「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第59話 つくった仕組みを機能させるのに欠かせない論点
貴社では、しくみを作りっぱなしにしていませんか?
生産管理で仕組み化の対象は、生産計画と生産統制です。
生産管理の仕組みをつくとき、具体的には、これら2つの仕組み化を進めます。
すると、生産の流れがみえるようになるのです。
生産管理の本質は見える化であり、この見える化があるからこそ、標準化と全体最適化が可能となります。
モノづくり戦略をつくるうえで、極めて重要な論点なので、繰り返し申し上げています。
改善や製品開発に一生懸命に取り組んでいるが成果を実感できないという現場に限って、こうした生産管理の仕組みがないことがしばしばです。
中小の現場で実地で仕事をしてきて強く感じています。
生産管理の仕組みがなければ、”今”が見えていません。
”今”が見えていない状態で改善や開発を進めても、目かくしした状態で新たなことに挑戦しているようなものです。
心もとないことこのうえないと言わざるを得ません。
儲かる工場の土台には生産管理の仕組みがしっかり根を張っていなければならないのです。
貴社の現場の生産管理の仕組み化の水準はどの程度でしょうか?
現場の生産管理の仕組みをチェックし、抜けているところは加え、弱いところは強化して下さい。
さて、生産管理に限らず、経営者は”仕組み”をつくる場面に直面します。
この仕組みづくりを成功させるポイントは、どこにあるとお考えでしょうか?
伊藤は「定着させること」にあると考えています。
仕組みを作ることに意識が向いている経営者は多いのではないでしょうか。
こうしよう、ああしようと考えて新たなルールをつくり、現場で回せるようにしくみにするのです。
このように仕組みづくりには一生懸命であるのに、なぜかそのあとの「定着させること」には無関心である経営者が多いようにも感じています。
ある中小現場での話です。
現場を対象にした新たな仕組みを作ったことがあります。
工場内のスペースに関する問題が発生したのがきっかけでした。
新たな仕組みでは、現場が、ある一定の動作の有無を記録に取るよう規定しています。
しばらくして、現場でその記録用紙を見たとき、しっかり必要事項の記録をつけているのが確認できました。
流れるように作業を進めたい現場にとっては、少々負担になるのではないかと感じていましたが、記録自体は、ちょっとした動作です。
それでも、決まり事を遵守していたのですから、大したものです。
「しっかり記録をつけているね」
現場の若手に声をかけました。
そのときの、彼の返事は次のようなもです。
「決められたことなので、しっかりやるけど、いつまで続くことやら・・。
記録をつけても、結局、誰も確認しないから、そのうち、うやむやになりますよ・・」
聞いてみると、新たに仕組みをつくっても、長続きしなかったことが、これまでも、たびたびあったとのこと。
しくみを定着させるには「フォローと評価」が欠かせません。
これは、仕組みの定着化に限定されたことではなく、儲かる工場の体系全体にも言えることです。
先の話には、後日談があります。
仕組みができて、2ケ月程後、その新たな仕組みに関連して、再び、問題が発生しました。
その時点で、はじめて、その記録結果が幹部によって確認され、いくつかの記録の抜けが指摘されました。
そして、幹部は次のように現場へ問いかけたのです。
「なんで、しっかりチェックしてないのか?」
現場はどう感じたでしょうか?
新たにつくった仕組みの良し悪しは、結局、やってみないとわかりません。
したがって、最終的に役に立つ仕組みというのは、時間をかけて、修正・変更する必要があるのです。
そもそも、時間をかけないと、良い仕組みになりません。
仕組みは育てるものです。
ですから、仕組みは、作ることも大切ですが、良い仕組みに仕上げるために、定着させることも、それ以上に重要なのです。
そして、仕組みを回すのは現場です。
したがって現場には、持続的なやる気を持って、仕組みに接してもらう必要があります。
そうしてもらわないと定着しないのが仕組みなのです。
自律性を促すのに欠かせない「フォローと評価」は、仕組みを定着させるためにも重要な役割を果たしています。
仕組みづくりでは、定着させるための貴社独自の工夫を考えませんか?