「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第418話 右腕役の工場長へ2つのことを伝えているか?

 

「外部の専門家に指導をしてもらった方がいいでしょうか?」

これは、先日個別相談をいただいた、40人規模、部品メーカー経営者の言葉です。

 

次世代経営者への事業継承を進めるために5年先を見据えた体制づくりを考えています。次世代経営者の右腕人材の育成が重要となります。現在期待を寄せているのは、現工場長です。

その経営者は工場長を本格的に指導する必要性を感じています。工場長は現場での経験が豊富で技能も優れていますが、管理技術はまだ発展途上です。適切な指導が求められます。

経営者は自身で工場長を指導しようと考えていますが、一方で、外部の専門家の力を借りることも効果的かもしれないとも考えています。これが冒頭の質問の背景です。

 

 

 

 

 

弊社は主に従業員100人以下の中小製造企業経営者を支援する事業をしています。仕組みづくりと指導の2本柱です。人時生産性に焦点を当てています。

中小製造企業は、下請け型事業モデルであったとしても、自らQCDの主導権を握る可能性を探る必要性に迫られてきました。

 

昨今の円安や物価高の外部環境下で、従来のやり方のままでは辛いままです。コスト削減から、積み上げの経営に構造を変えます。

積み上げの経営では、経営者は市場と向き合って我が社が生き残る論点を探るのです。

 

経営者の仕事場は外にあります。経営者は工場を不在にしがちです。そうであるなら、経営者が不在でも工場が回らないといけません。ここが仕組みづくりの要点となります。

さらに、仕組みは機能させないと役に立ちません。仏造って魂入れずではもったいないのです。右腕役には、経営者に代わって、仕組みで工場を回してもらいます。回せるようにする指導も大事です。

 

 

 

 

 

工場長の指導は、

・経営者自身がやるのがいいのか?

・外部の専門家にお願いするのかいいのか?

こうした疑問が先の経営者の頭に浮かびました。

 

答えは明白です。

工場長の指導は経営者の仕事です。

 

経営者が工場を不在にしたら、工場長は経営者に代わって工場を仕切ります。仕切る時の判断基準は経営者から示されたものでなければなりません。工場長が自分勝手な判断基準で工場を回し始めたら、トップダウンの指示導線が機能しなくなります。

したがって、経営者は自身の判断基準を工場長に伝え、理解させ、それを実践できるように指導するのです。

 

伝えることは2つあります。

・数値で表現できる判断基準

・数値で表現できない判断基準

 

前者は知識ベースの「情報」です。人時生産性をはじめとしたこれらの判断基準は生産管理QCDの3本柱から導かれます。

一方、後者は経営者の「想い」です。我が社固有の組織風土や文化、価値観から醸成されるものです。先代から引き継いだものもあるかもしれません。経営者が今の従業員、将来の従業員へ伝えたい事とも言えます。後者を工場長に指導できるのは経営者しかいません。

経営者の「想い」とは、我が社の土台であり、土壌の部分です。

・我が社は今、どうなっているのか?

・我が社は将来へ向けて、どうしていかなければならないのか?

・だから、あなたには〇〇ができる工場長になって欲しい。

繰り返し、繰り返し、噛んで含めるように語って伝え、工場長に理解してもらいます。協力をお願いするのです。後者を伝えられるのは経営者しかいません。

 

 

 

 

 

「数値で表現できない判断基準」の上に構築されるのが、「数値で表現できる判断基準」です。知識ベースの情報になります。

弊社が実践会で指導するのは、主に数値で表現できる判断基準です。

先日、あるご支援先の経営者が「利益が出る理屈を現場にも理解させたい。」と語っていました。理屈が分かれば、数値で表現できる判断基準への理解度が高まります。

知識ベースの情報には体系があるので、それを指導すれば、トップダウンの指示導線が機能しやすくなるのです。

 

工場長の指導では、

・数値で表現できる判断基準

・数値で表現できない判断基準

両者をバランスよく伝える必要があります。仏の「彫り物」と「魂」、両方を伝えることで、工場長は経営者の意志や意図を理解するのです。

 

「経営者自身がやるのがいいのか?外部の専門家にお願いするのかいいのか?」

の二者択一ではなく、

 

「経営者による工場長の指導を加速させ、効果的に進めるために、外部の専門家の支援を受けるか、受けずに自分でやるか?」

の選択で経営者は最適な決定ができます。

 

経営者に構想があるなら、その構想に従って数値化した判断基準を工場長に指導すればいいのです。PJで進めます。外部の専門家から支援を受ける目的は、そのPJを加速させること、効果的に進めることにあります。

経営者にとって最も重要な経営資源「時間」を買うという観点です。意欲的な経営者は、「時間を味方につける」と「時間を買う」を使い分けています。

また、多くの事例を知っている外部の専門家なら、的確な指導ができるのです。分からないことは分かっている人に教えてもらえば効果的にやれます。

 

 

 

 

 

先の経営者は、次世代経営者の右腕役へ指導すべき2つの項目に腹落ちをしたようです。そして、さらなる突っ込んだ会話の中で、次のような言葉が口を衝いて出てきました。

「1人でやっていると我流に陥っても気付きません。」

 

納期遵守だけの工場経営ならば、我流であっても、納期に判断基準を合わせて仕事をすれば十分です。モグラ叩き式で構いません。力づくでも納期を守れば目前の目的を果たせます。

しかし、利益アップと給料アップの人時生産性向上を目的とする工場経営を標榜する場合、モグラ叩き式ではダメです。蓄積式にしないと成果は出ません。

個力では結果が出ないからです。製販一体、全社一丸です。

そうなると我流では限界があります。そのために生産管理3本柱の知識体系があるのです。まずはこれらの「型」を身につけます。

「型」を身につけていれば、型破りができるのです。独自性です。「型」がないと我流に陥る懸念があります。独自と我流も紙一重です。先の経営者はその心配を語っていました。

 

 

 

 

 

「5年先、10年先のことですが、今からやらなければならないと思います。」

次世代経営者を支援する右腕役の指導は、今からやる必要があると考えた経営者です。

経営者の目線は将来に向いています。そして、将来構想を実現させるために、ただ今、やらなければならないことも同時に考え、従業員へ指示するのが経営者の仕事です。

将来構想を示すだけでは、現場は動けません。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、外部の支援を受ける要点を知っているので活動が加速して、成果が出る

衰退する現場は、外部の支援を受ける要点を知らず、我流に陥るので、活動の成果が出ない