「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第60話 生産管理の視点で”今”を知り、論点を絞る
貴社では現場の問題点が見えていますか?
「生産性を向上させたいのですが、何から手をつければいいのかわからなくて・・・。」
ご相談をいただいた経営者の言葉です。
製造業の経営者は、モノづくりで儲けるプロです。
長年の経験と皮膚感覚で、儲けるためにやるべきことを判断し、実行しています。
しかし、昨今は、モノづくりも高度化、複雑化しています。
多品種化などへの対応はそのひとつです。
それなのに、単価は下落の一方・・・。
そこで、現場を見ると、うまく言葉にできないけれども、いろいろな問題点が目につき、このままでは、まずいとの思いにとらわれます。
これもやらなければ、あれもやらなければと考えますが、そこから具体的に、何を対象に、どう行動を移せばいいかわからない・・・。
皆さんはいかがでしょうか?
こうした状況に陥ることがありませんか?
2つの観点で解決させます。
・”今”を知ること。
・絞ること。
モノづくりの現場は複雑です。
どのような流れで利益が生み出されるか、現場は理解しているでしょうか?
あるいは、生産の流れを正確に知っているでしょうか?
なんとなく、分かっているけど、きっちり説明しようとすると、意外と心もとない、という方が多いのではないでしょうか。
それは、製造業の構造が複雑だからです。
製造業が小売業やサービス業と根本的に異なる点は、自ら原材料を調達し、自ら加工する手段をを持っていることです。
加工を通じて、自ら付加価値を生み出しています。
自らの手で、価値の低い原材料を、価値の高い財に変換しているのです。
価値を高める”加工”という手段こそが、小売業やサービス業と異なる点であり、それがために、事業自体、構造が複雑なのです。
逆に言えば、付加価値を生み出す機会が多いとも言えます。
だからこそ、製造業は、人生をかけて取り組む価値がある仕事だと伊藤は考えています。
製造業は複雑です。
だから、まず、やるべきことは、現状を紐解くことです。
弊社では、”今”を知ることと表現しています。
ですから、先の企業様には「まずは、”今”を知ることです。」とお伝えしました。
弊社は、生産管理の視点で生産の流れを整理し、その後、現場のチェックを行います。
受注情報を受けてから、出荷されるまでの流れをいくつかのステージに分割。
各ステージの流れを、複数の視点でチェックするのです。
生産現場には、物、お金、情報の3つの流れがあり、これらを分析します。
先の企業様と分析を進める中で、経営者より、次のような言葉がありました。
「やはり、仕組みが必要ですね。今後、新しい人を採用したとき、どこで頑張ってもらうか、あてはめようがないですものね。」
生産の流れが見えてきたので、頭の中に、仕組みのイメージが浮かんだようです。
「あてはめる」という言い方をされていましたから、仕組みの構造を、ピースを組み立てるイメージで考えたようです。
生産の流れ、モノづくりの全体像、生産現場の状況が見える化されると、仕組みのイメージが湧きやすくなります。
現場が見えてくると、全体最適化の対応策が浮かびやすくなるのです。
生産管理の役割は、見える化です。
ですから、現場改革の一歩目は、生産管理の視点で現場を分析して、”今”を知ることです。
”今”を知って、全体最適化の目を持ちます。
これ抜きの改善活動はあり得ません。
さて、生産の流れが見えたら、次は目指すべき状態を設定します。
目指すべき状態と現状を比べて、問題・課題の抽出を行うのです。
ここで、注意点があります。
生産の流れが見えてくると、自然と問題点が浮かんでくるということです。
目指すべき状態があろうが、なかろうが、問題点が”なんとなく”見えてきます。
ここで、問題が頭に浮かぶまま、議論を始めると、課題が絞られず、成果が出にくい状況になります。
問題解決の焦点が絞られていないので、議論が収束しません。
制約条件の多い中小現場では、一点突破主義です。
論点を絞り、焦点を明確にします。
現場の問題点はおおむね、次の4点に絞られます。
生産の3条件+人にまつわる話
生産の3条件とはQ(品質)、C(コスト)、D(納期)のことです。
製造業は構造が複雑ですから、現場では、上記の4点の要因が多様に絡み合って、”問題”と認識されます。
ですから、論点を絞らないと、品質の議論をしているうちに、コストの話になり、結局、人の話になった、と発散した議論になるのです。
問題・課題の抽出の前に、目指すべき状態を設定し、論点を絞ります。
先の企業様はD(納期)でした。
経営者は、そこに焦点を当てたかったのです。
生産性向上、という表現を翻訳することが必要でした。
そこへ焦点を当てることで、その後の取り組みがぶれにくくなると共に、経営者の想いが現場へ伝わりやすくなります。
現場改革はプロジェクトで進めます。
そして、プロジェクトを開始するにあたっては、狙いや目標はシンプルな方がよいです。
プロジェクトの出だしで、つまづきたくはありません。
ですから、先の企業様では、プロジェクトを始めるにあたって、全てはD(納期)のためにやるのだ、ということを徹底していただきました。
整理整頓するのもD(納期)のため。
設備レイアウトの変更を検討するのもD(納期)のため。
論点を絞ることで、現場に伝わりやすくなり、ベクトルがそろいます。
「やるべきことが見えてきました。」
先の経営者の言葉です。
問題の存在に気付きながらも、やるべきことが見えず、少々混乱気味か?と判断をしたら、まずは”今”を知ることです。
生産管理の視点で、生産の流れを見える化します。
そして、論点を絞って、問題・課題の抽出をするのです。
4つの視点があります。
これらは、プロジェクトを開始する際に欠かせないことです。
さらに、プロジェクト成功の可否は、最初の成果の出る時期に大きく影響します。
ですから、プロジェクトをスタートさせるにあたっては、早期に成果が出るよう、現場を導くことも大切なことです。
生産管理の視点で生産の流れを見える化し、論点を絞って、問題・課題を抽出するしくみを作りませんか?