「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第345話 従業員数に見合った収益がでているだろうか?

「先生、売上規模が足りていないのですね。」

20人規模部品メーカー経営者の言葉です。

 

先代から事業を引き継いで数年が経過しています。2代目経営者です。

収益はトントン水準で推移しています。これは先代の時と比べて収益減です。賃上げもままなりません。

もっとあげたいと考えている経営者です。だた、無い袖は振れません。経営者は現場の生産性を高めなければと考えました。

 

儲かる工場=生産性が高い工場。

 

現場のチーム力アップが大事であるこは論を俟ちません。この考えは間違っていません。

ただし、それと平行してやらなければならないことがあります。外部から収益を獲得することです。

 

業種と規模に応じた収益上の目安があります。いわゆる業界の平均値です。それと比べました。先の企業では、従業員の規模に見合った収益を上げていません。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

生産性向上活動は現場の命脈を保つのに欠かせません。技術が進化し競合が追い上げているのに我が社の現場は3年来仕事のやり方が同じ・・・では相対的に遅れます。

リードタイムを短くする新たな仕事のやり方を探り、現場に定着させます。現場活動の成果を継続して獲得できるようにするのが管理技術です。

管理技術はチームのベクトルを揃えます。ただし、それだけやっても儲からないことは言うまでもありません。

 

こなしきれないほどの仕事が舞い込みてんてこ舞いになっている現場なら、人時生産性向上の論点は「内」にあります。ワークや情報の流し方、仕事のやり方を変えるのです。

「こなし切れない仕事」があるなら、現場活動を中心にした取り組みで人時生産性が高まります。詰めて、空けて、取り込むです。

 

しかし、「こなし切れない仕事」がない場合、人時生産性向上のためには、視点を外へ向けないとどうしようもありません。

どんなに分母の効率を高めても、分子の積み上げがなければ、人時生産性は高まらないと人時生産性の定義は教えてくれています。

 

「こなし切れない仕事」がない場合、付加価値額を積み上げない限り、人時生産性は高まりません。市場と向き合った製販一体の取り組みが必要になります。既存事業の延長線上に我が社の将来があるのかないのか?を考えます。

・成長するために従来の事業モデルのままで良いか?

・既存のお客様との取引だけで成長できるか?

 

「こなし切れない仕事」があるのなら、経営者が工場を向いても構いません。(それでも、工場のことは右腕役に任せて、経営者は市場に向き合わなければならないですが。)

「こなし切れない仕事」がないのなら、経営者は市場を向かないと絶対にダメです。「内」だけやっても儲からないことを今一度、知っていただきたいです。

 

 

 

 

 

「内」の論点は戦術水準ですが、「外」の論点は戦略水準です。

お客様に選ばれるには?の問いかけに答えなければなりません。事業モデルそのものが検討の対象だからです。

 

戦略を考えなければならないのに、戦術に焦点を当てても成果は出ません。先の経営者は着眼点を変える必要がありました。

戦略の見直しは経営者にとって触れたくない論点かもしれません。従来の延長線上に我が社の将来があるなら仕事もやりやすいです。その方が楽です。

戦略の見直しは改革であり、楽にできるはずはありません。楽にできるならもう全ての経営者がやっています。

 

商品、製品、サービス、コア技術、市場、お客様の見直しに迫られます。スクラップアンドビルド。手間暇がかかって面倒です。

改革に着手した経営者は猛烈に忙しくなります。工場を仕切る右腕役も育成しなければなりません。一方で市場にも向き合わなければならないのです。

 

そうした仕組みができたら、ストレスを感じることは減りますが、それまでが大変です。

しかし、経営者はやらなければならないのです。全てはお客様に選ばれるため、生き残るためです。それと、経営者ご自身が楽になるためです。

 

 

 

 

 

戦略を見直すときに確認したいことがあります。

規模の目安です。特に付加価値額の規模。

弊社では中小製造企業人時生産性平均を3,000~4,000円とお伝えしています。これがご支援先での実績を目安にしたざっくりとした数値です。現時点で一定水準の収益を出しているご支援先では4,000~5,000円です。

この数値から1人当たりで年間換算して従業員数(経営陣は入れず)を掛ければ、本来、積み上げなければならない付加価値額の目安が分かります。

上記は全業種なので、最終的には業種別の数値で検討しますが、ざっくりの目安ならこれでもやれます。

 

従業員数に見合った収益がでているだろうか?

これは今の戦略が正しいのか正しくないのか判断基準になり得る重要な質問です。我が社の立ち位置を知ります。

・今、まだ業界平均よりも小さいので、まずは業界平均水準に成長する。

・現在、業界平均水準なので、これを機会に業界水準を超えるまで成長する。

・既に業界水準を超えているけど、さらに業界で抜きん出た存在になるまで成長する。

 

少なくとも業界平均水準以上目指します。小さすぎる規模はビジネスで不利になることが多いのは言うまでもありません。我が社の将来を担う若手採用活動も苦労するはずです。

また、業界平均以上であっても立ち止れません。

規模があっても、業界でのシェアが小さければ競争力は劣後します。標的としている市場、業界で上位を目指す水準にまで引き上げたいのです。生き残るためです。

 

先の企業では「こなし切れない仕事」がないので戦略の見直しが必要です。これまで戦略は全て経営者の頭の中でした。これからは従業員にも知らせます。ロードマップです。

中小製造業の従業員は会社のためは自分のためと考えます。将来の見通しがあれば頑張ってくれるものです。外と中を連携する新たな戦略作りに着手します。

「売る仕組み」と「売る仕組みに合わせて工場を変える仕組み」の連結です。製販一体といいます。先の企業の規模は大きくないですが、営業専業の担当者がいるのです。これはきっかけになります。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、業界平均規模を知っているので現状を知って業界トップを目指す。

衰退する現場は、業界平均規模を知らないので現状がベストと思い込むので成長しない。