「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第342話 何のために仕事をしているのかと問うた幹部

「何のために仕事しているのか、分かっていないのです。」

今、人時生産性向上プロジェクトを進めている企業幹部の言葉です。

 

先日、品質クレームを出してしまいました。弊社ご訪問予定日だったのですが、当然延期です。お客様からのクレームは最優先でやらないといけません。

まずは現状復帰。コストは度外視。自社の都合は関係ありません。一気呵成にやるのです。

 

雨降って地が固まるか否かは、お客様がクレームを認識してから現状復帰するまでの間で決まります。対策実施やクレーム報告書は二の次です。

お客様は今、困っています。選別して、良品と即、入れ替える。導入した設備の部品を再調整する。代替品がなければ徹夜してでも最短で準備し再納入する・・・。

先の幹部は連絡を受け取って、即、お客様のところへ飛んでいきました。適切な対応です。お陰でお客様の困りごとを最小限にできました。

 

外に対してはこれでイイのですが・・・。内がいけません。今回のクレームは現場の若手が「また」やらかしたためです。

別のお客様に対して、以前に同様のクレームを起こしていました。幹部が直接、当事者へ対策を教育したのですが・・・。再発です。

「本人の意識が足りない。」と幹部は考えています。現場は何のために仕事をしているのかわかっているのか?冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

「何のために仕事をするのか。」

先の幹部の答えは下記です。

「お客様のためである。」

この幹部の問いは「誰の為に」とも言い換えられます。外へ足を運び、お客様の現場を日頃から見ている幹部ならではの答えです。

 

お客様に選ばれなければ売上が立ちません。企業の存在意義はお客様の願望を応えることにあります。

できるとかできないは関係ありません。全ての判断基準はお客様のニーズに合わせて変えられるか変えられないかです。応えられなければ、選ばれないだけです。

 

そのことを知っている幹部だからこそ、お客様の懐に入り込む重要性を知っています。お客様のことを大事と思えば、迷惑をかけないよう気を使うはずです。

ましてや一度やらかして迷惑をかけています。お客様の事を考えていないから、同じミスを繰り返すと幹部は感じているのです。

 

 

 

 

 

市場としっかり向き合わなければ、お客様に選ばれません。経営者は従業員の意識をお客様に向かわせることです。

とは言っても、現場で日々の仕事に追われている若手の意識をお客様に向かわせるのは容易なことではないでしょう。お客様の顔が浮かばないのですから当然です。

そうであるなら、お客様の顔を見る機会をつくります。

 

・我が社の商品を扱う小売りの店舗に立ち、お客様が手に取って下さる様子を見る。

・我が社の製品が稼働しているお客様の工場へ足を運び、稼働の様子を見学させてもらう。

・お客様の現場で、我が社の製品を部品をして組み付けている様子を見せてもらう。

・我が社の製品が取り付けられているインフラを見学に行く

お客様の顔をうかべることができない若手がいれば、お客様のところへ連れていきます。そこでお客様に話を伺うのです。

 

お客様は我が社のことについていろいろ感じています。評価してくれているなら嬉しくなるものです。一方で悪い印象を抱いていることを知れば黙っていられません。

ウチの会社のことです。若手であってもそうなります。

 

 

 

 

 

現場の従業員、特に若手はお客様の顔が浮かびません。そうした若手にお客様を知る機会を与えるのは経営者の仕事です。先述の事例はご支援先の経営者からうかがったものです。

若手は我が社の製品がお客様のところでどのように扱われているのかを知ります。荷姿をもっと工夫した方がイイとかここの仕上げには気を使わないとダメだとか、気付いたことを熱心に説明してくれた現場キーパーソンがいます。

 

お客様の顔が見えてくれば、お客様のために頑張りたいと思えるのも自然なことです。先の幹部も早速、若手のお客様の現場へ連れて行こうと考えています。

企業は市場に向き合ってなんぼのものです。お客様に選ばれない限り儲かりません。したがって、仕事はお客様のためにやるという先の幹部の言葉は的を射ています。

 

 

 

 

 

お客様の立場で考えることは意外と難しいかもしれません。想像力が求められるのです。そして、その想像力は訓練で高められます。

お客様のところへ足を運ぶと、我が社の事、自分の事を客観的に見られるのです。客観的とは比べること。お客様の立場と自分の立場をくらべます。

 

利益アップ、給料アップの源泉となる付加価値額はお客様からいただくものだという極めて当り前のことを理解した上で、お客様のことを知ると、気付くのです。

・自分の立場でできるとかできないと言っているようではマズイ。

お客様はやって欲しいと願っています。できないことをできるようになりたい、お客様の期待に応えたい。そのために仕事をやっているのです。

先の経営者は若手にはこのような思考回路を持ってもらいたいと考えています。

 

 

 

 

 

「外へ向けての想像力」と共に大切な「内へ向けての想像力」があります。

仕事仲間の立場で考えること。仲間のために頑張りたいという貢献意欲はここから生まれます。貢献意欲は組織活性化3要素のひとつです。

 

仲間のことを慮れない人に貢献意欲の高揚を求めてもムリでしょう。「仲間のために頑張りたい。」と考えるスキル、内へ向けての想像力も鍛えたいところです。

全社一丸、製販一体の土台となります。

 

そのために仕事を通じて仲間と向き合う機会を造るのです。弊社はプロジェクトを通じて、右腕役の育成をしています。プロジェクトを通じて想像力を鍛えてもらうのです。

ただし教えようとしないことです。そもそも、想像力は教えられません。このあたりさじ加減があるようです。要点はしばしばお伝えしている環境整備にあります。

 

 

 

 

 

ある経営者とこのようなお話をしていたとき、その経営者が冗談混じりに笑いながら、こんなことを語っていました。

「従業員が経営者の立場を想像してくれたら嬉しいですけどね。」

経営の本質を知っている経営者です。冗談交じりで笑いながら話してくれた理由は分かりと思います。従業員の想像力はお客様の向かわせる方が大事です。

 

先の幹部は若手をお客様の現場へ連れていこうとしています。

お客様の立場を理解した若手は、迷惑を掛けたくないと考えるはずです。できないとかやれないとも簡単には言わなくなるでしょう。

お客様の顔を知ることで、我が社を客観化できるようになり、想像力も訓練できるのです。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、想像力が豊かでお客様の立場を理解できるからできるように挑戦する

衰退する現場は、外への想像力が乏しいのでお客様の立場を理解できず今のままである