「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して— 脆弱な土台で壁や屋根を強化しても家は壊れる

 

「先生、土台から見直してみたいです。」

先日、個別相談をいただいた板金加工企業経営者の言葉です。

 

我が社の収益力が徐々に低下していると感じている経営者です。以前よりも儲かりにくくなっています。短納期にも関わらず、お客様からの仕様提示が遅れるなど仕事のやりにくさも感じるです。

工場内の雰囲気や今やっている事を伺いました。現場は頑張っています。それでも徐々に儲からなくなってきました。

企業を取り巻く外部環境が儲かりにくい状況に変わりつつあるようです。

 

そこで、お客様との関係性を伺いながらいくつかの論点をお伝えしました。

先の経営者はあることに気付いたようです。

冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

製造業で儲ける原則はただひとつです。

「お客様の要望にお応えすること。」

 

そのための商品・製品開発、技術開発です。これしかありません。最新鋭の設備を入れても、競合を圧倒するしくみを持っていても、お客様に選ばれなければ儲からないのです。

 

我が社を選んでくれるお客様と出会うご縁を探り、お客様の声に耳を傾けなければなりません。付加価値額の源泉は外にしかないのです。

経営者の仕事場は外にあると申上げています。外の変化に合わせて内を変えるのが経営者の仕事です。

製造業は、常に技術革新と競合の追い上げに晒されています。油断すると、置いてけぼりを食うのです。

 

自動車部品工場勤務時代、その工場の先輩エンジニアに「おまえの担当現場が3年間、何も変わっていなかったら、技術者としてのおまえの怠慢だ。」と言われたことを今でも思い出します。今から30年以上前のことです。

いまなら、さしずめ「昨年と変わっていなかったら・・・」でしょう。製造業は技術の世界で競争しています。「お客様の要望にお応えすること」を実現させる手段が技術です。

貴社のコア技術。

コア技術=要素技術+管理技術。

 

 

 

 

 

自動車部品工場時代、「軽量化、外観意匠性、低コスト」というお客様の要望に対応すべく、日々、技術を磨いていました。

そうしないとお客様に選ばれず、競合にシェアを食われるからです。

 

現場では足元の収益を稼ぐことに汗をかきながら、一方で、次の飯の種のために新しいことに挑戦していました。

ただし、お客様の要望にお応えするのは簡単なことではありません。簡単ではないからこそ、やる意義があるわけです。

競合と同じ事をやっていても儲からないので、取り組みの難易度は当然、高くなります。できないことをできるようにするのです。

できないことをできようにするのが製造業の本質となります。

 

ご支援先の現場で、実行する前から、「それはできません。」「難しくてできません。」という言葉を耳にすることがあります。

経営者の意志や意図が伝わっていないと、外に合わせて内を変える製造業の本質を理解できない現場になってしまうようです。

経営者は現場にお客様の声を伝える必要があります。注意をしてください。無駄なエネルギーを消費する懸念が生まれるからです。

 

 

 

 

 

事業継続のカギは「お客様の要望にお応えすること」にあります。要望に100%お応えすることです。我が社の事情は関係ありません。

外の変化に合わせて内を変えなければ生き残れないのです。これが現状です。ただ、ここでもう一つ考えなければならないことがあります。

 

儲けの積み上げです。

 

お客様の要望にお応えしながら、付加価値額を積み上げる。そうした事業モデルになっていなければなりません。

 

私達が展開しているのは事業です。ボランティアではありません。「お客様の要望に応えると儲かりません」では、事業とは言えません。収益確保は事業継続の大前提です。

 

つまり、製造業で稼ぐには「お客様の要望にお応えすること」と「儲けを積み上げること」の両立が求められているのです。そのための商品・製品開発、技術開発です。開発対象に管理技術も含まれます。

 

 

 

 

 

先の企業は特注品を事業の柱に据えています。7割以上は特注品です。特注品はいわゆる「あなたのために造る」です。まさしく、お客様の要望にお応えしています。

その点ではいいのですが、造る側の事情を踏まえると、問題もあるのです。あなたのためにつくるので手間暇がかかります。

 

造っている途中でお客様から仕様変更があり、造り直しもあります。そんなこんなで数をこなせません。

繰り返し造ることを要望させた規格品よりも1個当たりの儲けは大きいかもしれませんが、儲け全体ではたかが知れます。数量をこなせないからです。

付加価値額=@付加価値額×販売数量。

 

特注品はお客様の要望に100%お応えできます。その点では素晴らしい形態です。しかし、稼ぎがたい形態でもあります。造る側の制約がいろいろあるからです。

・受注してからでないと、造るものが分らない。

・受注してからでないと、製造に着手できない。

・お客様からの仕様連絡が遅れても納期は変わらず、その分のツケを現場が払わされる。

お客様の要望にお応えできるのですが、その分、工場にストレスが掛かります。ストレスが掛かれば、効率が落ちるものです。生産性が高まりません。

 

