「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第420話 事業構造検討に必要な抽象化ができているか?

「食品関係の工場も指導してもらえるのでしょうか?」

これは、先日個別相談をいただいた食料品製造業、経営者の言葉です。

 

現場の生産性向上に関する問題を抱え、相談に来られました。現状の話を伺い、問題の整理と課題の検討に移ろうとしたとき、その経営者が「ところで」と間を置いて口にしたのが、この質問です。

 

 

 

 

 

弊社は、中小製造企業の経営者を人時生産性向上の観点から支援しています。対象は製造業全般です。要点は市場と工場にあります。

 

儲かる工場経営の鍵は、「お客様に選ばれる製品を効率よく造ること」です。お客様に選ばれる良い製品があっても、造り方に問題があれば利益は限定的です。一方、どんなに効率的な製造ができる現場でも、お客様に選ばれる製品がなければ儲かりません。

 

市場と工場、外と内、それらを繋ぐ製販一体体制が重要です。製造物には制約がありません。金属製品や設備、樹脂製品などの硬いものでも、食品や紙製品、印刷などの柔らかいものでも、儲かる工場経営の鍵に差異はありません。

 

 

 

 

 

伊藤が学生時代に専攻していたのは金属やセラミックを扱う材料工学です。さらに、製造現場での経験を、自動車部品製造工場や切削加工業で積んできました。

そのため、ご相談いただく経営者の方から「自社製品の業種も支援の対象ですか?」という質問を受けることがあります。

特に、金属製品や設備、樹脂製品などの硬いものではなく、食品や紙製品、印刷などの柔らかいものを扱う業種についてのご相談です。

 

「製造業なら対象です」とお答えしています。具体的には、日本標準産業分類の中分類66種のうち、製造業の24種が対象です。弊社の支援先には、食品関係、紙関係、印刷関係など、柔らかいものを扱うお客様も多くいらっしゃいます。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の要点は「お客様に選ばれる製品を効率よく造ること」にあります。そのためには次の2点が重要です。

・市場に向き合っていること

・工場で加工をしていること

これが事業モデルの土台となっているなら弊社はご支援ができます。

市場と工場、外と内を繋ぐ製販一体体制を構築することが儲かる工場経営の基本です。これは業種に関係ありません。製造業では、各業種にある多くの共通点に注目します。

 

例えば、食料品製造業では「盛り付け」工程があります。お弁当やお惣菜の製造現場です。この工程は、他業種の「組立」工程と同じ考え方が適用されます。

ごはん、卵焼き、漬物などの素材が揃ったら、作業者がプレートへ配置するのが「盛り付け」工程です。これは、部品A、部品B、部品Cが揃ったら作業者が組立作業を行うのと似ています。どちらの場合も、ボトルネックの認識が重要です。

業種に関係なく、現場には「加工」「検査」「運搬」「停滞」の4つの工程が存在します。この中で、付加価値額を積み上げるのは「加工」に相当する工程だけです。

製造物の硬軟に関係なく、儲かる工場経営の要点に差異はありません。

 

 

 

 

 

一方で、業種の特徴を理解した上で、儲かる事業モデルを考えることも重要です。

例えば、先の経営者の食料品製造業は中小製造企業の平均と比べて従業員数が多く、人年生産性が低い傾向にあります。これは、人手に頼らざるを得ない作業や市場価格の制約が大きいためと推察できるのです。

こうした業界の特徴を理解し、その中で業界におけるトップクラスの生産性を目指すことが必要です。

自社ならではの味付けや美味しさ、盛り付けにこだわるなら、人手をかけても問題ありません。自動化できることは大手でも同じことをやられてしまいます。人手によるこだわりが重要であると考えるなら、それは中小食料品製造業ならではの差別化につながるのです。

 

統計的な事実から、食料品製造業は他業種と比べて、従業員数が多く、人年生産性が低い傾向にあることが分かります。これは業種特有のビジネスモデルの違いを示しているだけです。他業種より劣っているということではありません。

したがって、経営者は、属する業種の特徴を理解した上で競合を凌駕するポジションを目指すのです。

中小の食料品製造業の特徴を踏まえると、効率を求めつつも、お客様に選ばれる商品を作るために必要な「人手」という視点を大切にするという考え方も生まれます。

・業種に関係なく適用できるお作法を使う。

・業種の特徴を理解する。

この2つで儲かる事業モデルを考えるのです。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の要点は、業種に関わらず同じです。一方、儲かる事業モデルを考えるときには、業種の特徴を理解することも重要です。

経営者には「具体→抽象→具体」の思考回路が求められます。

・あらゆる情報を活用する思考回路を持つ

どんな情報でも活かしたいのです。我が社が儲かる工場経営の事業モデルづくりに役立てます。以下のような思考では、生き残れません。

 

・我が社は30人規模なので、大手の事例は参考にならない。

・我が社は切削加工業なので、金型を使った業種の事例は参考にならない。

・我が社の現場は知識が乏しいので、上手く行っている現場の事例は参考にならない。

 

規模や業種、現場の違いに関係なく、具体的な情報を一旦抽象化し、儲かる工場経営の事業モデルをつくる論点を見つけ、その後、我が社へ具体的に当てはめてみる。

この思考回路が重要です。これがなければ、経営者から「現場を厳しく訓練してください」といった的外れなコメントが出てしまいます。見たままのことをそのまま言葉にしている状況です。抽象化のプロセスが抜けています。

 

経営者の時間軸は将来を向いています。人は元々、将来のことを考えるのが得意ではありません。これは脳科学的に証明されている事実です。

だからこそ、経営者は規模や業種、現場の違いに関係なく、「具体→抽象→具体」の思考回路を意識的に持って、将来のことを考える必要があります。

経営者が従業員と同じ目線のままでは、技術の進化と競合の追い上げに晒されている製造業で生き残ることはとうていできません。

弊社が業種に関係なく、儲かる工場経営の仕組みづくりができるのは、お作法と経験則を活用して、この「具体→抽象→具体」による標準化を導いているからです。

・業種に関係なく適用できるお作法を使う。

・業種の特徴を理解する。

この2つの観点で儲かる事業モデルを構築していきます。

 

 

 

 

 

「なるほど、良く分かりました。」と先の経営者は言いました。自社と同じ規模、業種、現場の話だけでは役に立たないことを理解されたようです。

儲かる工場経営は、業種に関係ありません。

革新とは、自社と異なる規模、業種、現場の事例を参考にして進めるものです。自社と同じ業界や同じ規模の企業、自社と同じ現場の話を聞いても、現状維持しかできません。

これでは、経営者が願う変革は起こらないのす。

次は、貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、経営者が具体→抽象→具体の思考で優れた事業モデルを構築している

衰退する現場は、経営者の今、見たままの思考で従業員と同じ目線により変革は起きない