「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第344話 なぜ上を向かなければならないのか?

「工場長が現場を仕切れていません。」

先日ご相談いただいた20名規模切削加工企業、経営者の言葉です。

 

今、受注が回復しています。その企業のお客様は業界でよいポジションにいるようです。コロナ禍で受注がコロナ以前の水準に戻らず苦戦しているご支援先が少なくない中、その企業は恵まれた市場環境に身を置いています。

しかし、先の経営者は問題に直面していました。現場は、受注の機会をみすみす逃すような対応をしているのです。

忙しいから、手間が掛かりすぎてできそうにないから、やったことがないから。こんな理由で受注を断ることがあります。

これでは成長モードに移行できません。年商3億円水準を行ったり来たりです。工場長は経営者の意志や意図に沿った行動ができていません。

冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

指示導線はトップダウンです。

経営する人、管理する人、指示する人、作業する人。上から順に指示が降りてきます。指示の発信元は経営する人、経営者です。経営者の意志や意図を実現させます。経営者の意志や意図を実現させれば工場は儲かるのです。

なぜ、経営者の意志や意図を実現させれば儲かるのか?

本気で市場に向き立っているのは経営者しかいないからです。市場に向き合って、お客様の要望に耳を傾け、競合先の動向に目を光らせます。

 

事業の目的はお客様を創り出すこととはドラッガーの言葉です。お客様の願望を実現させなければ儲からないわけで、経営者の顔は自然とお客様の方を向きます。

付加価値額の源泉は外にしかありません。そのきっかけをつかむために経営者は市場に身を置いています。

何をすれば儲かるのか?競争に勝って生き残るために何をしなければならないのか?このことを一番知っているのは経営者です。

 

ですから、経営者の意志や意図を実現させれば儲かります。

 

 

 

 

 

指示導線とは外を知っている経営者の意志や意図を実現させる仕組みです。

各階層の役割ははっきりしています。作業する人は指示する人を支援する、指示する人は管理する人を支援する、管理する人は経営する人を支援する。

各階層は上を向いて仕事をするのです。

そうならないと、経営者の意志や意図を実現できません。

 

それにもかかわらず、先の経営者の現場のようになっている場合もあるのです。忙しいからできない、手間暇がかかるから今やらない。現場からこんな言葉が出てきます。

管理者も現場がそういうのならしょうがないとそんな状況を放置しているのです。各階層は下を向いて仕事をしています。儲かるはずがありません。

 

経営者は右腕役にそのことを教える必要があります。現場に伝えることも大切です。

これは右腕役が悪いとか、現場が悪いとかというものではありません。そもそも経営者と従業員の目線の高さは違います。向きも違います。時間軸も異なるのです。

教えなければ分りません。

あえて言うなら、教える労力を惜しんでいる経営者が悪いのです。

 

 

 

 

 

「仕組み」が大事であるとしばしば語られます。

個の力でなく、チームの力で仕事をする方が大きな成果を出せるからです。ただし忘れてはいけないことがあります。現場に求められる能力が2つあるということです。

手順やルールを作る能力

決められたことを守る能力

手順やルールはつくるだけではダメです。守らないと意味がありません。

 

弊社のご支援先でも先の企業と同様な状況になることがあります。新たに作った手順やルールが守られないのです。トップダウンの指示導線が機能していません。

このあたり、組織の風土や文化、組織が持つ思考回路の影響を受ける問題です。その企業のこれまでのいきさつが関係します。

 

これまでは指示導線に気にしなくても収益を確保できていました。「納期遵守脳」現場でも結果がでたのです。

しかし、時代は変わりました。削減から積み上げの時代。今までのやり方では市場に置いてけぼりを喰うのです。

 

 

 

 

 

時代が変わっても、思考回路を変えられない現場もあります。そうした現場の経営者からご相談をいただくことがあります。その現場のキーパーソンと話をして気付くことがあります。

市場と向き合う仕事の重要性や経営者の仕事を知らないのでは・・・・・・。

知らないことは教えればいいだけです。

 

説明して、変わってくれるキーパーソンがいます。納期遵守以外にもやるべき仕事があることやチームで連携する重要性なども知って欲しいことです。

右腕役や現場のキーパーソンに経営者の意志や意図を理解してもらうことが、風土や文化を変える一歩目です。現場改革、意識改革、構造改革。

 

小さくやって成功体験を積み重ねるところからです。いきなり全部で息切れします。大きく変えるために、小さく始めるのです。

沈滞ムードの現場であっても、志がある若手やベテランはいます。志ある従業員を見極めて、そうした従業員を核に、上を向いた指示導線を少しずつ機能させるのです。

 

ただし、内部だけでやるには、難易度が高い課題かも知れません。

外部の力を借りながらやれば、他社事例に触れられます。現場キーパーソンの思考回路を入れ借えるには外部の刺激も効果的なようです。

 

仕組みをつくっても守れなければ意味がありません。指示導線を機能させて守らせます。そのように導くのです。知らないことがあれば教えます。

 

 

 

 

 

経営者は工場を不在にして外で汗をかいています。市場と向き合うためです。経営者は我が社が豊かに成長するための課題を知っています。

したがって、経営者の意志や意図に合わせて動いた方が従業員にとってお得なのです。「会社のため」は自分のためにもなります。

そのことを知れば、現場の言動も変わるはずです。経営者は従業員の協力を得られやすくなります。

 

志ある従業員を見極め、小さくてもいいので改革に着手です。上を向いた指示導線が機能し始めます。内部だけでの取り組みに固執することはありません。

「自分たちだけでやろうとして、失敗をくりかえしてきたかもしれません。」とは先の経営者の言です。使えるものは、外部の力でもなんでも、使えば良いのです。時間が買えます。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、経営者の指示に従えば儲かることを知っているので指示導線が機能する。

衰退する現場は、納期遵守脳でしか考えられないので面倒くさい指示をやろうとしない。