 

 

 

 

儲けるためにはある程度の数量、規模が必要です。規模の経済と言われます。ストレスなく造れるようにして、数量や規模をドンドンこなせば工場の効率は高まるのです。

規格品の製造は特注品よりもストレスを小さくできます。受注時点で、造るモノが決まっている分、工場にかかる負荷は少なくなるのです。

 

さらには、出荷のためではなく、在庫積み上げるために造れば、もっとストレスは減ります。生産LTを自ら決定できるからです。製造納期の決定権を手に入れられます。

こうして、ストレスがさらに減れば、ますます効率を高められるのです。造る側の事情で考えれば、特注品よりも規格品の方が儲けやすいと言えます。

 

お客様の要望にお応えすることが私たち製造企業の存在意義ですが、事業である以上、儲けなければなりません。そうであるなら、工場のストレスを下げる造る側の事情も重要な論点になります。

 

 

 

 

 

長年、同じ事業モデルのやり方をしていると、「それしかない」と思い込みがちです。我が社の事業モデルを眺めてください。視点を変えて儲かりやすいモデルに変えられませんか?

先代、先々代が築いた事業モデルをこのまま続けても、今後の5年、10年、問題ないと判断できるなら、それでOKです。貴社が今、存在していること自体がその証左です。

ただし、徐々に苦しくなっているな、競合と比べるとイマイチだな、と感じるなら一考の余地があります。

 

「お客様の要望に応えながら、我が社もしっかり稼げる」事業モデル。

 

QCDの決定権、生殺与奪の権を全てお客様に握られていては辛いです。それでも、そのお客様から作り切れないほどの受注をいただけているなら、結果として我が社も儲けを積み上げられます。これなら問題はありません。

 

しかし、黙っていたら、お客様から電話が掛かってこなくなった昨今、生殺与奪の権を全てお客様に握られた辛いだけの事業モデルでは生き残れないのは火を見るより明らかです。

 

「お客様の要望に応えながら、我が社もしっかり稼げる」事業モデル。

 

そもそも儲からない事業モデルでは、組織を見直しても、5Sを強化しても、儲けの積み上げには繋がらなないのです。組織見直しや5S強化は儲かる事業モデルの上で機能させます。

そもそも儲からない事業モデルの上で頑張っても効果は少ないのです。

その状況は、底に大穴があいた船が沈みつつある時、船員達にバケツで水を汲みださせているようなものと言えます。本来は大穴を塞ぐことにパワーを費やさなければなりません。

 

我が社が今よりもストレスなく稼ぐには?と考えます。5年先、10年先に向けた楽しみがなければ経営者も張り切れません。

外に向き合うための製販一体体制構築が要点です。ご支援先の経営者の皆さんが日々、知恵を絞っておられます。

 

 

 

 

 

事業モデルは我が社の「土台」です。ここがしっかりしていないと儲かりません。

 

新築の家も老朽化します。加えて、昨今は大きな地震に耐えるための対策も求められています。老朽化と地震対策のために、壊れにくい壁や屋根に作り変えるのは対策のひとつです。

それをやれば「見た目」にもやった感があります。しかし、本質的な対策ではありません。地面に埋もれている目に見えない土台へ手を入れないとダメです。

どんなに見た目が立派な壁や屋根に変えても土台が揺らげば家はつぶれてしまいます。

 

「事業モデル」も同じようなものです。例えば、見た目でわかりやすいDXだけでは、経営問題を解決できないのです。土台自体は変わっていません。

 

時代は変化します。変化に合わない事業モデルを継続しても儲からないのです。組織を変えようが、現場活動に取り組もうが、そもそも儲かりにくい事業モデルなので、何をやっても成果が出ません。

 

崩れかけている土台に、一生懸命、太い柱を打ち込んでいるようなものです。経営者は疲弊します。エネルギーを消費する観点が間違っているのです。

 

 

 

 

 

「指摘されないと気付きませんでした。」とは先の経営者の言。自分の事は意外と分からないものですよとお伝えしました。

人は思い込みの動物です。認知バイアスがあります。自分は正しいと考え勝ちです。

 

だから、経営者はご自身のことを客観的に評価してくれる人と出会うことが、事業を成長発展に必要であると感じます。分からないことは人に教えてもらえばいいのです。

会社で一番偉い「社長」にアドバイスをしてくれる人はいません。事業モデルのような経営の根幹を決定するような課題についてならなおさらです。

 

事業モデルを見直すにしても、まずは現状把握からです。ビフォーアフター。アフターの前にビフォーです。ビフォーがあるから、アフターの必要性がはっきりします。

先の経営者は、早速、ご自身の事業の分析に着手されました。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、外部の変化を知っているので事業モデルの変更も厭わずやり方を変える

衰退する現場は、自分のやり方が正しいと思い込んでいるので事業モデルを変えられない