「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第82話 生産の3つの流れを構築するときの着眼点
製造現場は顧客の顔が見えていますか?
現場には3つの流れがあります。
1)モノ
2)お金
3)情報
儲かる工場経営では、これら3つの流れを設計しコントロールするのです。
モノはリードタイム、お金は回転率という指標でコントロールの程度を評価できます。
現場へ投入された経営資源を少しでも早く製品へ加工し、少しでもはやく出口へ製品を届けるイメージです。
滞りのない流れをつくります。
ここでは時間軸が重要な役割を果たします。
一方、情報は共感、納得性という現場のやる気の度合いでコントロールの程度を評価できます。
仕事が見える化されていれば自律性が発揮しやすく、自ら意思決定できる環境が整備されるのです。
情報は現場のやる気を引き出す源泉でもあります。
そして、情報の流れはモノやお金とは異なり、多方向に向いています。
情報は現場の隅々にまで隈なく行き渡らなければなりません。
現場に”情報格差”があるのは論外です。
さらに、現場と経営者との双方向性も欠かせない観点です。
情報は現場に構築した網目状のルートを双方向で滞りなく流れている状態が望ましい姿といえます。
最適な3つの流れを設計して、現場からお金を生み出すのが儲かる工場経営の要諦です。
中小現場の強みは柔軟性、機動性、小回り性にあります。
この強みを生かして大手にマネのできない速度と複雑さで3つの流れを操るのです。
そうして中小の2大モノづくり戦略、超短納期、マスカスタマイゼーションにつながります。
さて、儲かる工場経営の要諦となる3つの流れは意図をもって設計するものです。
モノの流れをどうしたい、お金の流れをどうしたい、情報の流れをどうしたい、という経営者自身の意思がなければ、儲かる工場経営につながりません。
経営者の意図がなければ、現場がやり易い状態の結果でできあがった流れとなっています。
現場は自工程の効率を優先しがちだからです。
そこで、経営者が現場へしっかりと伝え、教えなければならない視点があります。
それは、全体最適化の視点、つまり、顧客満足度を高める視点です。
経営者の想いを実現させるには顧客満足度を高めることが不可欠だと理解している現場、言い換えると全体最適の視点が浸透している現場なら、すでに経営者の意図が反映された3つの流れが出来上がっていることでしょう。
しかし、顧客満足度を高める重要性を知らされていない現場、あるいは、顧客に関する情報に触れることが少ない現場で全体最適の視点を持つのを期待しても無理です。
自工程の効率アップ、自工程の仕事のやりやすさを優先させる部分最適の視点に留まるのはいたしかたのないことです。
だから、経営者が意図をもって、3つの流れづくりをしなければなりません。
中小の現場管理者時代、現場が、ある特定の案件で、自分たちの仕事のやりやすさを優先させ、顧客の要望に応えられていないことがありました。
しばしば、顧客から要望される突発案件に対応できる体制ではなかったのです。
そこで、あるとき、客先との親睦を兼ねた宴会へ、現場担当者を数人連れて参加したことがあります。
日ごろ、お世話になっています。いつも無理なお願いをしすみませんね。こちらこそ、これかもお願いします・・・・。
と、現場担当者も客先の担当者といっしょになって、やあやあ、あれこれ、と話をしていました。
その後、突発案件が顧客から届いたときのモノや情報の流れがスムーズになったことを感じました。
顧客の顔が浮かぶようになってから、現場の視点が、自工程を優先させる部分最適から、顧客の顔が浮かぶ全体最適へ拡大しつつあるのを実感したのです。
こんな小さな機会でも視点を変えることにつながるのだなぁと思った次第です。
経営者が意図を持って3つの流れを設計します。
経営者の意図、意思抜きでは、現場都合の流れが出来上がってします。
これでは経営者の想いは実現しません。
現場の視点が部分最適にとどまっていては強みの発揮も限定的だからです。
顧客の顔が浮かぶ仕掛けをつくり、全体最適化の視点を持つ必然を高めます。
3つの流れをつくるにあたって、全体最適化視点の浸透は欠かせない論点です。
そこで、経営者は具体的な仕掛けをつくって、現場が”顧客満足度を高める視点”、”全体最適化の視点”を持つ機会を増やします。
全体最適化の視点の重要性を現場に浸透させながら、3つの流れを構築していくのです。
生産の流れを構築するとき、何か迷ったら、戻ってくる原理原則はここになります。
生産の3つの流れは出来上がるものではなく、全体最適化の視点を持ちつつ創るものです。
顧客満足度を高める全体最適化の視点を現場へ浸透させつつ、3つの流れを構築するしくみをつくりませんか?