスの相乗効果のもと、こなすものです。それができるから競合に勝てます。差別化の源泉です。チームで仕事をする効果を現場に伝えます。

 

 

 

 

 

人材育成は経営者の重要課題です。「緊急度は低いが、重要度が高い経営課題」のなかでも上位を占めます。時間を味方につけなければならないからです。

だからと言って、経営者が従業員一人ひとりにマンツーマンで教育するわけにはいきません。そこで、現場に人材再生産体制をつくるのです。

現場で仲間と仕事をしているうちに、“自然と”人が育つ仕組みです。ご支援先でも、しばしば「ここは大手の仕事ぶりを真似るといいですよ」とお伝えしています。

 

チームで仕事する環境と人が育つ環境はほぼ同義です。これは理屈ではなく、大手と中小の現場を実地で経験したことから至った結論です。

チームで仕事する環境=学ぶ場=人が育つ環境

 

最良の人材育成は実務を通じてなされます。人は関わった人によって磨かれるのです。しくみづくりは人材育成にも通じます。しくみが人を育てるのです。

しくみがあれば、意欲のある若手は勝手に成長します。氏より育ちです。チームには学ぶ場があります。しくみとは学ぶ場を提供してくれるチームを機能させるものです。

チームで仕事をして若手を育てるのだ、という経営者の目論見を現場へ伝えます。

 

 

 

 

 

自動車部品工場時代の忘れられない瞬間があります。

新規のお客様を開拓しようとプロジェクトチームで四苦八苦していたときのことです。あるお客様に働きかけた際、幸い、そのお客様は我々の技術、製品に興味を示してくれました。

ただ、そのお客様から、新規の受注をお願いするにあたっては今のサプライヤーとの競争で決めたいとの意向が示されたのです。

そのサプライヤーはいつも争っている競合先です。その競合先との技術コンペとなりました。プロジェクトメンバーの総合力が問われます。

技術コンペを主導する担当者へのアプローチ、競合先の開発状況、圧倒的に勝つための技術開発・製品開発、それを量産で展開するときの準備などなど・・・。

文字通り、製販一体、営工一体でした。

 

いよいよ、技術コンペの結果がそのお客様から届く時がきました。関係者は固唾をのんで結果を待っています。そこへ届いたのは「受注決定」の報告。

その瞬間は今でも忘れられません。

 

チームで仕事をしていたので、仲間とぞくぞくする熱い体験ができました。

燃えるような、かぁ~っというような体験

せっかく製造業を仕事として選んだのなら、熱い集団を経験して欲しいのです。特に若い人には。経営者は、熱い集団で燃えるような体験をしよう!と現場へ伝えます。

 

 

 

 

 

稲盛和夫氏は不況を乗り切る5つの方策のひとつに次を挙げています。

・良好な人間関係を築く

膝をつき合わせた飲み会を大切にしている稲盛氏です。経営の要点は現場一人ひとりのつながりにあると考えているのだと思います。

だからこそ、経営再建で乗り込んだJALでも経営幹部、現場に関係なく一緒に飲食する場を大切にしたのでしょう。そうしてJALは再建されました。

チームで仕事をするワンチームです。

 

先の経営者も2年ぶりで従業員と休日のBBQを楽しんだようです。

どうでしたか?の問いに「久しぶりで大いにもりあがりました。」との言葉。プロジェクトが成功する予感がします。この経営者が掲げたプロジェクトの合い言葉は下記です。

「一人で仕事をしない。」

経営者からのメッセージを目にした従業員はその仕事ぶりを変えてくれるでしょう。どうせなら仕事もBBQのような雰囲気でやりたいと考える従業員もいるからです。

 

相乗効果

学ぶ場

熱い集団

チームで仕事をする良さを現場へ伝えます。これは社長業に専念する環境整備でもあるのです。人材育成を現場に任せられます。経営者はかなり楽になるはずです。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、相乗効果、学ぶ場、熱い集団を経験するのでチームで仕事すると考える。

停滞する現場は、チームで仕事をする環境がないので仕事は一人でやるものだと考える。