「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第329話 なぜ日々の成績表を見せなければならないのか?
「先生、毎日の仕事が完了する毎に実績を作業者に見せないとダメですね。」
30人規模素材メーカー製造部門担当幹部の言葉です。
販売活動の強化と並行して、現場活動に着手しようとしています。リードタイム短縮活動を継続させるにはどうするか?を議論しました。
お客様へ届ける20日後の納期に合わせて“なんとなく”製造するのではなく、儲けるように“きちんと”製造したいのです。
各作業者へ「あなたはもうすこし、手離れよく作業をこなさなければいけません」とのメッセージを伝え続ける必要があります。
仕事の時間軸を20日後の納期ではなく、毎日の8時間に置くのです。日々の管理値を設定します。ここまでくれば後は日々の成績表を見せるだけです。冒頭の言葉です。
「納期は守られて当然だ」
お客様はこう考えます。納期遵守はお客様との信頼関係の土台になっています。納期を守れないサプライヤーは生き残れません。淘汰されます。
貴社だけではなく、競合先も納期遵守はやっているのです。
競合と同じことをやっていても儲からないのが商売です。お客様の納期に合わせて淡々と造っていても儲からなくなりました。
時代が変わりました。我々は「お客様の納期」ではなく、「我が社の儲け」に合わせて仕事をこなしたいのです。
・現場に「納期遵守は当たり前だ」という思考回路を持たせる。
・その上で、我が社が儲けるにはどう造るのか?と考える。
従来は従来として、今からはそうします。儲けるために、お客様ではなく「我が社の納期」を設定するのです。
受注生産には「お客様の納期」があります。「お客様のリードタイム」です。一方で人時生産性向上のリードタイムもあります。「儲かるリードタイム」です。「我が社の納期」が決まります。前倒しで造っても、お客様は文句を言いません。
また、見込生産は在庫を武器にした生産形態です。在庫補充の製造をやります。その納期を「儲かるリードタイム」で設定すればいいのです。
目標値が決まれば管理ができます。ここからリードタイム短縮の実務が始まるのです。
「儲かるリードタイム」が設定できれば、日々の管理値を決められます。
個別生産ではリードタイムそのものが管理値です。ロット/連続生産なら、「儲かるリードタイム」から導かれたサイクルタイムや良品率、稼働率が管理値になります。
日々の判断基準です。これを上回ればOK、下回ればNG。管理値と実績値の差異が問題と認識されます。
判断基準がお客様の納期だけの現場では、その納期の時にしか、すったもんだが起きません。納期直前で「間に合いそうにないかも。」となって初めて遅れを取り戻そうとします。
これは特注生産の現場でしばしば起きることです。納期遵守は絶対だ!との認識では現場のベクトルは揃っているので、力づくでもやり切ります。
火事場の馬鹿力を発揮できること自体、チーム力のあらわれです。悪いことではありません。ただ判断基準がお客様の納期だけの現場はここで終わります。
本来なら失敗をフィードバックして新たな仕組みをつくりたいところです。しかし喉元過ぎれば熱さを忘れてしまいます。
だから同じようなトラブルを繰り返すのです。判断基準がお客様の納期だけの現場の限界がここにあります。
一方、判断基準が我が社の納期の現場は、毎日、すったもんだします。毎日、成績が出るからです。日々、達成しなければならない基準があります。
管理者から1日当たりの仕事量が提示されるのです。お客様の納期が1ケ月後なので、なんとなく製造していれば・・とは違います。
ロット生産や連続生産ではサイクルタイム6分とか3分とか設定されるのです。
6分毎にプレスを開閉しなければなりません。3分毎にローダーがワークを取りにくるリズムを維持しなければなりません。加えて、良品率97%以上を維持せよとの指示も飛んできます。
これらを達成すれば儲かるのです。目指す製造の姿が示されています。現場はそれを実現すために「どう造るのか?」を考えるのです。
儲かる製造活動は「継続性」が問われます。力づくだけでは儲かりません。誰でも、いつでも、無理なく造るやり方を考えます。経営者、管理者がいなくてもできるようにしなければなりません。これをしくみ化と言います。
経営者、管理者がいなくてもできるようにすること=しくみ化
管理値と実績値の差異を認識できる環境を整備すれば、現場は知恵を使いたくなるのです。毎日の成績表が現場を奮起させます。
成績を数値で示されては無関心でいられなくなるのが人間です。毎日の成績表が経営者に代わって現場を動かしてくれます。
フィードバックはスキルアップに欠かせないものです。フィードバックは早ければ早いほど効果があります。すったもんだは毎日あったほうがイイのです。
成績表で毎日、すったもんだします。居心地の良い現場は進化しません。
成績表の目的は儲けへの貢献度合いを毎日、知らせることにあります。そうであるなら経営者は、毎日の成績表と我が社が目指す人時生産性との関連を説明しなければなりません。
製造ロットの生産性→お客様別、商品・製品別の生産性→会社全体の生産性
このような波及構造です。人時生産性の体系や構造が明らかになっていますか?儲けへの貢献を理解させるためです。利益だけでは現場は儲けへの貢献度を実感できません。
日々の製造活動、製造ロット毎の生産性を地道に高める積み重ねが大事です。ジワジワと全体の生産性が高まる構造になっています。
チームのために1人ひとりが当事者です。欠かせないのは使命感と責任感です。
毎日の成績表があれば会社への貢献度を毎日、理解できるのです。頑張りたくなります。進化する現場は、毎日、すったもんだしています。居心地の良い現場は進化しません。
現場は毎日すったもんだしなければダメです。そのために毎日、成績表を見せるのです。管理値と実績値の差異が問題であるとの思考回路を持たせます。
ただし経営者や幹部は十分に注意して下さい。あくまで「基準とルールに基づいたすったもんだ」です。できるとか、できないとか、やらないとかという現場都合のすったもんだではありません。ここは注意を要します。
無駄なところにエネルギーを費やす暇はないはずです。
次は貴社が挑戦する番です!
成長する現場は、我が社の納期に合わせて仕事をこなし毎日すったもんだしながら進化する
衰退する現場は、お客様の納期に合わせるだけで居心地がよく仕事のやり方を変えられない