「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第425話 人手不足を助けてくれるパートナーがいるか?

「外注しなければ対応できません。」

人時生産性向上プロジェクト部品メーカーの製造担当役員の言葉です。

人時生産性向上プロジェクトの進展に伴い、受注判断を迅速に行う仕組みが整備され、お客様へ即座に納期を伝えることが可能になりました。余力管理の仕組みづくりも重要です。

ただ、取り組みのなかで、計画外のことが起きています。数人の作業者が退職したのです。その中には現場キーパーソンも含まれていました。

小規模な工場では、数人の離脱でも生産に大きな影響が出ます。既に必要に応じて外注していましたが、今回の人手不足により、さらなる外注対応が必要になりました。

残業や休日出勤だけでは補いきれない部分を外部リソースでカバーし、安定した生産を維持することが今後の課題です。外注の活用が、経営者として重要な選択肢となってきました。

冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

外注は中小製造企業にとって重要な戦略です。

大手とは異なり、中小企業は限られた経営資源の中で運営されています。全てを内製化しようとすれば、コストや時間が膨らみ、経営の負担になることがあります。そこで外部の企業の力を借りることで、効率よく生産を進められます。

外注費がかかるため「外に出すのは良くない」と考える方もいますが、それは誤解です。むしろ、適切な外注を活用することで、効率的に付加価値を積み上げることができ、結果として企業の成長につながります。

外部との連携を強化することで、新しい技術やノウハウを吸収し、自社の競争力を高めることも可能です。人手不足への緊急対応もできます。

 

外注戦略には、経営者が考えるべき4つのポイントがあります。

①技術的にはできるが工数が足りない場合の外注

②工数はあるが技術が不足している場合の外注

③技術も工数も不足している場合の外注

④技術と工数に問題はないが、あえて外注する場合の外注

それぞれのケースで、経営判断が重要になります。

 

①は、技術的には自社でできるが、現場のリソースが足りない場合です。

今回、製造担当役員が直面した問題はこれです。通常であればこなせる仕事量でしたが、突然の作業者の退職により、現場に投入できる工数が激減しました。

生産ラインはそのままでは回らなくなります。しかし、ここで手をこまねいてはいられません。お客様からの受注は引き続き堅調で、問い合わせも絶えません。

中小企業の経営者であれば、こうした時に「人手が足りないので、注文は受けられません」とは言えないのです。お客様との信頼関係が崩壊します。

経営者は、一度失った信頼は、二度と取り戻せないことを知っています。

このような時こそ、外注戦略が真価を発揮します。確かに、突然の退職や労働力の減少は予期できないものです。しかし、そうした計画外の事態に対応するためにも、常に我が社に協力してくれる外注先を確保しておくことが重要です。

これが、①における外注戦略の大きな柱となります。人手不足に直面しても、外部の力を借りることで、受注を断ることなく、生産を維持することができるのです。

 

一方で、外注に頼ることだけが解決策ではありません。中小製造業においては、従業員が辞めないような職場環境を整えることも大きな課題です。

最近では、労働力の確保が難しい中、従業員の退職は事業そのものの存続を脅かすリスクにもなっています。そのため、従業員が辞めないような環境作りと、万が一辞めた場合でもお客様の要望に対応できる仕組み作り、この両面での対応が必要です。

 

①のケースに対する先手必勝の対応策は、外注先との強固なパートナーシップを築くことです。これにより、突然の退職や予想外のトラブルにも柔軟に対応できます。

特に中小企業では、多品種少量生産が大手に対する競争優位のひとつです。そのためには、生産現場の効率化とともに、外部リソースを活用した柔軟な対応が必要です。

全てを自社で抱え込む必要はありません。むしろ、信頼できる外注先と協力することで、生産ラインの安定性を高め、事業の持続可能性を確保できます。

外注戦略は、単なるコスト削減ではなく、計画外の事態にも対応できる柔軟な生産体制を構築するための重要な手段です。

我が社に協力してくれる外注先を確保し、適切に活用することが、これからの中小製造企業の成長に欠かせない戦略となるのです。

 

 

 

②は、工数は十分にあるが、技術的にできなくて内製ができない場合です。コア技術戦略で考えます。コア技術以外の技術を内製に取り入れるかどうか?時間を味方につけて、新たな技術をコア化するのも選択肢のひとつです。

一方、あくまで技術はコア技術に集中し、コア技術適用製品を拡張する選択もあります。「コア技術は絞り、お客様のすそ野は広げる」です。

 

③の場合でも外注なら、付加価値額の積み上げができます。さらには④のようにあえて出すなら戦略的な要因があるはずです。

どのような場合でも、外注の目的は付加価値額の積み上げにあります。外部の力を借りた積み上げです。

 

 

 

 

 

中小製造企業の経営資源には制約があり、外注を活用して付加価値を積み上げる戦略が重要です。「外注すると外注費がかかり、儲からない」という誤解を捨てることが必要です。

確かに、利益を生み出しにくい、「儲からない」外注もありますが、適切に活用すれば、工数不足や技術的な問題に対応し、機会損失を回避することができます。

外注は、コスト以上に企業に利益をもたらす手段であるため、経営者として外注戦略をじっくりと考えることが求められます。

 

ある現場で、突然の退職者が出て生産ラインに穴が空いたとします。

急いで採用活動を始めたものの、応募者がなかなか現れません。そうなると、残った従業員に負担がのしかかるのです。経営者は悩みましたが、ここで決断します。

「全てを内製でこなそうとするのは無理だ。外注先を頼ろう」と。

外部の協力企業がすぐに対応してくれたおかげで、生産ラインは再び稼働を始め、注文を無事にこなすことができました。この判断が機会損失を防ぎ、売上を守れます。

今後もこうした人手不足への対応しなければならない場面が増えるかもしれません。

 

外注先を活用することで、人手不足時でも、現場の負担を軽減し、事業の安定性を保つことができます。もちろん、最終的には人時生産性の向上や事業構造の見直しが必要ですが、その場をしのぎ、長期的な成長へとつなげる外注も大切です。

そのためには、「気軽に」外注をお願いできるビジネスパートナーを、地元や地域で、開拓しておかなければなりません。これは経営者同士の信頼関係で成り立つものです。経営者の仕事場は外にあります。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、人手不足を外注で対応しながら事業モデルを改革し人時生産性を高める

衰退する現場は、人手不足になるとせっかくの注文を断るので売上高をじり貧になる